お薦め動画 江崎道朗のネットブリーフィング「天皇陛下のご譲位は国政にあたるから憲法違反なのか」

 
 こちら、実は記事は準備していたのですが、私がたらたら書くよりも、動画を一回見てもらえば済むことだよなあと思って、UPしておりませんでした。1月の放送を今更取り上げるのかという気がしますが、先日のブログを書いているときに再聴したら、こんなに良い内容なのに再生回数が少ない!現在、もう陛下の譲位に関する特例法も成立、公布し、「天皇ロボット説」も覆されたわけですが、依然として内閣法制局について知ることは大切ですし、彼らが憲法解釈を一手に握っていることは確かです。それでこちらの番組の内容を振り返りたいと思います。話題として旬ではないことは承知の上です(汗

【1月8日配信】江崎道朗のネットブリーフィング「天皇陛下のご譲位は国政にあたるから憲法違反なのか」小野義典【チャンネルくらら】

 動画の内容をまとめると

・日本国憲法学の泰斗、宮沢俊義。彼は天皇はめくら判を押すロボット、国事行為だけやってればいいと言っていたが、天皇をロボット扱いしていいのか。

・「文藝春秋SPECIAL 皇室と日本人の運命」のTBSの山口敬之氏のレポート。陛下の譲位の御意向を踏まえて、政府の中でどうしたら良いのか検討したが、その時に皇位を譲るというのは政治的行為なので、憲法が禁じる国政に当たる。天皇陛下が譲位をするのはだめだという話になり、仕方なく生前退位と言う言葉を作らざるを得なかった。

・天皇の行為は三種類ある「国事行為」(憲法に列挙されている)、「私的行為」(プライベート)、「公的行為」(憲法1条の象徴という地位に伴う、行幸や被災地へのお見舞いなど)。天皇は国政行為はやらない。安倍政権は陛下が譲位されることは憲法第4条が規定している天皇の国政に関する権能を有しないという憲法に違反する可能性が高いと判断した。

・このことでおととしの段階で、官邸に陛下の退位の意向を示されたが潰されていった。それで去年の8月8日のビデオメッセージという流れになった。

・今回の件で3つの問題点。

① 現行憲法には退位や譲位を禁じる規定はない。譲位が憲法の禁じる国政に当たるというのは内閣法制局の解釈に過ぎない。内閣法制局の見解はかなりいい加減。例えば外国に訪問という極めて政治的な活動は国政として見なさない。一方で譲位は国政と見なす。天安門事件の後の中国訪問など世界中で注目された極めて政治的色彩の高いものは国政に当たらず、譲位という陛下が御位を譲られるということは国政に当たる。なぜ政権は陛下が譲位されることは国政にあたらないとしなかったのか。

② 天皇陛下の御意思に従って政治が動くことが違憲だとする意見もあるが、陛下の外国ご訪問について内閣法制局はこれまで「陛下の思し召しを伺って外国訪問の予定を立てなければならない」としている。政府の意思ではなくて、最終的には陛下の御意思によって外国訪問の日程は決めますというのが日本国憲法のあり方だと言っている(高辻正巳内閣法制局次長、昭和39年衆議院内閣委員会答弁)。陛下のやることは陛下の御意思に基づいていいのか、良くないのか。

③ 現行憲法制定の時にGHQの英文を訳した第一案3月2日案で、日本国政府は日本語の訳を「天皇はこの憲法の制定する国務に限りこれを行う。政治に関する権能を有することなし」とした。これは何かというと、国家の命運とかそういったものについては陛下はこれに関わる。しかし権力闘争、政党の政治などには関わらないという本来のやり方で行く。ポツダム宣言の受託など、国家の命運にかかわることは陛下の御聖断を仰ぐということは絶対に必要。勿論それは政府の責任においてなされるものだが憲法に定める国務に関しては陛下にお関わりいただく。そういった意味で政府は日本語訳を出したがGHQに否定された。

・そもそも我々は何のために憲法を改正したいのか。陛下をロボット扱いして、終戦のご聖断のようなときに陛下の御意思を仰ぐようなことを禁じるような憲法や運用を我々はしたいのか。しかし日本国憲法が出来た時の立法者の意思はあくまでも陛下に国家の命運にかかわっていただきたいというものだった。現在の日本政府はその意思を受け継ぐつもりはないのか。内閣法制局は出鱈目、なぜその出鱈目に安倍政権は騙されるのか。集団的自衛権の時は出来たことがなぜ安倍政権は出来ないのか。日本の保守派は内閣法制局と懸命に戦ってきた。それが現在の自民党には全く伝わっていない。

・公的行為ということので昨年の12月23日の朝日新聞に横田耕一氏の記事があるが、天皇は国事行為のみすればいい、公的公務などする必要がないと言っている。このような記事を載せるのなら、朝日新聞主催の美術展とか展覧会に陛下のお出ましを仰いているが、朝日新聞はそういうことを今後一切やめるのか。



 陛下のお言葉に関しては有識者会議でも話し合われ、テレビでも様々な特集がなされていますが、内閣法制局の名前を聞くことはほとんどありません。天皇に関する現在に至る国会での議論は簡単にまとめてあるものを見つけましたので、よろしければご参考にしてください。

憲法における天皇に関する主な国会答弁等

 退位(中でそう書いてあるのであえてこの表現で)に関してももちろん、その時々で一貫してはいませんが、その規定を設けるならば、皇室典範の改正により可能という見解が主なようです。

 しかし今回の陛下の8月8日の玉音放送の後も、内閣法制局の見解は変化しています。

“生前退位”内閣法制局「憲法改正が必要」 2016年8月22日 19:44

法制局長官、生前退位“憲法改正必要ない”2016年9月30日 15:45

 8月22日のニュースの出所が明らかでないのですが、このような意見を一度出しておいて、転換した意図はなんなのでしょうか。

 江崎先生もおっしゃっていますが、内閣法制局の憲法解釈が如何に一貫していないかは以前にも当ブログにも書きました。

ニコニコ生放送 【安保法制】次世代の党 和田政宗 vs 憲政史家 倉山満 対談生中継 を見て ~安保法制に関する誤解とは

 平和安全法制でマスコミやサヨクが「安倍政権は今まで行使できなかった集団的自衛権を一内閣の判断で変えようとしている!」というプロパガンダをさんざんやりましたが、それが如何に出鱈目か。もともと行使出来るとしていたもの、そして今でもずっと行使しているものを、行使出来ないと言っていただけなのに、結局最後までそのことをはっきりとさせないまま、強行採決のレッテルまで貼られてしまいました。

 今回のこの件でますますこの安保法制の時に、内閣法制局が如何にいい加減な憲法解釈をやってきたのかをきちんと政府が説明していれば良かったのにと思いました。せっかくあの時、内閣法制局の人事に手を入れて小松一郎氏を内閣法制局長官にしたのに、ご病気で退陣せざるを得なかった。そして次の長官人事には介入できず横畠裕介氏が長官になった。彼がどのような人かというと第一次安倍政権の時に集団的自衛権を行使できるようにするのを潰した人です。記事が消えているので、元記事のタイトルとそちらからの引用を載せておきます。

≪罪深きはこの官僚≫横畠祐介(内閣法制局内閣法制次長)「憲法の番人」復活を画策する次期長官

(記事より引用)

 横畠は検事出身で一九九九年八月に法制局に出向、総務主幹、第二部長を歴任し、「次の法制局長官が確実視されたエース」(法制局関係者)だ。過去にも、安倍晋三内閣が集団的自衛権の行使容認を目指して懇談会を設置した際、第二部長だった横畠は、当時の法制局長官の宮崎礼壹とともに「強引に推し進めれば辞表を出す」と迫った過去がある。

(引用終わり)


 この番組の中で江崎先生もおっしゃっていますが、戦後の保守派はずっと憲法解釈において内閣法制局と戦ってきました。正確に言うと、第一代内閣法制局長官 佐藤達夫、第二代長官 林修三まではGHQによって押し付けられたこの憲法を解釈と運用によって骨抜きにすることをやっていました。しかし、第三代長官 高辻正巳でこの集団的自衛権の解釈も一気に真逆のものになってしまい、今や内閣法制局は共産党すら右に見えると言われるような組織になってしまいました。

 本来の内閣法制局の仕事はこのようになっています。

・法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べるという事務(いわゆる意見事務)
・閣議に付される法律案、政令案及び条約案を審査するという事務(いわゆる審査事務)

 
内閣法制局

 内閣法制局は法律などに関して審査したり、意見を述べたりする機関であって、本来、憲法判断をするのは最高裁のはずです。その最高裁が憲法判断に消極的であるというのはさておき、内閣法制局が憲法解釈をしても、それを採用するかどうかは政府の責任であるはずです。なぜここまで政権は内閣法制局の言いなりにならなければいけないのでしょうか。

 今年になって安倍政権は改憲の議論を深めると発言しています。

安倍首相「改憲議論深める年に」…自民・仕事始め 毎日新聞2017年1月5日

 5月3日の憲法記念日にはより具体的な安倍総理の発言がありました。

首相「2020年に新憲法」 9条に自衛隊明記 2017/5/3 14:06

 しかし、現在の憲法論議ではどこの条文を変えるとか、どのように変えるとか条文論議にしかなっていない感があります。本当に大事なことは条文をどうするかではなく、どのように運用するかではないのでしょうか。条文をどのように変えようともその解釈を現在の内閣法制局が独占している状態で一体何が変わるというのでしょうか。

 今回の特例法では、さすがの内閣法制局も天皇陛下と多くの国民世論に逆らうことは出来ないと判断したのでしょう。「天皇ロボット説」が覆されたのは僥倖ですが、「上皇后」といういかなる先例に基づいたのかわからない名称が使用されることになったのが悔やまれます。これは政府の責任ですが...

 内閣法制局について、政治家どころかそれを取り上げる言論人すらあまりいないこの状況をまず変えなければ現状を変えることは難しいでしょう。それを知っていただくためにも多くの人にこの動画を見て頂きたいと思います。

 しかしながら、一時期盛り上がっていた憲法改正ですが、安倍政権の支持率急落でそれどころではない感じですね。今、経済より憲法改正などと言う人は正直バカだと思います。そんな大それたことは消費税減税か凍結してからやってほしいです。

 最後に、こちらで取り上げられていた、朝日新聞の横田氏の記事ですが、妙に既視感があるというか、最近似たようなことを保守(呆守)論壇の自称リーダーが言っていました。天皇は公務は一切しなくていいと。本当に陛下のあのお言葉を100回でも1000回でも聞き直せばいいと思います。陛下がどのような思いでご公務をなさっているのかを考えたら絶対にそんなことは言えないはずです。

 なお、今回の番組の内容については、正論2月号でも江崎先生が取り上げていますので、よろしければこちらも是非お読みください。




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テーマ : 憲法改正論議
ジャンル : 政治・経済

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富山市在住。夫と息子、猫2匹と暮らす会社員。

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