情報に振り回されないためには

ちょっと古い話題ですが、こんな記事がありました

室井佑月「『吉田調書』流出で安倍サイドの洗脳はぶちこわし」

http://dot.asahi.com/wa/2014060400085.html

 室井佑月という人がいます。本来は作家で、頻繁にテレビにコメンテーターとして出てきて、ネットでも記事が上がっています。なんだかいつもピントの外れたような記事を書いていますが、今回も突っ込みどころ満載です。

 まず、取り上げている記事が5月23日付の「日刊ゲンダイ」です。ここからして突っ込むところですね。安倍首相の悪口を一日一回は書かなければ死んでしまう病気にでもかかっているのか、と疑われる「日刊ゲンダイ」。知り合いの医者とやらが診察もせずに、安倍首相を精神異常者呼ばわりしてそれを記事にする「日刊ゲンダイ」。その「日刊ゲンダイ」の記事がこれです。


安倍官邸が激怒! 福島原発「吉田調書」流出で“犯人捜し”
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/150411/1

 まず官邸事情通なる怪しい人物の本当だかどうだかわからない証言。「原発再稼働に突き進む安倍政権にとって、少しでも反原発につながる動きは許せないのでしょう」という勝手な解釈。そして、今回の件は、特定秘密保護法が施行されていたら、吉田調書は闇に葬られ、朝日の記者も渡した役人も逮捕される事態になっていただろう、と(司法ジャーナリスト)に言わせています。

 この官邸事情通なるものの名前が出ていないのはまあ良いでしょう。取材源の秘匿ってやつです。しかし司法ジャーナリストの名前は出しても良いのでは?何をもってこれが特定秘密に当たるのか、ご説明いただきたいです。

 そもそもこの吉田調書なるもの、調書が取られたのは2011年7月22日から11月6日です。民主党政権時代のものですね。特別に安倍政権が隠していたのではありません。なぜ朝日や、ゲンダイや室井さんは民主党を攻めないのでしょうか?

 そして特定秘密保護法に反対する人はちゃんと内容をわかっているのでしょうか。

http://www.kantei.go.jp/jp/topics/2013/headline/houritu_gaiyou_j.pdf

 これを見ればわかるように、おそらく今回の吉田調書は国家公務員法上の秘密には当たっても、特定秘密にはあたらないのではないでしょうか。全文が公開されていないのでわかりませんが、原発内部の記述などがあれば、場合によっては④「テロリズムの防止 」にあたることはあるかもしれませんね。

 そもそも国家公務員には当然のことですが守秘義務があるので、特定秘密でなくても、勝手にこんなものを公務員が記者に渡すのは問題があります。

国家公務員法 第100条
第1項 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。

 しかもこの調書は吉田氏本人から公開されないように要請されているものです。公開しないことを約束したものを、本人の同意を得ずに公開する。こんなことがまかり通るなら貴重な証言をしてくれる人がいなくなり、事実を調査することが困難になるでしょう。

 情報とは当たり前ですが、なんでもかんでも公開すればよいというものではありません。国家機密という外に漏れてしまっては、国家や国民に多大な影響を与えるようなものに関しては、当然秘密にされなければなりません。それを公開しろという人たちは、知る権利や報道の自由という美名を盾にして、悪意を持って近づくものに、国家や国民を差し出すというのでしょうか。何を秘密にするのかは、その時の政府が決める。当たり前のことです。それを決断することに際して、信用のできる人を国会議員として選ぶ、そのことこそが国民の権利ではないのでしょうか。

 室井さんは「日刊ゲンダイ」の記事を元にして

 こんなもの(吉田調書)が出て来たら、少しずつ上手くいきつつある。国の国民への洗脳がぶちこわしだよな。だから、安倍サイドはかんかんなんだろう。

と言っていますが、そもそもこの朝日のスクープって特別新しい情報って出てきてますか?センセーショナルな見出しと朝日風味の味付けで吉田所長の恐れていた”事実の一人歩き“が起こってはいませんか?特に最初の朝日の見出し「原発命令違反し9割撤退」は本文を読めば、単なる伝達ミスで起こったことで、命令違反で逃げたのではないような気がするのですが。この朝日の書き方は、危険な作業に従事し、あの悲惨な状況で死を覚悟しながら働いていた人々に対する冒涜としか思えません。

 真相をもし知りたいと思うのならば、ジャーナリストの門田隆将氏が吉田所長含め100名近い人々にすべて「実名」で証言してもらって書かれた「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日」を読んだ方が、朝日新聞の解釈付きの記事を読むより良いのではないでしょうか。今回の件でも怒りの声をあげておられます。

お粗末な朝日新聞「吉田調書」のキャンペーン記事
http://blogos.com/article/87529/

 「吉田調書」に関しては、朝日新聞もそのまま載せているわけではありませんし、門田氏と朝日新聞のどちらがより真実に近いものかは定かではありません。しかし、生前の吉田所長に一番長く時間をかけて取材をし、100名近い人びとの「実名」をあげて書かれたものと、吉田所長ご本人が、記憶違いなどあるかもしれないので、出さないでほしいといったものを勝手に公開し、なおかつ読み違えがあると思われる記事のどちらが信用できるでしょうか。

 日刊ゲンダイも室井さんも原発や特定秘密保護法に関して懸念をされるのも反対の声を上げるのも結構ですが、もう少し慎重に、事実に即した発言をしてはいただけないでしょうか。影響のある方なのに、自分自身の勝手な妄想で記事を書かれては真剣に反対活動をしている方の足をかえって引っ張ることになると思います。

 世の中には様々な情報が流れています。何が信用できるものかを見極めるのは難しい。しかし、慎重にそれを精査し間違った情報をうのみにすることは避けなければならないと思います。
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Author:yumi
富山市在住。夫と息子、猫2匹と暮らす会社員。

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