増税と政局~マスコミは消費税をどう報じたのか~


 『増税と政局』第7弾。今回は消費税にまつわるマスコミの報道について述べていきたいと思います。

 平成25年8月12日、4月から6月のGDP速報値が発表されると、各新聞社が一斉に消費税に関する社説を上げました。

2013(平成25)年4~6月期四半期別GDP速報 (1次速報値)

 日経新聞は賛成の論調、しかしこちらの記事どうなのでしょうね。

消費増税を固め歳出削減にも踏み込め 日経 2013/8/9

記事より引用

 消費税増税と歳出削減に並行して取り組まない限り、財政の健全化はおぼつかない。政府の中期財政計画はその両方を曖昧にしている。これでは日本の経済運営への信頼感は高まらないだろう。

 まずは2014年度からの消費税増税を固めるべきだ。そのうえで中期財政計画を練り直し、もっと踏み込んだ歳出削減のメニューや目標を示す必要がある。

引用終わり


 増税して歳出削減。デフレ下でそれをやればさらにデフレに陥り景気も悪化すると思うのですが。まさに財政再建原理主義者と言った論調です。

 しかも、日経は世論調査でとんでもない印象操作としか思えない記事を上げています。

(本社世論調査)内閣支持上昇、68% 消費増税 7割超が容認

 会員でないと先が読めませんが、後に誤報サイトでも取り上げられています。

日経世論調査「消費増税7割容認」 予定通り賛成は17% 2013年8月31日

記事より引用

《注意報1》 2013/8/31 22:30

日本経済新聞は8月26日付朝刊1面で、自社の世論調査(23~25日実施)の結果について、「消費増税7割超容認」との見出しををつけ、記事本文で「税率引き上げを容認する声が7割を超えた」と伝えました。昨年8月に成立した法律で、消費税は2014年4月に現行の5%から8%、2015年10月に10%に引き上げられる予定となっているため、記事のいう「消費増税」はこの増税予定を指すと誤解される可能性があります。実際は、世論調査で設けられた質問は、消費増税自体の賛否ではなく、予定通り引き上げるべきだと思うかどうかを問うたもので、「引き上げるべきだ」は17%、「引き上げるべきだが、時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ」が55%でした。

引用終わり

この件に関しては産経新聞の田村秀男氏も苦言を呈しています。

消費増税へ強引な世論誘導極まる日経 「8割が否定的」を「容認7割超」に 2013.08.30 田村秀男

 他で消費税に比較的前向きなのは朝日新聞でした。

新聞社説まとめサイト [朝日社説] 景気と消費税―やるべきことを着実に (2013年8月13日)

 産経新聞は消費税に慎重な態度。

【主張】GDPと消費税 首相は複合的な視点もて2013.8.13

 読売新聞も増税には慎重な意見。

遥香の日記より 2.6%成長 消費増税に耐えられる体力か(8月13日付・読売社説)

 読売はその後、明確に社説にて増税を見送るべきだと言っています。ただ、消費税10%に上げるときには新聞には軽減税率を適用しろという少々身勝手な言い分ですが。

遥香の日記 消費税率 「来春の8%」は見送るべきだ(8月31日付・読売社説)

 東京新聞は消費増税に反対。

新聞社説まとめサイト [東京新聞] GDP統計 消費増税の環境にない (2013年8月13日) 

 これが9月になると様相が変わります。

 首相はいったい何度増税決断を行ったのか。異様なペースで「首相増税を決断」の記事が繰り返し新聞各社で掲載されることになります。

 こちらは倉山満氏の『増税と政局・暗闘50年史』にまとめてあるのでそちらを引用させていただきます。ページ内にあるGOHOOサイトはどうも削除されてしまったようです。増税決断との記事は細かいものをを探せばまだたくさんあったはずです。



『増税と政局』P104より引用

【読売】
2019/9/12朝刊1面「消費税 来年4月8% 首相、意向固める 経済対策に5兆円」、同2面「『景気に冷や水』回避願う 『2%』分は実質還元」

2013/9/16朝刊2面「消費増税『家計支出減らす』56% 本社世論調査『軽減税率導入を』74%」

2013/9/23朝刊「消費税10%は『経済次第』 首相『推移見ながら判断』強調」

【朝日】
2013/9/21朝刊1面「首相、消費税引き上げを決断「来年4月から8%に」

【毎日】
2013/9/13夕刊「小委増税 来年4月8% 安倍首相『環境整う』判断 経済対策、5兆円規模検討」

【産経】
2013/9/19朝刊1面「消費税来春8%、首相決断 法人減税の具体策検討指示」

【日経】
2013/9/19夕刊1面「消費税来春8% 首相決断 法人減税が決着、復興税廃止、前倒し 来月1日表明」

2013/9/23朝刊2面「10%は改めて判断 消費増税 首相『経済の推移見る』」

【共同】
2013/9/12「消費増税 来年4月8%に 首相、10月1日表明へ」

【時事】
2013/9/12「消費税、来年4月に8%=経済対策5兆円で下支え=安倍首相、来月1日のも表明」

2013/9/22「消費税10%は改めて判断=集団的自衛権、来年以降に―安倍首相」

【東京】
2013/9/12夕刊1面「消費税 来年4月8% 2%分 経済対策5兆円 首相判断 社会保障目的どこへ」

2013/9/23朝刊2面「消費増税 10%上げ時に再び判断 朱書 8%後の経済踏まえ」

引用終わり


 そもそも首相の意向は常に菅官房長官が記者会見で発表していますが、ずっと「総理はまだ決めていない」と発言しています。

内閣官房長官記者会見 平成25年9月25日(水)午前

 こちらでは「総理が10月1日の日銀短観を踏まえた上で判断する」「新聞報道がどんどん先行してるますからあたかも決まったように皆思ってらっしゃるんじゃないでしょうかね」と言っています。菅官房長官はこのように明言しているのに、マスコミは消費税がもう決まったことだとの報道を行ったのです。

 そして、10月1日の指標を見て決めると言っているのに、マスコミは10月1日の記者会見で発表と報じます。

 結局、安倍総理は、10月1日、マスコミの発表通りに消費税を平成26年4月1日より8%にあげるとの決断をし、記者会見を行います。

安倍内閣総理大臣記者会見 平成25年10月1日

 消費税を上げれば景気は落ち込むことがわかりきっているのに、マスコミが消費増税は決まったことだとの印象操作をしてしまう。どれほどの圧力があったのかと思います。この時安倍首相の経済ブレーンである浜田・本田内閣官房参与は増税に反対していました。それでも、首相が増税を決めてしまった理由に「私よりも財務省の説得が強かったため」と浜田参与は語っています。

浜田内閣官房参与、アベノミクスを採点 金融緩和はAプラスだが、成長戦略はE ロイター 2013年11月16日

 この時、財務省の言い分を代弁していたエコノミストや増税に賛成していた有識者はこちらにまとめがありますのでご覧いただけたらと思います。結局、順調に回復していた景気はひどく落ち込みました。消費増税による景気悪化をアベノミクスの失敗だと言う人がいますが、違います。アベノミクスに無い消費増税、それも第二の矢の『機動的な財政出動』の反対のことをしたので景気が悪化したのです。

嘘をついたエコノミストは誰か?増税賛成派のデタラメな主張!

 あからさまに景気が悪化してしまった後、新聞は何をしたのでしょうか。

軽減税率適用を求める100万人署名運動

 消費増税を後押ししておきながら自分たちは消費税を上げてほしくないと。なんとも身勝手な主張です。

 新聞社が言説を変えた。特に増税に反対していた読売新聞も増税が決まったことだとして報道するようになったことに関して面白い記事があります。

全国民必読 安倍を操る「財務省7人のワル」をご存じか 消費税増税のウラで高笑い 2014年04月30日

記事より引用

もちろん大手メディアへの対策も抜かりはない。特に力を入れているのが、安倍首相と懇意な渡辺恒雄氏が率いる読売新聞。昨年8月31日に読売新聞が『消費税率「来春の8%」は見送るべきだ』との社説を掲げた際には、事務次官の木下康司氏('79年)がすぐに渡辺氏のもとへご説明に伺ったほど。

引用終わり

 なるほど渡辺恒雄氏ほどの大物になると財務事務次官様が直々にご説明されるわけですね。某ネット放送の社長が「私は木下とかこんな連中に会ったこともないし、このそういうなんとかっていう次官にもあったこともないしね、電話で話したこともない」と言っていましたが、彼はそこまでの大物ではなく、彼など会わずとも操ることは簡単だということでしょう。しかし、増税が決まった直後に「木下が増税の黒幕だというソースを出せ」と言っていた人たちはこの記事や後の首相の言葉を聞いてどう言い訳するのでしょうね。

 メディアと財務省の関係も上げておきます。なぜマスコミが財務省に都合のいい記事を書くのかの理由の一つでもあるかと思いますので。現在、軽減税率も、生鮮食品か加工食品かなどの議論がされていたのに、なぜかそこにちゃっかり新聞も入っているのがおかしな話ですね。

元財務高官が続々天下る読売・日テレの狙いは 2014年7月26日(土)

記事より引用

読売新聞社・日本テレビグループに財務省の元高官が相次いで天下っている。

6月10日、元財務事務次官の勝栄二郎氏が読売新聞社の監査役に就任したのに続き、6月27日には前財務次官で弁護士の真砂靖氏が日本テレビホールディングス(HD)と日本テレビ放送網の社外取締役に就任。元財務次官の読売新聞社監査役就任は、丹呉泰健氏(1974年入省)に次いで2代連続となる。

引用終わり


 財務省に逆らえばマスコミまで敵に回すと言う指摘もあります。

安倍首相 財務省の天下り先を潰して厳しい報復受けた過去も2014.09.09

記事より引用

それなのに財務省の意向に逆らえないのは、国民より財務官僚の信頼を失うことが怖いからだ。安倍首相は7年前の第1次政権でその怖さを身をもって経験した。

 当初は小泉政権から引き継いだ圧倒的多数を背景に公務員改革を進め、財務省の天下り先に大鉈を振るって政府機関の統廃合に取り組んだ。だが、半年経たないうちにその威勢は消し飛んだ。第1次安倍政権の元閣僚が振り返る。

「閣僚のスキャンダルや消えた年金問題がリークされ、支持率が落ち目になると、財務省は全くいうことを聞かなくなった。そうなると内閣はひとたまりもない。官邸は閣議の際に大臣たちが総理に挨拶もしない“学級崩壊”状態に陥った。あの時のトラウマがあるから、安倍総理は政権に返り咲くと政府系金融機関のトップに財務省OBの天下りを認めることで7年前の償いをせざるをえなかった」

 財務省の尻尾を踏めば大メディアまで敵に回る。

 やはり7年前、安倍首相は新聞の宅配制度を支える「特殊指定(※注)」見直しに積極的だった竹島一彦・公正取引委員長を留任させた。その人事でさらなる窮地に陥った。

【※注】特殊指定:地域や読者による異なる定価設定や値引きを原則禁止する仕組み。

「財務省と宅配を維持したい大手紙側は竹島さんに交代してもらう方針で話がついていた。ところが、安倍総理が留任させたことから、財務省は『安倍政権は宅配潰しに積極的だ』と煽り、それまで親安倍だった読売などのメディアとの関係が冷え込んだ」(自民党関係者)

 財務省の天下り先を潰しただけで、それだけの報復を受けたのだ。その後、自民党から政権を奪い、「総予算の組み替え」で財務省の聖域である予算編成権に手をつけようとした民主党政権の悲惨な末路を見せつけられた。

引用終わり

 結局、財務省の圧力とメディア攻勢に、ずっと安倍総理の経済ブレーンとして消費増税に反対していた本田内閣官房参与が「総理と刺し違えても『消費税10%』は阻止します」と立ち向かい、最後は解散風で与党内の意見をまとめ、全ての野党も増税に反対するという事態になり、ようやく増税延期の決断、その後の解散総選挙となりました。

 この後、安倍総理の口から、財務省の増税への凄まじい説得工作が語られることとなります。

安倍首相、消費増税めぐる財務省の政界工作を示唆 省益優先で不況下に緊縮財政の罪2014.12.01

記事より引用

 11月30日、各党代表が出演したテレビ番組『新報道2001』(フジテレビ系)内で安倍晋三首相は、キャスターの「(衆議院)解散の理由は財務省による消費増税包囲網を打開するため、という見方があるが、その真意は」という質問に対して、以下の2点を述べた。
 ひとつは理念的な理由ともいえるが、来年10月に予定していた8%から10%への消費再増税を2017年4月へ先送りし、総選挙でその信を国民に問うというものだ。さらに「現実論として」と断ったうえで、「財務省が『善意』ではあるが、すごい勢いで(消費再増税にむけて)対処しているから党内全体がその雰囲気だった」と明かし、その「勢い」を転換することが必要だったと述べた。事実上、キャスターの問いを肯定するものだった。
 財務省が消費増税について政治家に対する説得工作を行っていることは、これまで多くの識者やマスコミにより言及されてきた。だが、その影響力が選挙なしでは払拭できないほど政治を浸食していることが、時の首相の口から出たことは極めて重大であるし、また興味深い事実でもある。

引用終わり


 本当に、財務省が増税の黒幕のソース(以下略)

 現在は、まるで軽減税率が決まったかのような報道が続いています。そのような報道になるのは官邸の動きを見れば仕方のないことかもしれません。しかし、最近の世界同時株安などを受けて、来年の10%の消費増税は無理との意見や、参院選に合わせて衆参W選挙で増税を延期決断をするのではないかと言う報道も出ています。

 そんな中、いち早く「再増税中止宣言せよ」との記事を掲載した、産経新聞と田村秀男氏には敬意を表したいと思います。

産経新聞20160115


 後1つ記事を書いて一旦この『増税と政局』は終わらせるつもりですが、なぜこのような記事を書き続けているか。歴史認識、憲法、安全保障。日本を取り巻く様々な問題があります。安倍総理はこの問題の全てに取り組んでいる稀有な政治家です。その安倍総理が「まず経済」と言って二度目の政権を取ったのです。お金は単なる手段です。しかしそれがなければ食べていくこともできません。生活に余裕がない状態で、国民は真剣に憲法のことなど考えるでしょうか。十分な予算がなければ国防費を増やすことも出来ません。そして、そのために必要なことは経済成長なのに、20年近く日本は誤った政策を取ってきました。そしてそれを取り戻せるかと思っていた矢先、2013年10月にまた誤った判断をしてしまいました。過ちを繰り返さないために、これまでに起こったことを整理して置きたいと思いました。

 次は某ネット放送のあるシリーズを検証する予定です。
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テーマ : 政治・経済・時事問題
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Author:yumi
富山市在住。夫と息子、猫2匹と暮らす会社員。

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