増税と政局~増税延期に解散総選挙は必要か~


 現在、増税をめぐる論議で、安倍総理は前回の延期の時と同様、参議院議員の改選に合わせて衆議院解散、W選挙を行うのではないかといううわさが流れています。本当にW選挙になるかどうかはさておき果たして増税延期するために衆議院を解散して民意を問う必要があるのでしょうか。

 平成26年11月に解散総選挙を行う際、安倍総理は「代表なくして課税なし」との言葉を使いました。

平成26年11月18日 安倍内閣総理大臣記者会見

 大きな税制の変更を伴うには民意を問う必要があるとのことですが、そもそもこの言葉は本来どういう時に使われたのでしょうか。

代表なくして課税なし

 Wikipediaで参照させてもらいますが、アメリカ独立戦争のスローガンでもともとはマグナカルタに由来するもの。「人民が自ら選出した代議士の承認無しに政府が人民を課税することは不当であるという理念」とあります。増税延期するために選挙を行う理由になるのでしょうか?

 現在日本国では普通選挙が実施されています。代表と言えるのは間違いなく、多数の支持を得て政権与党となった自民党の議員及び総裁であり総理大臣になった安倍総理でしょう。代表はいるのになぜ「代表なくして課税なし」だったのでしょうか。

 税制に関しては憲法でも定めがあります。

 日本国憲法 第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

 法律によらなければ新たに租税を課すことが出来ません。法律を作るのは選挙で選ばれた国会議員です。この消費増税を決めたときの政権与党は民主党で野田佳彦総理は「鳩山さんは四年間消費税をひきあげないと言った」「(マニフェストに)書いてあることは命がけで実行する。書いていないことはやらない。これがルールです」と言っていました。

野田総理 マニフェスト 書いてあることは命懸けで実行


 それなのにマニフェストに書いていることは碌に実行せず、書いていなかった消費増税を決めたのです。これは明らかにルール違反であり、本来ならばこの増税法案の是非を問うために解散総選挙をすべきでしょう。しかし三党合意で法案を通した後、この法案は争点とされることなく解散総選挙が行われました。その総選挙で勝利したのは「日本を取り戻す」と経済再生を第一に掲げた安倍総裁率いる自民党でした。

重点政策2012 自民党

 読んでいただければ分かるとおり、予定通りに増税するともしないとも書いてありません。しかし、デフレ脱却前の増税には慎重な態度をずっと安倍総理は取ってきましたし、景気動向を見て決めると発言していました。附則18条、いわゆる景気条項があるためです。

 結局平成25年10月1日に安倍総理は増税を決断してしまいます。景気は回復傾向にあったとはいえ、早すぎる増税でした。5%から8%、3%の消費増税で、景気はリーマンショック並に落ち込むこととなりました。その後、平成26年11月の増税延期の決断とともに衆議院は解散、総選挙が行われました。

 さて、この解散総選挙は本当に必要だったのでしょうか。

 民意を問うために総選挙を行ったのだとしたら、そもそも平成24年の衆議院選挙で安倍総理は経済再生を掲げて戦っています。国民は景気回復を望んでいたのです。しかしながら増税により消費が落ち込み経済成長にストップがかかってしまいました。ですから経済を再生させるために景気を悪化させる消費増税を延期する。何の問題があるのでしょうか。全く民意に反することではないし敢えて問い直すことではないと思うのですが。

 高橋洋一氏の検証部分で「増税延期のためには新たに法案を通さなければいけない」というのがありました。確かにその通りで、野党はともかく与党内をまとめられなければ法案を通すことは難しいでしょう。しかし、10%延期判断の時に総理の意向に逆らってまで増税延期に反対する意思のあった自民党の衆議院議員など私は一人を除いて知りません。しかもこの時は野党も皆増税延期に賛成していたのです。もちろんこの流れは解散風が吹いたからということもあるでしょうが、解散風を吹かすのと本当に解散するのは別の話です。それを最終的に決断できるのは安倍総理なのですから。

 一方8%の増税決断の時は野党のみならず、自民党の議員の多くも増税に賛成していました。こういうときならば首相が増税延期を理由に解散するのはありだったと思います。それでも増税延期又は凍結法案を出してそれが否決されたのならその是非を問うという形が望ましいと思いますが。

 どちらにしても民意は景気回復であり、8%の消費増税の実施によって増税すれば景気が悪くなることが明らかになったわけです。何故増税を延期する法案を国会で通すために解散総選挙を行う必要があるのでしょうか。

 10%の増税延期の前に、増税しなかった時の悪影響をとなえた政治家やエコノミストが大勢いました。マスコミでもそういう論調で語られることがよくありました。

日本経済新聞 社説 消費再増税をここで延期していいのか 2014/11/12

記事より引用

 しかし、わたしたちは、再増税を延期すれば、いずれ金融市場で日本の国債に対する信認が失われ、長期金利が意図しない形で急上昇するリスクがあると指摘してきた。

 気になるのは、財政破綻リスクを取引する市場で、日本の国債に対する信認の度合いが低下する兆しが出ていることだ。

引用終わり


外国人投資家が手ぐすね? 消費増税先送りで「日本売り」の恐怖 2014/11/12

記事より引用

経済評論家の池田信夫氏はJB PRESS(2014年10月21日付)で、「アベノミクスの挫折で深まる安倍政権の危機 消費増税の先送りは国債暴落への道」と題して、「このまま日銀が毎月7兆円の国債を買い続け、おまけに政府が消費税の増税を延期すると、それを引き金にして市場が反乱を起こすおそれがある」と、危惧している。

また、金融アナリストの久保田博幸氏はBLOGOS(11月12日付)で、「消費増税そのものが財政健全化に向けてのひとつの柱として認識されていることは確かで、財政健全化があってこそ、国債への信認が維持されている。これだけ財政が悪化(国の借金の残高が9月末時点で1038兆9150億円)しているなか、国債が安定的に消化され、売買も滞りなく実施されている状況に、国債への信認に対する不安要素は入れてほしくない」という。

引用終わり

 さて、ここで心配されているような国債の暴落など起きたでしょうか。エコノミストたちが危惧するようなことは何も起きなかったわけです。

 この数年の消費増税にまつわることではっきり分かったことは以下のことです。

・デフレ下の増税はリーマンショック並の景気悪化を招くこと。

・増税を延期しても、国債への信認が失われたり、国債が大暴落したりすることはおこらないこと。

 これがわかった今、現在の経済状況で消費増税など出来るはずがないことは明らかです。それなのに、増税を前提に名ばかりの、本当は何を据え置きするかの議論をしている軽減税率の話がなされている。国民を馬鹿にしているとしか思えません。

 そしてこんなことを2度もやってしまったらこの先増税を延期するには解散総選挙をするのが習律になってしまうのではないかということを私は危惧しています。増税するときは民意を問わなくて良いのに、延期をするときは民意を問うために解散総選挙。あまりにばかげているとしか思えません。そもそも民意に沿った法律の改正をするのになぜさらに選挙で民意を問うことが必要なのでしょうか。そして、あえて「たかが」と言いますが、「たかが」増税延期法案を通すことを解散総選挙などという「伝家の宝刀」を抜かねば出来ないような政権にいったい何が出来るのでしょうか。こんなことでは安倍総理の掲げる「戦後レジームの脱却」や「憲法改正」など夢また夢です。

 平成26年の衆議院選挙の公約には平成29年に消費税を10%にすることが掲げられていました。

自民党重点政策2014

● 安定した社会保障制度を確立するために、2017 年(平成 29 年)4 月に消費税率を10%にします。

●経済再生と財政健全化を両立するため、消費税率10%への引上げは2017年4月に行います。また、軽減税率制度については、関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入します。2017年度からの導入を目指して、対象品目、区分経理、安定財源等について早急に具体的な検討を進めます。


 しかしあくまで「安定した社会保障制度を確立するため」との前置きがあり、前回の増税で景気が悪化することが明らかになっている消費増税、しかも世界経済が不安定になっているにもかかわらず増税などしたら、本当に国民が望んでいる景気回復はとん挫してしまい、安定した社会保障制度の確立など出来るはずもありません。この公約で国民が望んでいるのは「経済再生」と「安定した社会保障制度」であり、その手段の一つである「消費増税10%」ではないのです。

 そもそも民意を問うのならば今年の夏には参議院選挙があるわけです。参議院では民意が問いづらいという声もありますが、本当でしょうか?

 確かに6年の任期があり解散総選挙のない参議院制度にはいろいろと問題があると思います。その時々の民意でいわゆる「ねじれ」が起こるという問題もあります。しかし、選挙の結果はその時の「民意」です。参議院か衆議院かの区別をして、私たちは投票を行うのでしょうか。

 大事なことですので繰り返してまとめておきます。

・民意は景気回復及び社会保障の安定であり、消費税を10%にすることはあくまで一つの手段。しかもその手段は間違っていることが証明されている。

・増税を決めるときは民意を問わず、増税を延期するのに解散総選挙を行うという間違った方法が過去に取られてしまった。繰り返せばこれが習律になってしまう恐れがある。


 いろんな意見があると思いますが、私はこういった理由で、増税延期のために解散総選挙という方法を取ることには反対です。解散総選挙という方法を取らずに、増税凍結法案を通していただきたいと思います。

 では次回は、増税にまつわる保守業界で起こった出来事について述べたいと思います。
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富山市在住。夫と息子、猫2匹と暮らす会社員。

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