倉山満 『国際法で読み解く世界史の真実』感想

 倉山先生による国際法の本。タイトルに「国際法」がつくのは「歴史戦は『戦時国際法』で闘え」に続いて2冊目ですね。

 今回のこちらの本を読むことで、今までの倉山先生の著書に対する理解がより深まることは間違いありません。

 前回、感想を書いた『世界一わかりやすい地政学の本』で語られる地政学に関してもそうですが、倉山先生の言論あるいは著書が、他の歴史学者あるいは憲法学者と違っていることの大きな理由の一つが国際法に対する理解だと思います。以前『帝国憲法物語』の感想「国際法とは慣習法であり、条文化されている、いないに関わらず、それを守らなければ文明国とはみなされないのです。当然、憲法を作る際には国際法に合致するように作られます。それを無視するということは、何度も言いますが、自分たちは文明国ではないと言っているのに等しいのです。本当にこんな憲法が「世界に誇る平和憲法」なのでしょうか。」と書いたことがありましたが、本来憲法を語る上で当たり前の国際法に関してあまりに言及することが少ない。そして現在、憲法の番人のようにふるまっている内閣法制局すら国際法を軽んじているとしか思えない状況(詳しくはこちらのブログ)です。これでどうやって国際社会で戦っていけるのでしょうか。

 こちらの本で倉山先生は「国際法はすべての謎を解く最強の武器なのである」と言います。国際法とはどういう物であるかの解説と共に『国際法で読む国別「傾向と対策」』『武器使用マニュアルとしての「用語集」』など、単に知識として学ぶのではなく、この国際法をいかに使いこなし、生き抜いていくのかということが語られます。

 そもそもの問題が、我々が国際法に関して全くまともに学ぶ機会がないことだと思います。国際法と聞いて我々が思い浮かぶものはなんでしょうか。「国連憲章」や「ジュネーブ条約」でしょうか。確かにそれが国際法の一部であることは間違いありません。しかし、私は独学で法律について学んでいた時に、「国際法において、条文に書かれていない慣習法が条文に書かれているものより優先されることがある」ということをテキストを読んでも理解できませんでした。しかし倉山先生が説明されるように「国際法は仁義、つまり約束でできあがっている」という説明を聞くとすっと入ってくるものがあります。つまり我々は法律というと条文で書かれたものと思いがちですが、長年積み上げられてきた慣習から見出されたもの、そこで出来た約束事、見出された法則が慣習法で、それを「国として破る国がいたらその国は文明国として扱われない」それが国際法なのです。そんな大事なものを、就学過程でまともに学ばない。ちょっとぞっとするような状況です。他の国の現状は知りませんが、戦争をひたすら悪だと教え込み、日本国憲法は「戦争放棄」を謳っているから平和憲法だと教えられる。では憲法で戦争放棄と書き込めば本当に戦争は起こらないのでしょうか。

 そもそも国連憲章で戦争は禁止されています。では世界に戦争は無くなったのか?宣戦布告で始まり、講和条約で終結するという戦争は無くなっても、終わりも始まりもわからない悲惨な紛争やテロは無くならないのです。戦争は無くならない、ではその戦争をどうしたら無法で残忍な殺し合いでなく、ルールに基づいた決闘にする。そもそもそれが国際法の一番大切なことではなかったのか。しかし、その国際法が現在大きく歪められています。第二次世界大戦後の東京裁判やニュルンベルク裁判など本来国際法の観点からはあり得ないことが起きてしまいました。一度やってしまったことは慣例の一つになってしまいます。これがどれほど恐ろしいことか、なぜこのようなことになってしまったのでしょうか。

 倉山先生は言います。「われわれ日本人は、人類全体に対する罪を自覚すべきだろう」と。これはどのような意味なのか。勿論、現在日本に蔓延している自虐史観とは全く違う話です。これについて、深く考え、本当に我々日本人がそのことを自覚するために、是非ご一読いただきたいと思います。




スポンサーサイト

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

すめらみこといやさか!! 祝!ブログ開設3周年


 すめらぎいやさか!の言葉で始まったこのブログ。皆様のおかげで3周年を迎えることが出来ました。

 今年は、個人的な事ではありますが、4月に転職したり、いろいろ忙しく、更新も遅れておりますが、なんとか細々と続けております。これが出来るのも、更新するたびに、いいねを下さったり、FBやtwitterで拡散して頂いたり、ブログにコメントをくださる方々のおかげです。本当に感謝しております。3年目になったとはいえ、拙い素人ブログですが、これからもよろしくお願いいたします。

 いつも記念日には、このブログを始めた動機などを書かせていただきました。

ブログ開設1年! すめらみこといやさか!

すめらみこといやさか!ブログ開設二周年!

 今年一番大きかった出来事はやはり今上陛下のお言葉でしょうか。今の政府の名前が間違っている有識者会議はさておき、今後の行方が心配ではありますが、陛下のお心に沿ったものになれば良いと思います。ブログに書いていますが、それは断じて憲法違反ではありませんので。あのお言葉で、どれほどの覚悟と努力で陛下がお務めされてきたか、そして国民を思い、信じてらっしゃるのか、そして、国民は陛下を思っているのかがはっきりしたと思います。

 こちらのブログはあえて今上陛下のお誕生日に始めました。ブログを始めようと思った時期と、その記念日として一番わかりやすい日、そして、このブログのタイトル「日本と本と猫と」。自分の好きなものを並べただけの安直なタイトルと言われればその通りなのですが、この日本という国に生まれ、育ったことを本当に喜び、感謝して、皆様と喜び、「すめらぎいやさか!」と高らかに祝える日、その日を選んで準備し、始めたブログです。特別賢くもない、何も持たない、普通の会社員で母親の私。そんな自分でも、自分の知っていること、経験したことなどを伝えることでほんの少しでもなにか変えられることがあればと思って始めました。今でもその気持ちに全く変わりはありません。ただ、この3年で得た知識や見識。わずかな歩みですが、こつこつと続けてきたことは始める前とは比べ物にならないと思っています。師は山に例えるのもおこがましい、遠くに輝くまぶしい星のように見上げていますが、このように思える人とめぐりあえたことは本当に幸せだと思います。そして、一緒に学ぶ仲間がいる。いつも頼ってばかりですが、以前はただひたすら、一人で学び、それを外に出すこともなかったことを思えば本当にありがたいことです。

 未だに、記事を書いては何度も読み直し「これで良いのか」と思いつつ、更新したものを読んでは、あれほど読み返したのに、誤字をみつけて慌てて修正したり。いつになったら自分のブログを「拙い」と表現しなくなるのか。もう3年、されど3年。これからも細々とですが、続けていきたいと思います。

 いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。これからも精進いたします。よろしくお願いいたします。

 

テーマ : 保守主義
ジャンル : 政治・経済

祝!! 田母神氏の横領容疑 検察審査会でも「不起訴相当」!!


 錯乱、敗れたり! 憲政史研究家 倉山満の砦

 田母神さんの一連の容疑に関して、横領に関してはもともと不起訴になっていました。

田母神被告、業務上横領罪は不起訴 東京地検特捜部

 現在その部分が有料記事になっていますので、こちらには添付しませんが、朝日新聞の記事によると、使途不明となっているものも検察の捜査によって、ほとんどが政治資金であるとされたからでありました。

 それでもそれを不服として検察審査会に訴えて、改めて田母神さんを横領容疑で起訴するように訴えていた錯乱した人たちがいました。

 彼らの言い分によると、犯罪が3人で行われていたとうことは明確だが、それがわかっていても主犯格の二人の自白がないから、立証できない、法廷を維持できない。そして、具体的には名前を出せないが政治家や企業が田母神氏を擁護している。政治的なもの、自衛隊関係、カルト宗教団体、緊迫した外国情勢などが伴い、裁判所は田母神氏を不起訴にするしかできなかった。しかし特捜は検察審査会、そして私達(錯乱)に託したのだと。あまりに滑稽だったので私もこんな感じでブログに記事を書いてしまいましたが。

 さて、そのように託された結果は検察審査会でも「不起訴相当」です!!

 これはいったいどういうことなのでしょうか?

 裁判所に続いて検察審査会も政治家や自衛隊関係やカルト宗教団体に屈したのでしょうか?

 これも戦後の日本社会の体たらくなのでしょうか!!

 なんのことはない。だって、告発したときも某錯乱した社長は「通帳も帳簿も見たことがない」と言っていたのですから。「関係者の証言が物理的な証拠」だというとんでもない告発。当時私は絶対それが受理されるはずはないと思っていました。何の間違いでそれが受理されたのかはわかりませんが、そこからおかしな話でした。そもそも、元は田母神さんが政治資金として使うためのお金をなんで田母神さんが横領するのか、しかも実際には足らなくなって田母神さん自身が補填しているのですよ。全くバカげた話です。

 今回の件は大変めでたい話なのですが、さて?某錯乱したネット放送局はこの件をどのように伝えるのでしょうか。今度はなんのせいにするのでしょうか。楽しみに待ちたいと思います。





テーマ : 保守主義
ジャンル : 政治・経済

チャンネル桜の皇室報道㊦~支持者にこそ問う!水島社長は無知な愛国者か確信犯か

 
 前回、加瀬英明氏の発言を取り上げ、水島がどのように陛下を評価しているかということを次回に述べると言った。

 前回も取り上げた西田昌司氏のビデオレター批判の動画からの書き起こしを読んでいただきたい。

【桜便り】皇統「譲位」の危険 / 西田議員ビデオレター問題 / 沖縄現地報告-辺野古反対派逮捕!米軍キャンプ前にブロック1500個[桜H28/11/30]



7:15~
あのー、まず私は問題なのは、この政府というかこの宮内庁の対応も含めて、まず、陛下がなぜテレビカメラの前に出なければいけないのか、そして、陛下がえーこのテレビカメラで国民にはっきり私は高齢になって、えー公務というかいろんなとこ回ったりいろんな御公務がたいへんだったんで譲りたいとやめたいというようにおっしゃる。これはまず皇室会議、あるいは今皇族会議がなくなりましたけど、皇室会議に諮って、内閣総理大臣について密かに伝えること。こういう手順を踏むべきであるのに、直接国民の前にテレビカメラの前に出てやるってことはこれはどういうことか。国民はどうしたって、ああ、陛下おかわいそうにとなるわけです。私も本当に胸が痛みます。しかし、それをやったときどうなんでしょう。例えば次の宮になったとき、次の宮の天皇が、いや、もうちょっと辛くなったと、で、ちょっと皆さんというというふうにやってく。まあちょっと私はやめたいと。ちょっと例えば次の御代になれば皇太子殿下が当然なられるわけですけども、いろんなことがあって、ね。家族、家庭、家族って言うか、まあ皇族の問題もあってやめたいとなったときどうするんだ。こういう先のこと、こんなことは一度たりとも、つまり125代にわたる中で天皇が、国民、国の民に向かって私が、個人、自分がどうだか。国のことはずーっと言っておられました。天皇っていうのはこれは大きな歴史的な転換であってね。今まであの天皇陛下というのはずーっと国のこと、あらゆること国のこと、国民のこと、国のことについていろいろ訴えられることはありました。終戦の詔勅もそうだった。しかし、自分がこうだからご自身がこうだからこうだって話を国民に訴えて、そして、政治を変える。いうことはなかったわけです。

12:00~
本当にテレビのカメラに出るってことは、これタレントさんと同じになるんですよ。あの、特にご自身のことについて語られるってことは125代、2000年、2600年以上の歴史の中で初めてなんです。だから陛下は個人と言うお言葉を使っちゃったわけですよ。これは本当にあの、恐るべき歴史的なね、転換でこれはあの本当は最初にテレビの前に出る前に、これは秋篠宮殿下はね、あのこの中で、これ良かったとおっしゃってるんですね。あの、しかし、そういう国民に自分の思いや個人の思いをうったえるってことは、これはあのイギリスの王室とかそういうものであってね。根本的これは私は違ってると思うし、あのー、わたしは先週秋篠宮殿下あるいはあのね、裕仁親王殿下も、あ、あの悠仁親王殿下のね、あの警備をもっとしっかりすべきだ、予算は倍増、三倍増すべきだと言いましたけれども、本当にこれ皆さん、あの考えて頂きたいと思います。



 やはり水島も陛下のお言葉を理解できるまで何百回でも聞き直した方が良い。陛下は公務が大変だからやめたいなどとはおっしゃっていない。「個人」という言葉をお使いになっても自分のことだけを言っているわけではないだろう。なぜそのようなでたらめを繰り返すのか。

 そして、以前から水島は皇室会議ではなく皇族会議をと言っているが、今回のお言葉は皇后陛下のお言葉からわかる通り、皇太子殿下、秋篠宮殿下ともご相談された上でのことだ。

皇后陛下お誕生日に際し(平成28年)

 皇位継承に連なる方々で話し合ってなされたものなのだ。これに異論を挟むのなら、「皇室会議に諮って、内閣総理大臣について密かに伝え」て、例えば皇室典範の改正案などが提出されたとしても、「外国勢力の陰謀」などと言って水島は反対するのだろう。何しろ、水島は皇室典範は改正するなという主張をしているのだから。

「皇室典範改悪」絶対反対!緊急国民行動 ④


 しかもこの日は10月27日、三笠宮殿下が薨去なさり、陛下も喪に服してフィリピンのドゥテルテ大統領との面会を中止されていた中でデモを強行。さらに「きっと三笠宮殿下もお喜びだと思います」などとの発言までしているのだ。

 そして、この秋篠宮殿下に対する下りはなんなのか。せっかく心配してやったのに、そんなことを言った甲斐がなかったとでも言いたいのか。

 このような形で陛下がやめたら次の方も自分の都合でやめると言いだすかもしれない、そうしたらどうなるのかと言っているが、番組の前半で自分たちと同じ考えだと名前の出た八木秀次氏もそのようなことを言っている。

政府も悩む皇室「パンドラの箱」 退位・譲位の制度化がはらむ皇室の尊厳を脅かす危険性とは… 麗澤大教授・八木秀次

 こちらでは園部逸夫氏など他の論者の言葉を借りて。

(引用)
ご高齢によるものであったとしても、天皇の自由意思による退位・譲位を認めると例えば、気に入らない総理大臣を任命したくないために退位を表明したり、表明させられたりするなどして、天皇の信任を得られない総理としてのダメージを与えることも考えられるとの指摘もある(園部逸夫著『皇室制度を考える』中央公論新社、2007年)

また、退位・譲位を認めると、その反映として皇位継承権のある男性皇族が天皇の位に就かないこともできるのかという問題も生じる。「万一継承者のすべてが就位を拒否するという事態に至るならば、天皇という制度は存立の基礎を揺り動かされることになる」との指摘もある(高尾亮一執筆、憲法調査会事務局『皇室典範の制定経過』、1962年)。恐るべき事態の到来を招く可能性もある。

(引用終わり)


天皇の公務負担軽減等に関する有識者会議 専門家ヒアリング 意見陳述 麗澤大学教授 八木秀次


(引用)

・自由意思による退位容認は、次代の即位拒否と即位後短期間での退位を容認することになり、皇位の安定性を一気に揺るがし、皇室制度の存立を危うくする
・退位は明治以降封印して来た「パンドラの箱」を開け、様々な困難な問題を生じさせる

(引用終わり)


 自由意思による譲位を認めれば社会の安定性を欠く、それを全面的に否定する気はない。しかし、彼らのいう言葉が正しければ譲位が禁止されていない明治以前にとっくに皇室が絶えていてもおかしくないはずなのに、なぜ今まで続いているのか。

 そして陛下は「個人として」とおっしゃったが、自分自身の御進退のことだけを話したいのではないだろう。陛下はこうおっしゃっているではないか。

天皇が健康を損ない,深刻な状態に立ち至った場合,これまでにも見られたように,社会が停滞し,国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。

 陛下はこれまで懸命に御務めを果たされてきた。しかし、これまでに2回もの外科手術を受けたこともあり、さらにご高齢なこともある。そんななかで、これまでやってきたようには天皇としての責務を果たせない状態になりうることもあるし、そのような中で天皇であり続けることで社会や国民に対して与える影響にも懸念がある。だから国民の皆様に考えていただきたいとおっしゃっているのだ。陛下が国民を信じているからこそ陛下はお言葉を発せられたのではないか。それに対して、水島たちのなんと不遜なことか。 

 そして、先程の有識者会議の中での八木氏の言葉で気になるところがある。

(引用)

⦿8 月 8 日の「おことば」は、憲法に規定された制度(4 条 2 項の国事行為の委任、5 条の摂政設置)ではなく、新たな制度(ご生前での退位)の創設や、国の制度の変更(大喪の礼と即位儀式との切り分け)を要望されていることから、憲法の趣旨を逸脱し、異例であるといえる

(引用終わり)


 先程の加瀬氏や水島も言っているように、今回の陛下のお言葉が「憲法違反に当たる」と言いたいのだろうか。そこで、私は八木氏に問いたい。この有識者会議の中でも、八木氏はバジョットについて触れている。

(引用)

・日本国憲法は天皇を「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」であるとする(1 条前
段)が、国及び国民統合の象徴とは立憲君主としての「機能」をいったものである〔ウォ
ルター・バジョット著『イギリス憲政論』(注1)、福沢諭吉著「帝室論」(注2)〕
・ここから天皇は立憲君主であり、我が国の国家元首といえる
・天皇が立憲君主であるゆえんは政治に関わらず、如何なる政治的な立場にも立たないこ
とによる
・憲法が、天皇は内閣の助言と承認により、国事に関する行為のみを行い、国政に関する
権能を有しない(3 条、4 条 2 項)というのは、このことをいったものである

(引用終わり)


 八木氏は天皇に関する話をするときに度々このバジョットの『イギリス憲政論』を持ち出すのだが、なぜこちらには触れないのだろうか。

『イギリス憲政論』P92より引用

 要するに、イギリスのような立憲君主制の下では、君主は三つの権利―諮問に対し、意見を述べる権利、奨励する権利、警告する権利―をもっている。そして君主がすぐれた感覚や英知をもっているならば、このほかに必要とするものは何もない。このような君主は、ほかになにももっていないので、この三つの権利を非常に効果的に行使できることを知っている。かれは大臣に向かって、つぎのようにいうであろう。「この政策の責任は、卿にある。もちろん最善と考えるものはなんでも、実行すべきである。最善と考えるものなら、なんでも全面的に力強い支持を受けるものと期待してよろしい。ただし、種々な理由からその提案が悪いということに、また種々な理由から実施を提案しないほうがよいということに気づくこともあるであろう。朕は反対しない。反対しないということが、朕の義務である。しかし朕が警告することを覚えておかれたい」。したがって、君主が正しい人物であり、またしばしばみられるように、巧みな表現の才能を備えているとすれば、大臣に影響を与えずにはおかないのである。もちろん必ずしも、その方針を変更させることはできないかもしれないが、常に考慮をうながすことはたしかである。

(引用終わり)




 八木氏はわかっていて隠しているのか、理解していないのか。彼の憲法に関する著作は『明治憲法の思想 日本の国柄とは何か』を読んだが、立憲君主とは政治的な発言、部下に影響力を与えることも本来許されないと理解しているようにしか読めない。終戦のご聖断も立憲君主としての役割からすれば逸脱であったかもしれないが、明治憲法の起草者が密かに予定していた「民の父母」としての役割をはたして国民の生命を救済した、との解説がされていた。

 天皇は国政に関する権能を有しない。しかし立憲君主は、言論の自由まで禁止されているわけではないし、先程のバジョットの「イギリス憲政論」にあるように、「諮問に対し、意見を述べる権利、奨励する権利、警告する権利」を有しているとされている。そして優れた君主は臣下に影響を与えるが、それを聞くか聞かないかは、臣下が決めることで、それに対して責任を負うのもまた臣下なのだ。まさか八木氏や加瀬氏や水島は天皇は他の国の立憲君主とは違うので言論の自由や自身のお言葉で国民に影響を与えることすら禁止されているというのだろうか。

 そして、あそこまで言葉を選んで発言された陛下に対して、水島も加瀬氏もなぜ「憲法違反」を連呼するのだろうか。

 水島はこう言っている。

9:37~
これは憲法に違反することになるぞと。陛下まで非難されることになる。つまり、あのご自身でね。直接国民に訴えてその政策を変えさせる、あるいは法律を作らせる。これは憲法違反になるんですよ。で必ず共産党や社、民進党や社民党はこれがもしそんな風になってくと、いずれこのことに皇室の問題についてあーだこーだ言い始める。そこで次の御代になったとしても、これも憲法違反の天皇だと言い始めて、皇室をぐちゃぐちゃにしていくんです。そういう危険があるんだという。共産党やなんで民進党が賛成するんですか。ね。人のよくヒューマニズムの問題でね、今、日本の戦後史のいかにね、腰がね、ううううあの二枚も三枚もしかないのかって薄っぺらかって私は本当に思うんだけどね、実は。あの、こういうことが起き得るんですよ。そうすると皇室の中がぐちゃぐちゃになってくるわけ。



 論外である。共産党、民進党、社民党が賛成しているからダメ。これをやったら彼らが憲法違反だと言いだすからダメ。こんなことを言ってるから保守派は負け続けるのだ。あまりのナイーブさに眩暈がする。

 たしかに普段彼らの言っていることは出鱈目だ。だからと言って、彼らの言っていることが全て間違っているわけではない。左翼がやることの反対が正しいなど思考停止する人間がいれば、本当にいざというときに彼らが正しいことをすれば逆をやった方が間違うことになるのだ。そして、彼らが憲法違反だというからやったらダメ?結局彼らの手のひらで踊ると宣言しているではないか。

 はっきり言う。左翼が憲法違反だと言ってくる。だからどうした!!日本を滅ぼしたい勢力はこちらが何を言おうと手を変え品を変え攻撃してくるのだ。我々はそんなものと戦うために、学び、考え、仲間を増やし、知恵を振り絞って行動するのではないか。敵のプロパガンダ?プロパガンダは仕掛けられるのではなくて、こっちから仕掛けるのだ!相手が何か言って来たら、それに対抗できるように理論武装して、それを何倍もの大きな声で相手があきらめるまで言い続けるのだ!相手が何か言ってくるから言わない?そんなぬるいことを言っているから勝てないのだ。

 ただここで最近疑問に思うことがある。水島は本当に単なる考えなしの保守なのか?ここで最近よく水島が持ち出す「天皇はGHQによって人間宣言させられた」というのがある。所謂「人間宣言」と言われるのは、昭和21年1月1日に官報により発布された昭和天皇の詔書のことだ。これを水島はちゃんと読んだことがあるのだろうか。

資料167 新日本建設に関する詔書(昭和21年1月1日の詔書)

 わかりやすい現代語訳やこれに関する昭和天皇のお言葉がぼやきくっくりさんのサイトでまとめられていたので、内容に関してはこちらを参考にさせて頂ければと思う。

ぼやきくっくり時事ネタぼやきと番組書き起こし

 読んでいただければわかるが昭和天皇は所謂「人間宣言」と言われる部分でも「自分は神ではなく人間だ」などと言ったわけではない。天皇と国民の絆は信頼と敬愛によって結ばれていて、単なる神話と伝説を根拠に生まれたものではないと言っているのだ。GHQの意図がどうあれ(というかそもそもGHQの天皇と国民の関係に対する理解が間違っていたのだろうが)、先帝陛下は本当に大切なことを国民に伝えられたのだ。一番大切なのは天皇と国民の絆である。今回の今上陛下のお言葉もそれを信じておられるからこそ、テレビの前で直接国民の前でなされたのだろう。それなのに、水島たちの言い分だとまるで天皇陛下が周りの人間にあのような言葉を発するように操られている情報弱者であるかのようだ。情報弱者はどちらだろう。ほんのちょっと調べればわかることを調べもせずに、「人間宣言」などと日本を滅ぼしたい勢力のプロパガンダを垂れ流すのだから。

 水島支持者に問う。水島総は無知な愛国者か。それとも左翼に操られているバカなのか、それとも確信犯なのか。

 いずれにしても、水島の言葉を信じていたら、大きく間違うことになるだろう。敵のプロパガンダを大声で言いふらす者の言論に耳を傾ける必要はない。
 

 



テーマ : 保守主義
ジャンル : 政治・経済

チャンネル桜の皇室報道㊤~加瀬英明氏の発言を桜の公式見解と見なします


 所謂「生前退位」報道があってからのチャンネル桜の一連の皇室に関する番組。これに対してはずっといかなるものかと思っていた。

 皇室皇統に関することなので軽々しく発言することは控えたかった。それに様々な論者の意見が全て水島の意に沿ったものということもないだろうと思っていた。しかし、先日このような放送がなされた。

【桜便り】皇統「譲位」の危険 / 西田議員ビデオレター問題 / 沖縄現地報告-辺野古反対派逮捕!米軍キャンプ前にブロック1500個[桜H28/11/30]

 

 西田議員の発言に対する批判である。

 簡単に言うと、西田氏は譲位論で高森明勅・小林よしのり・藤岡信勝氏と同じ、有識者会議では百地さんなどはこの代に限って例外として特措法でやるというもので西田はこれに近い、非常に浅い考え、反対意見の人はどうなのかという意見として見てもらっていただきたいという思いでビデオレターは放送したと。

実際のビデオレターを見ると、水島の言っていることとは少し違う。

【西田昌司】私は天皇陛下の「譲位」に賛成する[桜H28/11/28]


 この動画の中で西田氏の主張をまとめるとこうだ。

・原則としては終身、しかし今回の場合は譲位ということもあっていい。
・明治憲法と皇室典範はもともとセットで作られた。明治憲法の時はイギリスやヨーロッパの王室をモデルにしながら立憲君主制の国を作っていったが、皇室典範は憲法とは別で皇室の家訓という形で作られた。
・今の皇室典範も日本国憲法とセット。日本国憲法はGHQによって日本を軍事的に解体するために作られた。その時同時に臣籍降下で直宮以外は皇室から離脱するという措置が命令された。皇室典範も以前のものを参考にしながらも天皇を国家の元首ではなく象徴なんだという形で作っていった。要するに今の皇室典範そのものがGHQに占領されている時代に作られている。
・今回のことを契機にあまりにかたくなに伝統だなんだというよりまず皇室を、皇統をどうしたら残していけるのか。その危機になっているのは占領中に作られた憲法と皇室典範である。それを改正することを今回の天皇陛下のお言葉から我々は議論を始めるべきだ。
・明治憲法と皇室典範はセットで作られた。その時の意図はなんであったのか。時代背景も含めて考えてみると今回の天皇陛下のお言葉から派生するいろんな問題、矛盾を解消するための議論のとっかかりになると思う。


 実際に聴いていると言葉の端々に気になるところはあるが、特別何かおかしなことを言っているわけではない。

 現在の皇室典範と戦前の皇室典範の違い。

大日本帝国憲法 第七十四條
 皇室典範ノ改正ハ帝國議會ノ議ヲ經ルヲ要セス
 皇室典範ヲ以テ此ノ憲法ノ條規ヲ變更スルコトヲ得ス


 帝国憲法下では、皇室典範の改正は議会を経てなされるものではなかった。帝国憲法と皇室典範は干渉しないがお互いを補いあう典憲体制。それが現在の日本国憲法下では、皇室典範も普通の法律と同じ、国会の議決によって変更されるものとなったしまった。なぜこのようになってしまったのか。このことによっておこる弊害はなんなのか。これはそれこそ西田氏の言う通り議論されるべきものだろう。

 水島を批判するために西田氏をかばっているわけではない。私の西田氏の評価は「野党時代はちょっと光っていたが本来は保守でもなんでもない。本当は共産党に考えが近いんじゃないの?」だ。なぜそのような評価になるかは別の話なので今回はやめておくが、この件に関しては西田氏の発言に特別問題があるとは思えない。それなのになぜここまで水島は批判するのか。

 水島の気に入らないのは西田氏が譲位を認めているからだろう。なぜ水島はどれほどまでに譲位を阻止したいのか。いずれにしてもこのビデオレターは収録したもののいったん保留していたが、違う意見もあるということで放送はしたと、それでも番組のタイトルにまでして批判している。それならば今までの放送、他の言論人の言動は水島の意にかなっていたものということなのだろう。では陛下のお言葉の後で3回も取り上げている加瀬英明氏、彼の発言には賛同しているとみなして話を進めさせていただく。

【緊急特番】皇位継承の危機?渡部昇一、小堀桂一郎、加瀬英明[桜H28/9/1]



 渡部昇一氏、小堀桂一郎氏にもいろいろ思うところはあるが、加瀬氏の発言はどうなのだろうか。

・皇位継承の危機は日本の危機。皇位の継承について今の天皇陛下も含めてあり方を変えてはならない。
・8月8日の天皇陛下のお言葉を拝して、あのように誤解を与える、例えば摂政については好ましくないと読むことが出来るようなお言葉をお述べになると言うことは、あってはならないことだと考えている。
・天皇陛下おひとりの考えでああいうお言葉を国民に向けて発表することが出来るというこの制度もおかしい。
・非常に日本国に存在の一番根源的な問題だから、お言葉ですとかそう軽くこれを陛下がおっしゃったということ自体も大きな問題があると思う。今いる生きている日本人が日本を自由に変えることが出来るというのは恐ろしい発想。

 天皇陛下を含めて皇位の継承のあり方を変えてはならない?では誰ならば変えてよいのか。ご自身の進退に関する発言すらするなというのか。現在の皇室典範は普通の法律なので国会の議決によって変更できるがそれはよいのだろうか。そして摂政について好ましくないと読めるような言葉を述べることはあってはならない?なぜ加瀬氏にそのようなことが言えるのか。

 今の皇室典範の形が出来たのは明治の時代だ。天皇崩御に伴っての即位というのがずっと続けられてきた伝統というわけでもない。しかも、今回の陛下のお言葉ではそれを変えろとは一言もおっしゃっていない。

 問題に思う発言は他にもいろいろあるが、陛下に物言わぬロボットになれとでもいうつもりか。しかし今回は序の口。どんどんエスカレートしていく。

【Front Japan 桜】国体破壊の危機「生前退位」の正体!加瀬英明氏「皇室典範改悪の陰謀」とメディア報道[桜H28/10/20]


・天皇が直接国民に呼びかけるというのは異常なこと。
・陛下は憲法を大切になさるということをおおせられてるが、それに反すること。陛下が直接国民に呼びかける、それも法律を変えろということをおっしゃってる。これは憲法にそぐわないこと。
・どうして陛下を囲んでいる宮内庁を初め、周りはこれを御止めしなかったのか。これは天皇の尊厳というものを危うくする。
・陛下のお言葉の中で、「私」ということが、繰り返し出てくる。「個人」という言葉が出てくるのには、強い違和感を覚えた。特に個人という言葉は明治に入るまで日本語になかった外国語。

 天皇陛下が直接国民に呼びかけることが極めてまれなことであるのは間違いない。それほど差し迫った状況なのだと考えるべきだろう。それに繰り返すが、陛下は一言も「法律を変えろ」などとおっしゃってはいない。なぜそんなことを加瀬氏は言うのか。しかも憲法にそぐわないとはどういうことか。確かに憲法で天皇は国政に関する権能を有しないとされている。しかし、何度も繰り返すが加瀬氏が言うように法律を変えろなど陛下は一言もおっしゃっていない。そして「個人」と言う言葉が明治に入るまで日本語にはなかった言葉だからどうしたというのか。昭和生まれの陛下に外から入ってきた言葉、概念、しかもお生まれになる前に入った言葉まで使うなとでも言うのか。

 加瀬氏は口では「天皇は存在自体がありがたい」と言っている。しかし、本気でそんなことを言っていないのは、次の動画を見ればわかる。

【草莽崛起】11.23 皇室・皇統を考える国民集会 [桜H28/11/26]


 加瀬氏の登壇は10:10頃からだがここで冒頭で言っていることをそのまま書き起こした。

 皆さんこんばんは。えー、先月のことでしたが、NHKが私のところにえー若い記者でしたけど、インタビューにきました。ですから私は、えー、陛下のお言葉はえー、日本の法律を変えろとおっしゃっていられるわけですが、これは憲法違反だ。天皇が直接テレビを通じて国民に呼びかけて法律を変えるようにおっしゃられるのは、これはやはり憲法違反です。ですから私が日ごろ憲法を大切にしようと言っているNHKが憲法違反の放送を行ったというのはおかしいんじゃないですか、と言ったら若い記者が「えーっ」て言ってるんです。

 私は、ま、今の陛下は戦後の御育ちですから、まあその点を私達はよく理解しなければいけませんが、えーやはりあのちょっと我儘がお出になったのだろうと思います。まあこれはあの十分理解して差し上げなければいけないことだと思います。しかし、陛下は御自分の御役割をお間違えになってらっしゃるんじゃないかと思います。天皇は宮中祭祀を行われて神々に祈られ、そして和歌をおつくりになる。これだけで天皇の存在の意義があります。他にあの、国会の開院式に臨まれるとか法律にご署名をくださるとかいうことは、陛下の本質ではありません。ま、近代国家としてそのようなお役割をお願いしてる、ということだけで、天皇陛下は存在されていることだけが、だけで、この国にとって日本が存在している、証になる、えーものです。



 加瀬氏はもう一度、いや、100回でも200回でも陛下のお言葉を聞き直した方が良い。

象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば

 陛下は一言も「法律を変えろ」などとおっしゃってはおられない。陛下のお言葉を聞いて、国民がそのようにしたほうが良いと考えるのは自由だ。しかし、陛下がそのように命じたわけではないし、そんなことにすべきではないのだ。

 そして陛下は戦後の御育ちで我儘がお出になった?では戦前生まれの加瀬氏が陛下にこれほど無礼な発言をするのはいかなることか。陛下はご自分の御役割をお間違えになっている?天皇の本質は祭祀を執り行うこと、存在されていることだけでありがたい、それは確かにその通りだ。しかし、日々、天皇であるということはどのようなことであるかお考えになり、行動なさり、国民と向き合い、国民のために祈っておられる陛下に向かって「我儘が出た」とか「間違っている」とか、一体加瀬氏は何様のつもりなのか。確かに我が国や、我が国の伝統は2000年以上の時を経て育まれたもので、天皇という存在も一代限りのものではない。しかし、今、その伝統を一身に受けて存在し、全身全霊で働いておられる今上陛下に対して「我儘」だの「間違っている」だのの言葉を発する人間の語る「天皇に対する敬意」など、誰が信用するというのか。

 西田昌司氏をあれほど批判しているのに、水島からは加瀬氏に対する批判はない。共演しているときはずっと同調しているので、水島の陛下に対する評価も加瀬氏と同じようなものなのだろう。長くなったので、それに関しては次回に述べることにする。


テーマ : 保守主義
ジャンル : 政治・経済

プロフィール

yumi

Author:yumi
富山市在住。夫と息子、猫2匹と暮らす会社員。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR