増税と政局~「倉山満の3分間スピーチ 増税は間に合わない論のウソ」を検証する ㊤

 
 『増税と政局』第8弾。今回は倉山満氏がチャンネル桜のキャスターから降板しチャンネルくららを開設しての最初のシリーズ「倉山満の3分間スピーチ 増税は間に合わない論のウソ」を検証したいと思います。平成25年10月に放送されたもので、今さらと思われるかもしれませんが、この中にはいろいろと見るべきもの聞くべきものが詰まっています。

【チャンネルくらら】倉山 満の3分間スピーチ 第1回  増税は間に合わない論のウソ①


今回のポイント

・「増税決まっている論」。これを永田町でかなりの人が信じていた。それで倉山氏は非常に危機感を持って、9月9日の段階で増税阻止運動を本格的に開始した。
・「増税決まっている論」は法律論としても政治論としても間違い。
・消費税は法律が通って平成26年から8%に上がることが決まっているが、附則18条という景気条項がついている。それは当時の総理大臣の野田民主党内閣、野党の自民党の谷垣総裁、山口公明党代表の3人で決めたので三党合意と言われている。法律上は附則18条があるので、景気の状態が悪ければ、増税しなくてよい。増税すると最初から決まっていたわけではない。だから三党合意の段階で罠が仕掛けられていたというのは、嘘、間違い。
・附則18条を入れていたのは野田総理にいじめられていた民主党の反主流派。自民党はそれを潰そうとしていた。
・附則18条は、法律の一部なので総理大臣は増税を延期することは出来る。

 まずこの「増税決まってる論」。三党合意の段階で罠が仕掛けられていたという説が自民党内に蔓延していた、ということをきちんと自民党員の言葉で確認できるのは以前にも紹介したことのある赤池議員の動画です。

【赤池誠章】消費増税・三党合意に仕掛けられた罠、戦いは次の局面へ[桜H25/9/25]


 しかし、倉山氏は附則18条という景気条項があるので増税は延期できると言っています。

 見やすいのでこちらはWikipediaから。

附則18条 景気弾力条項

 赤池氏は三党合意にもう罠が仕掛けられていると言っていますが、三党合意がどういう中身なのかがこちら。

民主党 社会保障・税一体改革で民主・自民・公明の3党実務者合意案まとまる 2012年06月15日

 こちらの民主党のホームページの「税関係協議結果」というPDFファイルに附則18条をどう扱うかが書かれています。

○附則第18条について

・以下の事項を確認する。

(1) 第1項の数値は、政策努力の目標を示すものであること。
(2) 消費税率(国・地方)の引上げの実施は、その時の政権が判断すること。


 はっきりとその時の政権が判断することと書かれていますね。

 これならば、安倍総理がその時の景気を見て延期するかどうかを判断することに何の問題もないように思えます。

 では次に行きましょう。

【チャンネルくらら】倉山満の3分間スピーチ 第2回 増税は間に合わない論のウソ②


今回のポイント

・谷垣自民党総裁は解散することを条件に建前上増税法案に同意した。その後谷垣さんは総裁選に負けることすら出来ず不出馬に追い込まれ、安倍晋三が自民党総裁、そして解散総選挙によって総理大臣になり安倍内閣成立。
・安倍さんは総裁選、そして衆議院選挙の段階でアベノミクスということを掲げていた。
・安倍さん自身は増税するともしないとも言っていない。財政健全化は当然必要だけれども長期スパンでやるべきもの。それより先にやることは金融緩和。とにかく景気を回復させることだということを公約に掲げて、総裁選、総選挙を戦った。
・安倍さんはまず経済と言って戦った。それを自民党の総裁選の公約のすみっこの方とか、衆議院の選挙の時の細かい文字を持ってきて、「実は安倍さんは消費税増税に決して文字を残していなかった~!」などということ自体が、まさに戦後レジーム。
・経済以外の安保とか憲法とか、しっかりとして国家観を持っていた人だからこそ、叩かれながらも安倍さんは敢えてまず経済と国民の前に明らかに訴えた。


 まず安倍さんは総裁選で何を掲げて戦ったのか。

自民党総裁選 候補者データ 安倍晋三

所見より引用

社会保障の給付を確実にするには経済を強くする必要があります。
消費税を上げる前にデフレから脱却するため、政府と日本銀行が一体となり、思い切った金融緩和を行うなど、政策を総動員して対応していきます。また、子供たちの命を守る防災への公共投資、経済成長のための公共投資は堂々とやるべきだと考えています。

引用終わり


 はっきりと消費税を上げる前にデフレから脱却と言っているわけです。そして総裁になった後の衆議院選挙ではどうだったか。

重点政策2012 自民党

「日本を取り戻すための戦い」安倍総裁が会見 BLOGOS編集部2012年11月16日

記事より引用

本日、衆議院は解散されました。
私達は、今日までのこの3年間、もう一度、自由民主党を見つめ直し、そして我が党の結党理念をもう一度見つめ直し、今日の日に備えて政策を鍛えあげて来ました。

この戦い、私達は、日本を取り戻すための戦い、そう位置づけています。我が党は、この選挙戦において、私達の理念に基づいた政策を堂々と訴えていきたいと思います。

強い経済を取り戻して行く。
強い経済は、しっかりとした社会保障の基盤につながっていきます。
強い経済は、活力のある地方につながっていきます。
強い経済は、東北の復興の大きな力になるわけであります。
私達はどうやって経済を強くしていくか、経済を成長させていくか 、具体的に政策を示していきたいと思います。

引用終わり


 これでもかと言わんばかりに「強い経済」と繰り返しています。まずは経済、それで安倍総裁は戦って自民党が勝利しました。ちなみにこの時の公約には増税をするとも延期するとも書かれていません。

では3回目を見てみましょう。

【チャンネルくらら】倉山満の3分間スピーチ 第3回 増税は間に合わない論のウソ③


今回のポイント

・安倍自民党総裁は総選挙でアベノミクス、まず景気を回復させる、ということをそれまでの支持者の批判を受けながらも戦って勝った。だから、増税というものを絶対やめるとは言っていないが、それ以上に優先順位は景気回復だ、ということが総選挙によって国民に示された。
・参議院選挙でも安倍さんは勝った。この時点で安倍さんは、自民党総裁選挙、衆議院議員選挙、間に東京都議会選挙という、国政選挙と同じ扱いを受けるような大型選挙、そして参議院選挙。安倍さんは全部の選挙で勝って、連立与党は過半数を獲得して、完全に国民の信任を受けた。
・増税を決めたのは前の民主党内閣と安倍さんに総裁選で負けた野党(ここで倉山氏は野党と言っているが谷垣元総裁のこと?)。山口さん(公明党)は与党第一党でも何でもないので与党の一角ではあっても、与党がどうしてもこれやりたいという事だったら従うか、連立離脱かどっちらかしか無い。
・安倍さんの意思が国民の意思として示されたので、増税よりもアベノミクスが優先。
・安倍さんは参議院選挙で勝った後、10月上旬に決める景気動向をみて判断すると言っていた。ここで何か問題があるか。問題があるならこの時に言えばいい。黙っているという時点で何で異議申し立てをしないんだという話になる。
・予算は毎年国会の意思として示される。予算請求が行われていて全部取りまとめると99兆円になった。それは役人の中のルーティーンの世界。
・あくまで予算というのは計画書、見積書に過ぎない。この時点でみんなの要望を聞いてるだけ、御用聞き。総選挙で選ばれた国民の意思と、所詮は御用聞きとどちらが優先か。
・あとになって「安倍さんは何でこの時臨時国会を開かなかったんだ、もう決まった事なんだよ」という人は、一体このプロセスをどう思っているのか。総理大臣は選挙で選ばれた人、御用聞きをやってる財務省の役人は所詮官僚に過ぎない、選挙で選ばれた人ではないどちらを優先するのか。本当に選挙で選ばれた総理大臣の意思が役人の御用聞きの都合で覆されていいのか。

 参議院選挙の自民党の公約はこちらです。

自民党 2013年参議院公約

 強調されているのは復興と経済。

 この公約で消費税に関して書かれているのはこれだけです。

●弱い立場の方には、しっかりと援助の手が差し伸べられるよう、消費税については全額、社会保障に使います

 やはり増税延期するともしないとも書いてありません。

 そして増税をするかどうかの判断についてはまず首相になってすぐの発言がこちらです。

安倍内閣総理大臣年頭記者会見 平成25年1月4日

(記事より引用)

消費税の引き上げの実施については、4~6月の経済指標を含め、経済状況を総合的に勘案して判断をしていくことになります。3党合意では、来年春に消費税を引き上げるということが決まっておりますが、その方向に向かうように、経済を再生させていきたいと考えております。

(引用終わり)


 4月~6月の経済指標、GDP速報が出たのは8月12日です。

2013(平成25)年4~6月期四半期別GDP速報 (1次速報値)

 このくらいに出ることは当然わかっていたことなので、どんなに早くても判断は8月以降ということになります。総理になってすぐにある程度の時期は明言していたわけです。

 その後、その後4月には秋には判断されるという報道がされています。

消費税引き上げまであと1年 2013年4月8日(月)

(記事より引用)

「もう1年を切っているんですね。
引き上げの予定です。
来年の4月に今の5%から8%に。
そして再来年の2015年の10月には10%と、2段階で引き上げることになっています。
10%への税率の引き上げで13.5兆円の税収増が見込まれています。
この引き上げの実施について政府は、経済状況などを勘案して、この秋に判断するとしています。」

(引用終わり)

 そして後に日銀短観を見てから決めるという発言になっています。日銀短観が発表されたのが10月1日です。

短観(要旨)(2013年9月)2013/10/01

 政治のスケジュールとしてこのように決まっていて、そして景気条項があり時の政権が増税判断して良いことになっている。それなのになぜ増税は間に合わないと自民党の議員は言いだしたのか。予算編成上の都合は本当なのか。そもそも官僚のルーティーンワークが国民の意志を覆すことになってよいのか。次回に続きます。

【チャンネルくらら】倉山満の3分間スピーチ 第4回 増税は間に合わない論のウソ④


今回のポイント

・今まで安倍さんのやってきたこと(まず経済)は国民の信任を得ている。
・官僚、特に財務省は本来は7月から始めたいのだが、選挙があったので、7月末から8月にかけて各省に御用聞きをやった。
・各省が、政治家にお願いして、いわゆる族議員と言われる人たちも使って、総動員して、団体の陳情を受けながら、予算請求が集まった(99兆円)。この時、自民党内には「えっ、99兆円も支出があるんだったら、増税しなきゃダメじゃ~ん」みたいな、わけがわからない雰囲気が広がった。
・財務省主計局の本来の仕事というのは無駄遣いを切ること。みんなが欲しいから増税して国民にツケを回す、そういう官僚は財務省主計局には居てはいけない。ところが、今回だけは、「あっ、増税させてくれるんだ。」というわけがわからないハシャギ方をした。
・その後、「増税は決まったことです」と散々圧力をかけた。最後はオリンピックが決まったので増税できるという意味不明なことになった
・そもそも予算とは何か。憲法にも財政法にも「予算案」はない。官僚が、つまり、実質的には財務省主計局があくまで計画表、見積書に過ぎない予算を作って、財務省の中で決まり、省議で決まり、そして内閣で、ここは形式的に決まり、そして衆議院に提出する。実は、「予算案」ではなく「予算」。しかし衆議院でその予算を承認しないかぎり、国会が予算を承認しないかぎり、法的効力はない。
・「予算」は、確かに「案」ではないかもしれないが、あくまで「見積書」に過ぎない。この見積書に過ぎない、法的効力がないものによって、選挙で選ばれたアベノミクスという意志、国民経済を回復させることが最優先だという選挙で選ばれた意志、法律よりも上にあると言っていいくらいの、最優先の国策、それがひっくり返されるとはどういうことなのだという話。
・「予算編成の都合がある。実際、99兆円がきた。どれくらい税収が入るかどうかわからないで、早く増税を決めてくれ。じゃないと予算が組めない」そんなことは選挙で選ばれた政治家が決めたことに合わせてやればいいのに政治家が官僚に合わせてしまった。ここに悲劇がある。


 この回はもうほとんど解説することはないでしょう。見積もりに過ぎない予算を執行するために、なぜか増税しなければいけないというおかしな空気が作られ、自民党議員はそれに乗ってしまった。もちろん彼らが官僚の都合にただただ流されたわけではなく、裏にはいろんな利権などが絡んでいるのでしょう。しかしながら、国民の意志である景気回復はどこに行ってしまったのかという話です。これに対して本当はもう決まったこととせずに国民は声を上げるべきだったのでしょう。しかしながらマスコミもそれを封殺するかのように増税はもう決まったことだと報じたことは前回の記事に書いた通りです。

増税と政局~マスコミは消費税をどう報じたのか~

【チャンネルくらら】倉山満の3分間スピーチ 第5回 増税は間に合わない論のウソ⑤


今回のポイント
・増税法案は、施行期限が決まっている。平成26年の4月から8%で27年から10%。施行期限がある法律は確かに新たなる法改正をしなければならない。「新規立法が必要だからもう間に合わない。何で夏休みなんて取ったんだ。延期したいのだったら国会開いとけよ」みたいなことをここになって言いだした。では何月何日までにこの附則18条を生かすために新規立法をしなきゃいけないか。9月10月の段階でもうまにあわないじゃないか、と言うのが実はトリック。
・増税判断は10月上旬にすることを決めていた。仮に10月1日とする。10月1日に延期判断をすると国民によってえらばれた総理大臣が判断しているのに、法律があるから10月1日より前の今の段階で決まってないのはけしからんとはどういうことか。国民の意思を無視するのかと言う話。そして政策の結果として国民経済ダメにするのかという話。国民経済にとって必要なこと国家のために必要なことでも官僚が作った法、すでに決まってる法、官僚行政の今の慣例の方を優先するというのはおかしな話。
・「必要は法に優先する」あまり褒められた言葉では本当は無いが、でもイギリス人などが憲法、国際法で運用している言葉がある。国民にとって国家にとって必要なことを所詮はそれまでの前政権の作った法であるとか、官僚の都合だけによって動かしてる法に優先させなきゃいけないなどということがあってはいけない。必要のためには総理大臣が変えなければいけないことは変えればいい。


 国民のために優先しなければならないことは何か。先日の安保法制に関わる集団的自衛権の議論などまさにそれを感じました。そもそも集団的自衛権が違憲だということがおかしな話なのですが、憲法9条が戦争放棄を謳っているからと言って何もせず何にも備えず、座して死を待つのが当たり前のような議論がなされる我が国の状況は本当に嘆かわしいことだと思います。本当に必要ならば変える必要がある事は変えなければならないはずです。

 そういえば、普段は消費増税に反対しているのに、この時は不思議なことに「悪法もまた法なり」と言った方がいましたね。

竹中平蔵の消費税増税理由がアホっぽい件



【チャンネルくらら】倉山満の3分間スピーチ 第6回 増税は決まった論のウソ⑥


今回のポイント

・毎年予算を作っている。あくまで予算は国会が認めるまでは財務省が何を言おうが見積書に過ぎない。法的効力はない。見積書に過ぎないということは今回の増税を延期するかどうかによって歳入の見込みが変わってくる。見積もりが変わってくる。予算に法的効力がない見積書なら総理大臣が歳入の見積もりを10月上旬に変えると言ってその時から動き出していけばいい。
・法律で決まっている、施行期限が決まっている法律に関しては新規立法が必要である。総理大臣が増税やめるぞと言ってから予算関連法案として通せばいい。
・そんな法案審議してたら大変だ、そんな時間はないと言うが、施行期限が決まっている法律を延期するのにどれくらいの条文が必要か。一行で十分。増税法案に「平成26年度から8%にするのは延期する」と一言書けばいい。それに3か月間を臨時国会全部費やすのか。当時自民党では増税延期を今からしたら臨時国会全部吹っ飛んでしまう、みたいなこと言われたが、延期するだけなら一行で済む。方針に賛成か反対かしかない。与党が従えば朝、衆議院を通して、夜、参議院通すので終了。今更総理大臣が公約に掲げた、増税延期によってアベノミクスを守るということをひっくり返すのかという話。法律論としてはそこで終了。臨時国会全体がダメになってしまう、みたいなことを言われても困る。一行の法案に何日審議する気だったのか。

 ここでたった一行で済む増税延期法案を審議するのに3か月もかかるのかという話が出ています。消費税10%の延期の法案がどのような流れで採決されたのかを参考までに見てみましょう。

・第189回国会(通常国会)が平成27年1月26日に召集。
・消費増税延期、法案が平成27年2月17日に閣議決定。法案提出。
・平成27年度税制改正法が平成27年3月31日参議院本会議にて可決。

 この平成27年度税制改正法は消費税延期だけに絞ったものではなかったのであまり参考にはならないかもしれません。この時消費税に関することでは平成27年10月1日に消費税10%に上がるはずだったのが、平成29年4月1日に延期、そして附属18条3項が削られることになりました。特別話題になることもなく当たり前のように成立しました。要は与党内で話がまとまっていれば当たり前に通ったわけです。これを思うにもし安倍首相が平成25年の10月1日に増税延期判断をしても与党内さえまとまれば同じようなことになった、少なくとも臨時国会全体が駄目になるというようなことはなかったでしょう。

 長くなりましたので7回、8回は次回にまわしたいと思います。次回は結論です。


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こう言う記事待ってました!
続きも読みます。

Re: タイトルなし

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yumi

Author:yumi
富山市在住。夫と息子、猫2匹と暮らす会社員。

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