増税と政局~優れた経済学者は無謬の預言者か(前編)

 
 これまで『増税と政局』というタイトルでいくつか記事を書いてきましたが、今回はこれまでの消費増税に関わる動き、あるいは来年は10%に上がってしまうのかを含めた動きを嘉悦大学教授・高橋洋一氏の言説を中心に書いてみたいと思います。なぜ高橋氏を選んだのか。理由としては(私の個人的意見として)信頼できる経済学者であるということ。つい最近のチャンネルくららも素晴らしかったですよね。説明がわかりやすかった上に、本当に日銀はマイナス金利を導入!さすがとしか言いようがありません。


【1月29日配信】日銀が初のマイナス金利導入!緊急特番!戦後経済史は嘘ばかり 高橋洋一 上念司【チャンネルくらら】


 そしてただ単に経済学者であるのみならず元大蔵官僚でもあり、何より安倍総理のブレーンであったり、政策工房の会長でもあり具体的な提案を法案の形に出来るほどの力のある人物で、経済のみならず政局に関しても多くを語っている人物だからです。それで彼を中心に語ることで見えてくるものがあるのではないかと思いました。

 もう1点はまるで彼の言説を信仰のように信じ、「高橋先生はこんなことを言っているけど○○はどういうのかな」とか、「○○はこう言ってるけど、高橋先生はこう言っている。どっちが当たるかな」などと言う人物を散見しました。それほど高橋氏の予想は当たるのか。それならば一度高橋氏の言説を検証してみなければと思った次第です。ですから、そのように見えたら心外ですが、高橋洋一氏の批判記事ではありません。ただ、彼を預言者のように信じている人に対しては批判と読めるかもしれないことはお断りしておきます。

 なお、今回、出来るだけ客観的に記事を書きたいため、あるいは読んでいただくために、通常こちらのブログで「先生」の呼称で書いている方も、「氏」で統一させていただきたいと思います(大臣や参与など肩書を付けたほうがわかりやすい人は別)。

 いつから始めようかと思いましたが、安倍内閣が発足し、景気も上向きになり2013年の参議院選でも勝利したあの内閣支持が絶頂にあったころからにしたいと思います。

 参議院選勝利後何が起こったか。以前は景気の状態によっては消費税延期を示唆していた麻生太郎財務大臣が、「予定通り上げる」「増税は国際公約に近い」などと言いだしました。

消費増税、状況次第では先延ばしもあり得る=財務相 2013/4/23

財務相、消費増税「国際公約に近く変更すれば大変な影響」 2013/7/23

 この「消費増税は国際公約」に関してはそのようなことはなかったことが後にわかりました。高橋洋一氏もこの時に「増税撤回しても国際公約違反にならない」と言っています。
(元記事削除されているために、以下のサイト参照)

Baatarismの溜息通信 2013/8/12


 しかし、一貫して消費増税には反対している高橋氏ですが、増税延期は難しいという見方をしていました。

「国会の違憲状態」解消こそがカギ!参議院で歴史的圧勝をした安倍首相は「消費税増税延期」に挑めるか 高橋洋一「ニュースの深層」2013/7/22

記事より引用

 消費税増税を止めるためには、その国会で消費税凍結法案が成立しなければいけない。野党がそうした法案を出しても、国会審議すらしないだろう。

 実際に与党から消費税凍結法案を出すのは、困難といわざるを得ない。三党合意もあるし、その合意が反故になったわけでもない。参院選でも凍結法案を公約にしていないのだから、常識的には凍結法案を与党は出さないという「判断」になる。

(中略)

 経済政策論では消費税増税ストップは当然だが、第一のシナリオでわかるように政治論からみれば、その実現は困難だ。ねじれ国会は解消したが、政府与党内プロセスがある。自民党税制調査会は、来年度の税制改正作業を9月頃から始める見通しだ。これは通常より約2カ月前倒しだが、消費税増税は当然の話として、増税ストップとはなるはずない。

引用終わり


ただこの時期には可能性として、総選挙が行えればということ示唆しています。

記事より引用

 もともと安倍首相は衆参のダブル選挙によって、衆院の「違憲状態」を脱したいはずだ。昨年12月の総選挙の「違憲状態」は深刻だ(4月1日付け本コラム )。いち早く、選挙制度を直して違憲状態から脱すべきである。しかも、消費税増税を止めるため国民の声を聞きたいというのは、これ以上のない大義名分である。そのためには8月の臨時国会で、違憲にならないような選挙制度改革法案を出しておかなければならない。これは針の穴を通すより難しいが、参院選後のパワーがあれば可能制はある。

引用終わり

 こちらの法案を通さなければ延期できない、そしてそれは難しいとの発言は、高橋氏のみならず、それまでは増税に反対していた議員の口からも聞かれるようになります。高橋氏に影響を受けたのか、財務省がそのようにご説明をしていたのかは定かではありませんが。


【赤池誠章】消費増税・三党合意に仕掛けられた罠、戦いは次の局面へ[桜H25/9/25]



 西田氏の場合は減税は新自由主義だそうで、もともとの本性が出ただけなのでしょう。最近は、消費税は貧乏人も金持ちも同じように取れる公平な税だと言っていますので。


【西田昌司】実効税率で投資誘導を、法人税率アップと投資減税の組み合わせ[桜H25/9/20]


 この後、消費増税が8%に決定した後も、次の10%の増税延期あるいは決断した際のシナリオについて、延期するには法案を通す必要があり、それは困難だとの見方を高橋氏は示しています。私が知る限りではこの記事まではそのような言説を取っています。

もし消費増税が見送られたら?起こる“不測の事態”とは?広い範囲で混乱発生か2014/9/13

記事より引用

 4-6月期のGDPは前期比年率▲7.1%と散々だった(二次速報)。7-9月期のGDPを材料として、消費税率10%への再増税(2015年10月)を今年の12月に判断することとなっている。消費増税を見送ろうとすれば、政治的には新たな凍結法案を国会で成立させる必要があり、かなり厳しい。

引用終わり

 しかしここまで延期は難しいと言っていた高橋氏の論調が少し変わります。

デタラメばかりだった財務省とエコノミスト『Voice』 2014年12月号 2014/10/01

記事から引用

 安倍総理も、消費税を10%にするかどうかの判断にあたっては増税のメインシナリオだけでなく、増税凍結のサブシナリオも念頭に置いているはずだ。安倍総理は今年10月1日、経済財政諮問会議の席上で「景気がどう回復するか、将来の見通しはどうか、十分に注視していく必要がある」と強調されていた(甘利明・経済財政担当大臣は相変わらず財務省とエコノミストのいうとおり「天候要因が大きく影響している」とやっていたが)。

 第二次安倍改造内閣についても、マスコミは「谷垣禎一氏や二階俊博氏が党役員に入り、増税路線が確定した」と報じた。だが、これも臆断にすぎない。安倍総理が「消費税を10%にしない」と決断すれば、いつでも谷垣禎一氏を切り、増税見送りを宣言することはありうる。本当に強い為政者は政局が「どちらに転んでもOK」と考え、博打はしない。単一のシナリオしか頭にない人間は、想定外の事態が起きたときに墓穴を掘ることになる。

引用終わり


 安倍総理が増税を見送りすることもあり得るという見方になっています。それが10月後半になるとがらりと論調が変わります。

消費再増税はこうやれば止まる 必要なのは首相の意志とパワー (1/2ページ)2014.10.25

記事より引用

 英フィナンシャル・タイムズ紙に掲載された安倍晋三首相のインタビュー記事が「増税延期も示唆」と報じられた。中身は、増税するともしないとも言っていないが、国内のメディアでは消費再増税が既定路線のように書かれるので、あえて外国メディアを使って、ニュートラル(中立)なスタンスを強調したのだろう。

 こうした報道が話題となるのも、再増税に対する安倍首相の判断が注目を集めているためだ。2閣僚の辞任によって、そう簡単には再増税できないという雰囲気が盛り上がっているのは事実だ。

 党内の増税派急先鋒(せんぽう)である元財務官僚の宮沢洋一氏を閣内に取り込んだのも、谷垣禎一氏の幹事長起用と同じ手法で、党内の増税派を分断している。安倍首相の意向を通りやすくしており、増税延期派からみれば勇気づけられることだろう。

 既に法律がある消費税の再増税を止めるには、新たな凍結法案か延期法案が必要だ。その際には、今の増税法案の「付則」で、経済状況を好転させることを条件とすることなどを盛り込んだ「経済条項」を根拠とすればいい。凍結法案の形式は簡単なので、首相の政治的な意志と党内の増税派を押さえ込めるだけの政治パワーがあればできる。

引用終わり


 「景気条項」を根拠に増税は止められる。必要なのは首相の政治的な意志とパワー。凍結法案の形式は簡単。どこかで聞いたことのあるようなフレーズですが、それはさておき、なぜここまで論調が変わってしまったのでしょうか。首相のインタビューもあるのでしょうが、この頃何が起こっていたのか。

 一つはあまりに景気の落ち込みがひどすぎてさすがに政権側も危機感を抱いていたということがあると思います。

#反動減はリーマンショック級 10%の消費増税は無理 2014/09/29

 この時期に私が書いた記事ですが、消費増税の悪影響があからさまに数字で表れました。記事内でも書いていますが、アメリカのルー米財務長官も消費増税による景気低迷に懸念を示しています。国際公約ってなんだったのでしょうねえ(棒)

 そして高名な経済学者ポール・クルーグマン氏もこのように述べています。

ノーベル賞経済学者クルーグマン「日本経済は消費税10%で完全に終わります」 2014年09月16日(火) 週刊現代 経済の死角

 しかしながら、政治が経済合理性だけで動くものでないことは、日本が20年近いデフレ政策をとっていたことからも明らかです。この頃安倍政権の内部で何が起こっていたのかというと、この方が動いていますね。

財務省の言うことを聞いていたらこの国はなくなる!本田悦朗内閣官房参与が再増税阻止へ必死の叫び!2014-09-09

 安倍総理の経済ブレーンの本田悦郎内閣官房参与がこのころからメディアで活発に活動を始めました。「総理と刺し違えても『消費税10%』は阻止します」との本田参与の言ですが、本田参与は経済ブレーンであるのみならず安倍総理の長年の友人です。彼のこの動きは総理の意向とも考えられます。そして、この後も消費増税に関してのマスコミ報道や政治家、財務省の動きは様々な局面を迎えます。

 9月3日に内閣改造をしたばかりでしたが、不祥事が続き、女性閣僚二人が同日辞任。第一次安倍内閣の辞任ドミノの再来かと思いきや、黒田バズーカ第2弾、いわゆるハロウィーン緩和と呼ばれる追加緩和で一気に株価は爆上げしました。

 自民党内では山本耕三氏が「アベノミクスを成功させる会」を発足させ、増税のマイナスの影響に関しての訴えを起こします。

消費税、自民党議員らも増税時期の延期を求める考え 2014/10/22

 しかしながら、大きく報道されませんでしたが、この勉強会も財務省による切り崩し工作が行われ、参加者は減少していきました。

財務省に切り崩される再増税慎重派。踏ん張る自公の2人の支えとは…2014/11/10

 しかしこのような報道。あの8%増税判断時にはなかったことですよね、財務省の関与をにおわせるようなものは。この件に関しては別の記事で書きたいと思います。

 このころ高橋氏は再延期にあたっては解散総選挙すべきだとの言説をするようになりました。

再増税路線に対抗するには解散総選挙 有識者会合と官僚シナリオ 2014.11.01

記事より引用

一方で、政治サイドとしては、消費増税先送りを争点にした解散総選挙を仕掛けたいところだ。内閣改造後、2閣僚が辞任したが、ダメージ・コントロールが功を奏して、政権支持率は50%程度、政党支持率も40%程度とまだ高い。

この時期に消費増税を先送りして、来年度予算の骨格を作り、解散総選挙というのは、麻生太郎政権で追い込まれて解散した結果、惨敗を喫した経験からも大いにあり得る話だ。

ちょうど2年前、11月16日(赤口)解散-12月16日(友引)総選挙で政権交代したときと似たような日程で、11月19日(大安)解散-12月14日(友引)総選挙という具体的な日程も流れている。11月18日まで有識者から意見を聞いた後で、安倍晋三首相が「国民の意見も聞きたい」と言って解散するシナリオだ。

もちろん、解散権は安倍首相しかないわけだから、これらは下種(げす)の勘繰りだ。ただし、政治の一寸先は闇であるので官僚主導の有識者会議を政治がひっくり返す可能性はないとはいえない。

引用終わり

 この時期になると明らかに官邸と高橋氏は接点を持っています。彼と安倍総理の親密ぶりも報道されるようになりました。

週刊現代「消費税5%に戻します」でニッポン大復活!財務省が焦る!総理「反増税派」との仲を強調!2014-11-04

記事より引用

財務省が焦っている!
財務官僚を震え上がらせる「事件」が起きたのは10月27日
ホテルオークラでの、故村瀬二郎氏の「メモリアルレセプション」でのこと。安倍総理は、同じくレセプションに参加した財務省OB嘉悦大学教授の高橋洋一氏の元へ向かい、5分ほど会話を交わすと会場を後にした。

財務官僚からすれば「大事件」
「レセプションには財務官僚OBが数名参加していたのに、彼らのことは一瞥もせず、高橋さんとだけ安倍総理が会話したから。高橋さんも財務省OBですが、この冬に10%への増税の可否が決められる消費増税に、公然と反対を張っている中核的な論客です。だから、ほかの財務省OBたちからすれば『この大事な時期に増税反対論者といったい何を話しているんだ』と騒然となったわけです。安倍総理がいなくなると財務省OBたちは高橋さんのところへ行き、『どんなことを話したの?』と慌てて質問していた」(出席者の一人)

引用終わり


 そしてほぼ同時期に解散総選挙のうわさが流れます。

【次期衆院選】政権内でにわかに強まる「年内解散論」 消費税先送りで一気に反転攻勢も2014.10.28

 これをきっかけに、今まで増税やむなしと言っていた民主党や自民党増税派も次々と増税延期に傾いていきました。そして安倍総理は11月18日、増税延期とアベノミクス再始動を掲げて衆議院解散、総選挙を行うことになり、平成27年10月に行われる予定だった消費増税10%は平成29年4月へと延期されることになったのです。

 ここまでの動きで気になる事と言えばやはり2014年9月から10月までの言説の変化です。なぜ「法案を通すのは難しい」から「凍結法案の形式は簡単。総理の意志で出来る」に変わったのでしょう。長くなりましたので、こちらは後半、増税延期判断から現在に至るまでの言説と合わせて考察することにしましょう。
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テーマ : 政治・経済・時事問題
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富山市在住。夫と息子、猫2匹と暮らす会社員。

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