本田悦郎内閣官房参与は日銀総裁になれるのか~歴代日銀総裁の前歴を調べてみた


 以前、当ブログで取り上げましたが、本田悦郎内閣官房参与がスイス大使に就任しました。

スイス大使就任の本田氏、当面は内閣官房参与も兼務=菅官房長官

 消費増税10%がまだどのようになるか決していない状況なので心配ですが、6月までは内閣官房参与を兼任とのこと。それまでに増税凍結、できれば5%に戻すくらいの決定がなされればよいと思うのですが。

 しかし、今回の異例の人事ですが、経済学者の飯田泰之先生がラジオ番組で、日銀総裁への布石ではないかとの発言をしています。

2016/3/15 ザ・ボイス 飯田泰之 ニュース解説「本田内閣官房参与 今年前半の追加緩和を示唆」「待機児童問題 国民から対策案を募集へ」など

 

 果たして、本田参与は日銀総裁になれるのでしょうか。この「本田参与が日銀総裁」という話はあくまで憶測ですが、戦後の歴代日銀総裁の経歴からそういった道筋があるのかを検証してみたいと思います。なお、こちらは今までの総裁の前歴からざっくり検証しているだけで、経歴だけではない様々な政治的な取引も加わって総裁人事が行われるであろうことは付け加えておきます。

歴代日本銀行総裁一覧

 こちらの一覧は29代までなので、これに30代白川方明氏と31代黒田晴彦総裁が加わることになります。こちらからちょっとだけ踏み込んで、まず日銀出身者大蔵省・財務省出身者、その他に分けて、前歴を加えました。

 まずは日銀出身の総裁、17代と19代は同じ新木栄吉です。名前の後が総裁になる前の経歴です。

 17 新木栄吉 / 日銀副総裁
 18 一万田尚登 / 日銀理事
 22 佐々木直 / 日銀副総裁
 24 前川春雄 / 日銀副総裁
 26 三重野康 / 日銀副総裁
 28 速水優 / 経済同友会終身幹事
 29 福井俊彦 / 日銀副総裁
 30 白川方明 / 日銀副総裁

 ほとんどが、日銀副総裁、例外が日銀理事18代総裁 一万田尚登、経済同友会終身幹事 28代総裁 速水優になります。

 次は大蔵省・財務省出身者。名前の後が財務省退任前のポスト、その後が日銀の総裁になる前の経歴です。

 20 山際正道 / 大蔵次官 / 日本輸出入銀行総裁
 23 森永貞一郎 / 事務次官 / 東京証券取引所理事長
 25 澄田智 / 事務次官 / 日本輸出入銀行総裁 日本銀行副総裁
 27 松下康雄 / 事務次官 / さくら銀行会長・相談役
 31 黒田晴彦 / 財務官 / アジア開発銀行総裁

 黒田総裁以外は全員次官出身者です。黒田総裁は財務官。財務官は財務事務次官や国税庁長官と並ぶ次官級ポストです。そして総裁になる前のポストとしては他銀行の総裁あるいは東証理事長ですね。

 日銀でも財務省出身でもない人は戦後二人。

 16 渋沢敬三 / 第一銀行副頭取 / 日本銀行副総裁
 21 宇佐美洵 / 三菱銀行頭取

 さて、ここで本田参与。彼は財務省出身ですが、外務省への出向や国際機関での経験が多い方です。財務省での最終ポストは財務省大臣官房政策評価審議官。審議官のポストはいわゆる次官級、局長級、局次長級と言われる形で分かれていて、政策評価審議官は局長級のポストだそうです。事務次官経験者でもその後、他銀行総裁などを経験してから日銀総裁になることを考えると、次官級のポストではない本田参与が日銀総裁になるには更なるキャリアが必要かと思われます。そこで戦後、大使出身者で日銀総裁になったことのある人物を探してみましたが、17代総裁、新木栄吉が公職追放され、それが解かれた後駐米大使になり、その後19代日銀総裁になっています。しかし彼は例外ですし、スイス大使という経歴ががどれほどの力を持つのか私にはわかりかねますので、これ以上の言及は控えます。

 さて、先ほどの例でも明らかですが、財務省出身者で日銀総裁になっているのはほぼ事務次官経験者です。前回の日銀人事の際に武藤敏郎元財務事務次官の名前が挙がっていましたが、彼にはもう目がないと思われますので、その後の事務次官経験者の現在を見てみましょう。
 
 林正和 株式会社日本取引所グループ取締役会議長
 細川興一 日本政策金融公庫代表取締役総裁
 藤井秀人 株式会社日本政策投資銀行代表取締役副社長←現在退任
 津田廣喜 株式会社日本取引所グループ取締役会議長
 杉本和行 公正取引委員会委員長
 丹呉泰健 開成学園理事長・学園長
 勝栄二郎 株式会社読売新聞東京本社非常勤監査役
 真砂靖 日本テレビホールディングス株式会社・日本テレビ放送網株式会社社外取締役
 木下康司 株式会社日本政策投資銀行代表取締役副社長

 どれくらいの規模の金融機関のトップになれば日銀総裁としてふさわしいのかの判断が私には出来かねますので、推測になってしまうのですが、ここで、日銀総裁として名前が挙がるとしたら林正和、細川興一、津田廣喜、そして木下康司…

 スイス大使とは、これらの事務次官経験者を押しのけて、日銀総裁になれるほどのインパクトのあるポストなのでしょうか。

 そして日銀とて、2回続けて財務省出身者から総裁を出すことを良しとするでしょうか。

 現在の日銀副総裁は岩田規久男、中曽宏両名。しかしながら岩田氏は元々日銀出身ではなく経済学者で日銀法改正を主張している人物。片や中曽氏は日銀出身で日銀理事も務めた人物。なんとか中曽氏を総裁にしようと動くのではないでしょうか。

 現在の経歴を見る限りでは本田参与が日銀総裁になるのは相当難しいようです。今の黒田総裁の任期が2018年4月、安倍総理の自民党総裁の任期が2018年9月。本田参与が日銀総裁になるにはそれまでに本田参与が確かな実績を積んでいること、そして安倍総理の力が強いことが条件になるでしょう。

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増税と政局~マスコミは消費税をどう報じたのか~


 『増税と政局』第7弾。今回は消費税にまつわるマスコミの報道について述べていきたいと思います。

 平成25年8月12日、4月から6月のGDP速報値が発表されると、各新聞社が一斉に消費税に関する社説を上げました。

2013(平成25)年4~6月期四半期別GDP速報 (1次速報値)

 日経新聞は賛成の論調、しかしこちらの記事どうなのでしょうね。

消費増税を固め歳出削減にも踏み込め 日経 2013/8/9

記事より引用

 消費税増税と歳出削減に並行して取り組まない限り、財政の健全化はおぼつかない。政府の中期財政計画はその両方を曖昧にしている。これでは日本の経済運営への信頼感は高まらないだろう。

 まずは2014年度からの消費税増税を固めるべきだ。そのうえで中期財政計画を練り直し、もっと踏み込んだ歳出削減のメニューや目標を示す必要がある。

引用終わり


 増税して歳出削減。デフレ下でそれをやればさらにデフレに陥り景気も悪化すると思うのですが。まさに財政再建原理主義者と言った論調です。

 しかも、日経は世論調査でとんでもない印象操作としか思えない記事を上げています。

(本社世論調査)内閣支持上昇、68% 消費増税 7割超が容認

 会員でないと先が読めませんが、後に誤報サイトでも取り上げられています。

日経世論調査「消費増税7割容認」 予定通り賛成は17% 2013年8月31日

記事より引用

《注意報1》 2013/8/31 22:30

日本経済新聞は8月26日付朝刊1面で、自社の世論調査(23~25日実施)の結果について、「消費増税7割超容認」との見出しををつけ、記事本文で「税率引き上げを容認する声が7割を超えた」と伝えました。昨年8月に成立した法律で、消費税は2014年4月に現行の5%から8%、2015年10月に10%に引き上げられる予定となっているため、記事のいう「消費増税」はこの増税予定を指すと誤解される可能性があります。実際は、世論調査で設けられた質問は、消費増税自体の賛否ではなく、予定通り引き上げるべきだと思うかどうかを問うたもので、「引き上げるべきだ」は17%、「引き上げるべきだが、時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ」が55%でした。

引用終わり

この件に関しては産経新聞の田村秀男氏も苦言を呈しています。

消費増税へ強引な世論誘導極まる日経 「8割が否定的」を「容認7割超」に 2013.08.30 田村秀男

 他で消費税に比較的前向きなのは朝日新聞でした。

新聞社説まとめサイト [朝日社説] 景気と消費税―やるべきことを着実に (2013年8月13日)

 産経新聞は消費税に慎重な態度。

【主張】GDPと消費税 首相は複合的な視点もて2013.8.13

 読売新聞も増税には慎重な意見。

遥香の日記より 2.6%成長 消費増税に耐えられる体力か(8月13日付・読売社説)

 読売はその後、明確に社説にて増税を見送るべきだと言っています。ただ、消費税10%に上げるときには新聞には軽減税率を適用しろという少々身勝手な言い分ですが。

遥香の日記 消費税率 「来春の8%」は見送るべきだ(8月31日付・読売社説)

 東京新聞は消費増税に反対。

新聞社説まとめサイト [東京新聞] GDP統計 消費増税の環境にない (2013年8月13日) 

 これが9月になると様相が変わります。

 首相はいったい何度増税決断を行ったのか。異様なペースで「首相増税を決断」の記事が繰り返し新聞各社で掲載されることになります。

 こちらは倉山満氏の『増税と政局・暗闘50年史』にまとめてあるのでそちらを引用させていただきます。ページ内にあるGOHOOサイトはどうも削除されてしまったようです。増税決断との記事は細かいものをを探せばまだたくさんあったはずです。



『増税と政局』P104より引用

【読売】
2019/9/12朝刊1面「消費税 来年4月8% 首相、意向固める 経済対策に5兆円」、同2面「『景気に冷や水』回避願う 『2%』分は実質還元」

2013/9/16朝刊2面「消費増税『家計支出減らす』56% 本社世論調査『軽減税率導入を』74%」

2013/9/23朝刊「消費税10%は『経済次第』 首相『推移見ながら判断』強調」

【朝日】
2013/9/21朝刊1面「首相、消費税引き上げを決断「来年4月から8%に」

【毎日】
2013/9/13夕刊「小委増税 来年4月8% 安倍首相『環境整う』判断 経済対策、5兆円規模検討」

【産経】
2013/9/19朝刊1面「消費税来春8%、首相決断 法人減税の具体策検討指示」

【日経】
2013/9/19夕刊1面「消費税来春8% 首相決断 法人減税が決着、復興税廃止、前倒し 来月1日表明」

2013/9/23朝刊2面「10%は改めて判断 消費増税 首相『経済の推移見る』」

【共同】
2013/9/12「消費増税 来年4月8%に 首相、10月1日表明へ」

【時事】
2013/9/12「消費税、来年4月に8%=経済対策5兆円で下支え=安倍首相、来月1日のも表明」

2013/9/22「消費税10%は改めて判断=集団的自衛権、来年以降に―安倍首相」

【東京】
2013/9/12夕刊1面「消費税 来年4月8% 2%分 経済対策5兆円 首相判断 社会保障目的どこへ」

2013/9/23朝刊2面「消費増税 10%上げ時に再び判断 朱書 8%後の経済踏まえ」

引用終わり


 そもそも首相の意向は常に菅官房長官が記者会見で発表していますが、ずっと「総理はまだ決めていない」と発言しています。

内閣官房長官記者会見 平成25年9月25日(水)午前

 こちらでは「総理が10月1日の日銀短観を踏まえた上で判断する」「新聞報道がどんどん先行してるますからあたかも決まったように皆思ってらっしゃるんじゃないでしょうかね」と言っています。菅官房長官はこのように明言しているのに、マスコミは消費税がもう決まったことだとの報道を行ったのです。

 そして、10月1日の指標を見て決めると言っているのに、マスコミは10月1日の記者会見で発表と報じます。

 結局、安倍総理は、10月1日、マスコミの発表通りに消費税を平成26年4月1日より8%にあげるとの決断をし、記者会見を行います。

安倍内閣総理大臣記者会見 平成25年10月1日

 消費税を上げれば景気は落ち込むことがわかりきっているのに、マスコミが消費増税は決まったことだとの印象操作をしてしまう。どれほどの圧力があったのかと思います。この時安倍首相の経済ブレーンである浜田・本田内閣官房参与は増税に反対していました。それでも、首相が増税を決めてしまった理由に「私よりも財務省の説得が強かったため」と浜田参与は語っています。

浜田内閣官房参与、アベノミクスを採点 金融緩和はAプラスだが、成長戦略はE ロイター 2013年11月16日

 この時、財務省の言い分を代弁していたエコノミストや増税に賛成していた有識者はこちらにまとめがありますのでご覧いただけたらと思います。結局、順調に回復していた景気はひどく落ち込みました。消費増税による景気悪化をアベノミクスの失敗だと言う人がいますが、違います。アベノミクスに無い消費増税、それも第二の矢の『機動的な財政出動』の反対のことをしたので景気が悪化したのです。

嘘をついたエコノミストは誰か?増税賛成派のデタラメな主張!

 あからさまに景気が悪化してしまった後、新聞は何をしたのでしょうか。

軽減税率適用を求める100万人署名運動

 消費増税を後押ししておきながら自分たちは消費税を上げてほしくないと。なんとも身勝手な主張です。

 新聞社が言説を変えた。特に増税に反対していた読売新聞も増税が決まったことだとして報道するようになったことに関して面白い記事があります。

全国民必読 安倍を操る「財務省7人のワル」をご存じか 消費税増税のウラで高笑い 2014年04月30日

記事より引用

もちろん大手メディアへの対策も抜かりはない。特に力を入れているのが、安倍首相と懇意な渡辺恒雄氏が率いる読売新聞。昨年8月31日に読売新聞が『消費税率「来春の8%」は見送るべきだ』との社説を掲げた際には、事務次官の木下康司氏('79年)がすぐに渡辺氏のもとへご説明に伺ったほど。

引用終わり

 なるほど渡辺恒雄氏ほどの大物になると財務事務次官様が直々にご説明されるわけですね。某ネット放送の社長が「私は木下とかこんな連中に会ったこともないし、このそういうなんとかっていう次官にもあったこともないしね、電話で話したこともない」と言っていましたが、彼はそこまでの大物ではなく、彼など会わずとも操ることは簡単だということでしょう。しかし、増税が決まった直後に「木下が増税の黒幕だというソースを出せ」と言っていた人たちはこの記事や後の首相の言葉を聞いてどう言い訳するのでしょうね。

 メディアと財務省の関係も上げておきます。なぜマスコミが財務省に都合のいい記事を書くのかの理由の一つでもあるかと思いますので。現在、軽減税率も、生鮮食品か加工食品かなどの議論がされていたのに、なぜかそこにちゃっかり新聞も入っているのがおかしな話ですね。

元財務高官が続々天下る読売・日テレの狙いは 2014年7月26日(土)

記事より引用

読売新聞社・日本テレビグループに財務省の元高官が相次いで天下っている。

6月10日、元財務事務次官の勝栄二郎氏が読売新聞社の監査役に就任したのに続き、6月27日には前財務次官で弁護士の真砂靖氏が日本テレビホールディングス(HD)と日本テレビ放送網の社外取締役に就任。元財務次官の読売新聞社監査役就任は、丹呉泰健氏(1974年入省)に次いで2代連続となる。

引用終わり


 財務省に逆らえばマスコミまで敵に回すと言う指摘もあります。

安倍首相 財務省の天下り先を潰して厳しい報復受けた過去も2014.09.09

記事より引用

それなのに財務省の意向に逆らえないのは、国民より財務官僚の信頼を失うことが怖いからだ。安倍首相は7年前の第1次政権でその怖さを身をもって経験した。

 当初は小泉政権から引き継いだ圧倒的多数を背景に公務員改革を進め、財務省の天下り先に大鉈を振るって政府機関の統廃合に取り組んだ。だが、半年経たないうちにその威勢は消し飛んだ。第1次安倍政権の元閣僚が振り返る。

「閣僚のスキャンダルや消えた年金問題がリークされ、支持率が落ち目になると、財務省は全くいうことを聞かなくなった。そうなると内閣はひとたまりもない。官邸は閣議の際に大臣たちが総理に挨拶もしない“学級崩壊”状態に陥った。あの時のトラウマがあるから、安倍総理は政権に返り咲くと政府系金融機関のトップに財務省OBの天下りを認めることで7年前の償いをせざるをえなかった」

 財務省の尻尾を踏めば大メディアまで敵に回る。

 やはり7年前、安倍首相は新聞の宅配制度を支える「特殊指定(※注)」見直しに積極的だった竹島一彦・公正取引委員長を留任させた。その人事でさらなる窮地に陥った。

【※注】特殊指定:地域や読者による異なる定価設定や値引きを原則禁止する仕組み。

「財務省と宅配を維持したい大手紙側は竹島さんに交代してもらう方針で話がついていた。ところが、安倍総理が留任させたことから、財務省は『安倍政権は宅配潰しに積極的だ』と煽り、それまで親安倍だった読売などのメディアとの関係が冷え込んだ」(自民党関係者)

 財務省の天下り先を潰しただけで、それだけの報復を受けたのだ。その後、自民党から政権を奪い、「総予算の組み替え」で財務省の聖域である予算編成権に手をつけようとした民主党政権の悲惨な末路を見せつけられた。

引用終わり

 結局、財務省の圧力とメディア攻勢に、ずっと安倍総理の経済ブレーンとして消費増税に反対していた本田内閣官房参与が「総理と刺し違えても『消費税10%』は阻止します」と立ち向かい、最後は解散風で与党内の意見をまとめ、全ての野党も増税に反対するという事態になり、ようやく増税延期の決断、その後の解散総選挙となりました。

 この後、安倍総理の口から、財務省の増税への凄まじい説得工作が語られることとなります。

安倍首相、消費増税めぐる財務省の政界工作を示唆 省益優先で不況下に緊縮財政の罪2014.12.01

記事より引用

 11月30日、各党代表が出演したテレビ番組『新報道2001』(フジテレビ系)内で安倍晋三首相は、キャスターの「(衆議院)解散の理由は財務省による消費増税包囲網を打開するため、という見方があるが、その真意は」という質問に対して、以下の2点を述べた。
 ひとつは理念的な理由ともいえるが、来年10月に予定していた8%から10%への消費再増税を2017年4月へ先送りし、総選挙でその信を国民に問うというものだ。さらに「現実論として」と断ったうえで、「財務省が『善意』ではあるが、すごい勢いで(消費再増税にむけて)対処しているから党内全体がその雰囲気だった」と明かし、その「勢い」を転換することが必要だったと述べた。事実上、キャスターの問いを肯定するものだった。
 財務省が消費増税について政治家に対する説得工作を行っていることは、これまで多くの識者やマスコミにより言及されてきた。だが、その影響力が選挙なしでは払拭できないほど政治を浸食していることが、時の首相の口から出たことは極めて重大であるし、また興味深い事実でもある。

引用終わり


 本当に、財務省が増税の黒幕のソース(以下略)

 現在は、まるで軽減税率が決まったかのような報道が続いています。そのような報道になるのは官邸の動きを見れば仕方のないことかもしれません。しかし、最近の世界同時株安などを受けて、来年の10%の消費増税は無理との意見や、参院選に合わせて衆参W選挙で増税を延期決断をするのではないかと言う報道も出ています。

 そんな中、いち早く「再増税中止宣言せよ」との記事を掲載した、産経新聞と田村秀男氏には敬意を表したいと思います。

産経新聞20160115


 後1つ記事を書いて一旦この『増税と政局』は終わらせるつもりですが、なぜこのような記事を書き続けているか。歴史認識、憲法、安全保障。日本を取り巻く様々な問題があります。安倍総理はこの問題の全てに取り組んでいる稀有な政治家です。その安倍総理が「まず経済」と言って二度目の政権を取ったのです。お金は単なる手段です。しかしそれがなければ食べていくこともできません。生活に余裕がない状態で、国民は真剣に憲法のことなど考えるでしょうか。十分な予算がなければ国防費を増やすことも出来ません。そして、そのために必要なことは経済成長なのに、20年近く日本は誤った政策を取ってきました。そしてそれを取り戻せるかと思っていた矢先、2013年10月にまた誤った判断をしてしまいました。過ちを繰り返さないために、これまでに起こったことを整理して置きたいと思いました。

 次は某ネット放送のあるシリーズを検証する予定です。

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増税と政局~保守界隈のバカ騒ぎ ~愛国者それとも愉快犯?青山繁晴編~

 
 さて、「増税と政局」第5弾、今回取り上げるのは民間シンクタンクの独立総合研究所代表取締役社長青山繁晴氏です。普段から自分が愛国者であり、安倍総理と親しいことを公言している彼。なんと安倍総理が硫黄島で土下座をしたのは彼の助言からだそうです。安倍総理を主語にいろいろ語っていますが、本当に親しいのは石破茂氏のようで、自民党総裁選では石破氏を推していました。

たかじんNOマネー コメント力グランプリ 動画 2012年9月22日放送[FULL]


26:00~
 僕は、石破さん安倍さんどちらでもいい。ただし、本来は安倍さんは一度閣僚をやって、特にご自分の主張を外務大臣として貫けるかどうか、ちゃんと世界に示す。それからお腹痛いの克服したのを示して、ほんとに苦労してからもう一度総理にチャレンジすべきだと思うから、今回は石破さんの方がいいと思う。


 この番組なぜか「かわいいから石破さん」などと不思議な石破氏上げが行われていました。しかしさらっと「お腹痛いの」などとマイナスのイメージの言葉を青山氏は挟み込みます。

 参議院選が終わった直後から、麻生財務大臣が、「消費増税は国際公約」と言い出したことは以前の記事にも書いていますが、青山氏もすぐさまそれを言いだしました。

Watch 青山繁晴 安部政権の今後とその課題 2013.7.24


6:45~
 消費増税自体はもう一度申しますが、来春がどうなるかよりも、再来年最終的に今の消費税を倍にするというのはもうこれは避けられないんです。えー、一番大きな国際公約になっていますし、これを避けると長期国債、10年物の国債の金利が上がってえーそれは、もう本当は日本経済を、あるいは日本の国の運営を一番深刻な状態にさせることですから。消費税は倍になること、あるいは倍にすることはもう決して避けられることではないんです。したがって、その、消費増税も実は選択の問題じゃなくて、えー消費税が倍になってもなお私たちのような庶民が、えー中西さんや僕も含めてですね、えー物を買ったり、あるいは車を買い替えたり、えーお人によっては家を買ったりするっていう基礎体力を付けなきゃいけない。もう他のことをやってる暇はありません。

 しかし、これをやり遂げれば安倍総理のやりたいことが出来るそうです。

 そして、なぜか(自分が言ったのではないとしながら)浜田参与に対しての批判が始まります。

アンカー平成25年7月24日



6:45~
 たとえば、内閣の参与の、浜田宏一さんっていう学者の方、アベノミクスの生みの親ですけれど、こういう方がもう、これ(8%の増税)はちょっと飛ばしたらどうだと、ね。
 えー個人消費が、頭打ち、あるいは折れちゃったりすると、アベノミクスは失敗になると言われてるんですが、これ今、本当はですね、政官界で何と言われてるかというと、何と卑怯な話だと。だから浜田さんご意見あるでしょうが、言われてるんですよ。どうしてかというと、アベノミクスがもし失敗したら、それは消費増税なんかしたからだと、いうふうに逃げ道を作ろうとしてるんじゃないかと。これちょっと僕は言いすぎだと思いますよ。浜田さんもうあのご高齢でもあるし、そんな自分のことを考えてるわけじゃないと思うけど、この話の根っこにあるのは、変えられるはずがないってことなんですよ。はい。ほんとは変えられないです。


 政官界で浜田参与が卑怯だと言われている?いったい誰が言っていたのでしょうか。そもそも経済学者の浜田参与が景気悪化するのがわかりきっている消費増税に反対するのは当たり前です。そしてアベノミクスには消費増税は含まれていません。アベノミクスの第二の矢は機動的な財政政策、消費増税はマイナス方向の財政政策です。アクセルを踏んでいるときにブレーキをかけたらどうなるか。それを卑怯だなどと言っている馬鹿者はどこの誰だったのでしょうか。

 8月になると、安倍総理はもう増税を決めている。まだ決めていないのというのは演技だと言いだします。

5:00~

【青山繁晴】TPP・消費税と日米を脅かす中韓の謀略 2013.8.21


 しかしながら、彼が直接安倍総理に聞いたわけではなく、いつも「安倍総理に近い人物」から聞いた話です。官邸の正式なスポークスマンは菅官房長官です。その菅官房長官は増税決断直前まで「総理はまだ決めていない」と言っていました。それが真実かはともかく、安倍総理の表に出したい情報はそれなわけです。それを安倍総理はもう増税を決めている、迷っているのは演技だなどと言ったことを青山氏に話す人物はいったい何の意図でそれを話すのか、そして首相の意に沿わないことを個人的に親しいことを強調しながら番組で話す青山氏にいったい何の意図があるのでしょうか。

 そして「財務省を信用し過ぎなんですよ」「財務省は一般にも非常に悪口を言われているからもうちょっとましなんじゃ思っている人もいるかもしれませんが実態はもっとひどいです」と痛烈に財務省批判をしています。この批判もどういった意図だったのでしょうか。

 10月に入り、増税が決まった直後にもやはり安倍総理は増税を早い段階で決めており、最後の最後まで悩んだのは演技だったなどと言っています(ここでも本人の言葉ではなく政権中枢から聞いたと言っている)。その理由としてインテリジェンス(諜報機関)の活用が濃い。そのインテリジェンスとやらがこれです。

安倍 消費税増税 2013/10/04

11:05~
 中国韓国を主として、そういう外国が動いて、その消費増税の見送りを待っている。つまり日本は約束を貫かない、あるいは財政再建に関心がない。黒田日銀総裁のやっているその政策は僕は支持しますけど、そのきわどい面もあるわけですね。つまり日銀がどんどんどんどんお金を刷って借金の肩代わりをしてると。中韓は実はアメリカはすでにそうゆう世論作りを始めてますけど。で、そうなると実態がどうであれ関係なくですね、日本はそんなことやってるんだから先行き危ないって言うのでたとえば国債でおかしなことがあったり。国債については日本国債は日本で消化されてるから大丈夫って人がいっぱいいますけれど、しかしその日本の中にいる人に手をだすのが外国の工作ですから。だから実はむしろ消費増税を諦めて、その延期したりすると、日本国債の信任を落としてですね。国債だけじゃなくて、どんどんどんどん日本の中の利子が上がってしまうと、いうことを狙ってるということを安倍さんが判断をして、その判断は実はかなり早い段階の情報だったから一切気づかれないように熟慮してる熟慮してるってことでずーっと演技を重ねていったということなんですね。


 しかも12:52から消費税率5%への引き上げがきっかけで、デフレ不況になったというのは事実に反する。原因はアジア通貨危機、普通の経済学者ならみんな知っていると言い出します。確かにデフレ不況は消費増税だけが原因ではありません。日銀の間違った政策にかなり負うところがあります。しかし、確実に景気が悪化していたことは、青山氏の持ってきたグラフでも明らかではないですか。

青山 グラフ


 そして16:45分頃から、浜田宏一内閣官房参与の話になります。安倍総理は今の段階の増税に反対している浜田内閣参与をどう説得したか。「首相自ら浜田内閣官房参与を説得した。消費税2%分にあたる5兆円を経済対策に使うので実質1%分の消費税増税にすぎない」と。ここで青山氏は消費増税分は全部社会保障に使うという総理の発言と矛盾すると批判します。

ここまでの青山繁晴氏の発言をまとめます。

・消費増税は国際公約、10%までは絶対避けられない。
・増税を避けたら、日本国債の信認は失われて長期国債の金利は暴騰する。中国・韓国はそれを狙っている。そして、それは官邸のインテリジェンス(諜報機関)の判断。
・今まで続いてきたデフレ不況の原因は5%の消費増税ではなくアジア通貨危機。
・浜田参与は消費増税をスキップしたほうが良いと言っていたが、それは消費増税でアベノミクスが失敗したという逃げ道にするつもりで政官界では卑怯だと言われている。その浜田参与を首相自ら説得した。
・2回の増税をやりきれるほどに経済成長をすることが大事。それを乗り越えれば安倍首相は自分のやりたいことをやれる。


 しかし、その後、平成26年の1月ごろになると、消費増税をするのなら解散して信を問うような心構えがないと政権なんか持たないと絶叫しています。今更いったい何を言うのやら。最大の国際公約なのだから変えられないと言っていましたよね?

3:00~

青山繁晴、舛添要一を都知事選立候補させた安倍政権のゲス過ぎる理


 まあ彼は言論の責任を取る気などないのでしょう。あるいは健忘症なのかもしれません。24分頃からですが、増税容認派だったとして浜田内閣参与を紹介していますから。

2014-11.05 青山繁晴 水曜アンカー

 浜田参与が他の参与よりも(増税の影響を)心配していない、と2013年の11月に言っていたという根拠はおそらくこちらの記事でしょう。

浜田内閣官房参与、アベノミクスを採点 金融緩和はAプラスだが、成長戦略はE ロイター 2013年11月16日

記事から引用

 浜田氏は消費増税に反対だったが、にもかかわらず増税が決まったのはなぜか、との質問に対し「私よりも財務省の説得が強かったため」と説明した。ただ増税が景気・物価を下押しする可能性について「私は他の(内閣官房)参与ほど心配していない」と述べ、円安を背景とした外需による効果を期待した。

引用終わり


 これのどこが増税容認派なのでしょうか。日本語理解できてますか、青山さん。そもそも、増税に反対していた浜田参与を首相自ら説得したとあなた自身言っていたではないですか。

 浜田参与の著作などを読んでいれば、彼を増税派などと誤解するはずはないと思うのですが、何度も話題にする割にはその人物について勉強しようとも思わないのでしょうか。

 そして8%の増税を決めた際に、安倍総理が参考にしていたと青山氏が言っていたインテリジェンスの正体が浜田参与の著作で明らかにされています。




『世界が日本経済をうらやむ日 』 2015/1/31
(kindleで所有のためページ数省略)

世界の投資家は日本の財政赤字をきにしていない

 ここまで行っても、「増税しなければ日本は破産する」といった話がいまだに流布され続けているため、「景気が悪化しようが、増税は避けられない」と考える人も多いだろう。
 しかし、安倍首相が、増税を5%から8%にあげると明言した2013年、財務省や財政再建至上主義者たちの主張が誤りであったことは市場が証明している。
 財務省や財政再建至上主義者たちの脅しは、「日本が消費増税を先延ばしにすれば、アベノミクスにも信憑性がなくなり、国際市場だけでなく日本の株式市場も暴落する」というものであった。私も内閣府や官邸でしばしば聞かされてきた。
 しかし、そうであれば、安倍首相が、予定通り消費税を5%から8%に上げることを明言した2013年10月1日の日本の株価は、大きく上昇(少なくとも横ばいであったと)してもおかしくなかったはずである。
 ところが、安倍首相が消費税引き上げを明言した夜(アメリカの昼)のシカゴ市場の日経先物は、上昇するどころか、大幅に下落したのである。その日は、アメリカ赤字関連のニュースなどで各国の株式も下落していたが、S&Pの株価指数が1%ほどの下落であったのに対し、日経先物はその3倍にも匹敵するほど急落していたのだ。
 また、安倍首相が消費税率の8%から10%への再引き上げの延期を表明したのは、2014年11月18日だったが、その日は事前にメディア数社が、消費税率引き上げ先送り表明をリークしていた。増税派の学者やメディアは、消費税率引き上げを先送りした場合には、国際暴落は愚か、株価も暴落するだろうと“予言”していた。
 しかし、11月18日の日経平均は活況で、前日終値の1万6973円80銭から215円高い1万7188円84銭で寄り付き、結局、前日比370円高の1万7344円6銭で引けた。
 これは世界の投資家が、財務省が言うほどに、日本の財政赤字の問題を過大なリスクだととらえていなかっただけでなく、消費税引き上げを回避したことで、日本経済が深刻な景気後退に陥るのを事前に食い止めたとして、逆に評価したことを意味している。
 つまり、「消費増税をしなければ、日本の国債市場と株価が暴騰し、国家が破たんする」といったような主張が誤りであったことは明らかである。
 また財政再建至上主義者たちは、長年、財政再建を先送りにすれば、日本の国債の信認がなくなり、長期金利が暴騰すると言い続けてきた。
 しかし、安倍首相が増税の延期を決めて以降、そんな問題は少しも生じていない。


引用終わり


 どうも青山氏の言っていたインテリジェンスとは財務省と財政再建至上主義者だったようです。

 さて、もう一度先ほどのまとめを見てみましょうか。

・消費増税は国際公約、10%までは絶対避けられない。
・増税を避けたら、日本国債の信認は失われて長期国債の金利は暴騰する。中国・韓国はそれを狙っている。そして、それは官邸のインテリジェンス(諜報機関)の判断。
・今まで続いてきたデフレ不況の原因は5%の消費増税ではなくアジア通貨危機。
・浜田参与は消費増税をスキップしたほうが良いと言っていたが、それは消費増税でアベノミクスが失敗したという逃げ道にするつもりで政官界では卑怯だと言われている。その浜田参与を首相自ら説得した。
・2回の増税をやりきれるほどに経済成長をすることが大事。それを乗り越えれば安倍首相は自分のやりたいことをやれる。

 青山繁晴氏は安倍総理の信頼できる友人なのか、財務省の代弁者なのか、それとも単なる愉快犯なのか?こちらは皆さんのご判断にお任せしましょう。

 それでは次回はこの頃やはり浜田参与を増税派呼ばわりしていたMことN氏のことを語ることにしましょう。

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増税と政局~増税延期に解散総選挙は必要か~


 現在、増税をめぐる論議で、安倍総理は前回の延期の時と同様、参議院議員の改選に合わせて衆議院解散、W選挙を行うのではないかといううわさが流れています。本当にW選挙になるかどうかはさておき果たして増税延期するために衆議院を解散して民意を問う必要があるのでしょうか。

 平成26年11月に解散総選挙を行う際、安倍総理は「代表なくして課税なし」との言葉を使いました。

平成26年11月18日 安倍内閣総理大臣記者会見

 大きな税制の変更を伴うには民意を問う必要があるとのことですが、そもそもこの言葉は本来どういう時に使われたのでしょうか。

代表なくして課税なし

 Wikipediaで参照させてもらいますが、アメリカ独立戦争のスローガンでもともとはマグナカルタに由来するもの。「人民が自ら選出した代議士の承認無しに政府が人民を課税することは不当であるという理念」とあります。増税延期するために選挙を行う理由になるのでしょうか?

 現在日本国では普通選挙が実施されています。代表と言えるのは間違いなく、多数の支持を得て政権与党となった自民党の議員及び総裁であり総理大臣になった安倍総理でしょう。代表はいるのになぜ「代表なくして課税なし」だったのでしょうか。

 税制に関しては憲法でも定めがあります。

 日本国憲法 第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

 法律によらなければ新たに租税を課すことが出来ません。法律を作るのは選挙で選ばれた国会議員です。この消費増税を決めたときの政権与党は民主党で野田佳彦総理は「鳩山さんは四年間消費税をひきあげないと言った」「(マニフェストに)書いてあることは命がけで実行する。書いていないことはやらない。これがルールです」と言っていました。

野田総理 マニフェスト 書いてあることは命懸けで実行


 それなのにマニフェストに書いていることは碌に実行せず、書いていなかった消費増税を決めたのです。これは明らかにルール違反であり、本来ならばこの増税法案の是非を問うために解散総選挙をすべきでしょう。しかし三党合意で法案を通した後、この法案は争点とされることなく解散総選挙が行われました。その総選挙で勝利したのは「日本を取り戻す」と経済再生を第一に掲げた安倍総裁率いる自民党でした。

重点政策2012 自民党

 読んでいただければ分かるとおり、予定通りに増税するともしないとも書いてありません。しかし、デフレ脱却前の増税には慎重な態度をずっと安倍総理は取ってきましたし、景気動向を見て決めると発言していました。附則18条、いわゆる景気条項があるためです。

 結局平成25年10月1日に安倍総理は増税を決断してしまいます。景気は回復傾向にあったとはいえ、早すぎる増税でした。5%から8%、3%の消費増税で、景気はリーマンショック並に落ち込むこととなりました。その後、平成26年11月の増税延期の決断とともに衆議院は解散、総選挙が行われました。

 さて、この解散総選挙は本当に必要だったのでしょうか。

 民意を問うために総選挙を行ったのだとしたら、そもそも平成24年の衆議院選挙で安倍総理は経済再生を掲げて戦っています。国民は景気回復を望んでいたのです。しかしながら増税により消費が落ち込み経済成長にストップがかかってしまいました。ですから経済を再生させるために景気を悪化させる消費増税を延期する。何の問題があるのでしょうか。全く民意に反することではないし敢えて問い直すことではないと思うのですが。

 高橋洋一氏の検証部分で「増税延期のためには新たに法案を通さなければいけない」というのがありました。確かにその通りで、野党はともかく与党内をまとめられなければ法案を通すことは難しいでしょう。しかし、10%延期判断の時に総理の意向に逆らってまで増税延期に反対する意思のあった自民党の衆議院議員など私は一人を除いて知りません。しかもこの時は野党も皆増税延期に賛成していたのです。もちろんこの流れは解散風が吹いたからということもあるでしょうが、解散風を吹かすのと本当に解散するのは別の話です。それを最終的に決断できるのは安倍総理なのですから。

 一方8%の増税決断の時は野党のみならず、自民党の議員の多くも増税に賛成していました。こういうときならば首相が増税延期を理由に解散するのはありだったと思います。それでも増税延期又は凍結法案を出してそれが否決されたのならその是非を問うという形が望ましいと思いますが。

 どちらにしても民意は景気回復であり、8%の消費増税の実施によって増税すれば景気が悪くなることが明らかになったわけです。何故増税を延期する法案を国会で通すために解散総選挙を行う必要があるのでしょうか。

 10%の増税延期の前に、増税しなかった時の悪影響をとなえた政治家やエコノミストが大勢いました。マスコミでもそういう論調で語られることがよくありました。

日本経済新聞 社説 消費再増税をここで延期していいのか 2014/11/12

記事より引用

 しかし、わたしたちは、再増税を延期すれば、いずれ金融市場で日本の国債に対する信認が失われ、長期金利が意図しない形で急上昇するリスクがあると指摘してきた。

 気になるのは、財政破綻リスクを取引する市場で、日本の国債に対する信認の度合いが低下する兆しが出ていることだ。

引用終わり


外国人投資家が手ぐすね? 消費増税先送りで「日本売り」の恐怖 2014/11/12

記事より引用

経済評論家の池田信夫氏はJB PRESS(2014年10月21日付)で、「アベノミクスの挫折で深まる安倍政権の危機 消費増税の先送りは国債暴落への道」と題して、「このまま日銀が毎月7兆円の国債を買い続け、おまけに政府が消費税の増税を延期すると、それを引き金にして市場が反乱を起こすおそれがある」と、危惧している。

また、金融アナリストの久保田博幸氏はBLOGOS(11月12日付)で、「消費増税そのものが財政健全化に向けてのひとつの柱として認識されていることは確かで、財政健全化があってこそ、国債への信認が維持されている。これだけ財政が悪化(国の借金の残高が9月末時点で1038兆9150億円)しているなか、国債が安定的に消化され、売買も滞りなく実施されている状況に、国債への信認に対する不安要素は入れてほしくない」という。

引用終わり

 さて、ここで心配されているような国債の暴落など起きたでしょうか。エコノミストたちが危惧するようなことは何も起きなかったわけです。

 この数年の消費増税にまつわることではっきり分かったことは以下のことです。

・デフレ下の増税はリーマンショック並の景気悪化を招くこと。

・増税を延期しても、国債への信認が失われたり、国債が大暴落したりすることはおこらないこと。

 これがわかった今、現在の経済状況で消費増税など出来るはずがないことは明らかです。それなのに、増税を前提に名ばかりの、本当は何を据え置きするかの議論をしている軽減税率の話がなされている。国民を馬鹿にしているとしか思えません。

 そしてこんなことを2度もやってしまったらこの先増税を延期するには解散総選挙をするのが習律になってしまうのではないかということを私は危惧しています。増税するときは民意を問わなくて良いのに、延期をするときは民意を問うために解散総選挙。あまりにばかげているとしか思えません。そもそも民意に沿った法律の改正をするのになぜさらに選挙で民意を問うことが必要なのでしょうか。そして、あえて「たかが」と言いますが、「たかが」増税延期法案を通すことを解散総選挙などという「伝家の宝刀」を抜かねば出来ないような政権にいったい何が出来るのでしょうか。こんなことでは安倍総理の掲げる「戦後レジームの脱却」や「憲法改正」など夢また夢です。

 平成26年の衆議院選挙の公約には平成29年に消費税を10%にすることが掲げられていました。

自民党重点政策2014

● 安定した社会保障制度を確立するために、2017 年(平成 29 年)4 月に消費税率を10%にします。

●経済再生と財政健全化を両立するため、消費税率10%への引上げは2017年4月に行います。また、軽減税率制度については、関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入します。2017年度からの導入を目指して、対象品目、区分経理、安定財源等について早急に具体的な検討を進めます。


 しかしあくまで「安定した社会保障制度を確立するため」との前置きがあり、前回の増税で景気が悪化することが明らかになっている消費増税、しかも世界経済が不安定になっているにもかかわらず増税などしたら、本当に国民が望んでいる景気回復はとん挫してしまい、安定した社会保障制度の確立など出来るはずもありません。この公約で国民が望んでいるのは「経済再生」と「安定した社会保障制度」であり、その手段の一つである「消費増税10%」ではないのです。

 そもそも民意を問うのならば今年の夏には参議院選挙があるわけです。参議院では民意が問いづらいという声もありますが、本当でしょうか?

 確かに6年の任期があり解散総選挙のない参議院制度にはいろいろと問題があると思います。その時々の民意でいわゆる「ねじれ」が起こるという問題もあります。しかし、選挙の結果はその時の「民意」です。参議院か衆議院かの区別をして、私たちは投票を行うのでしょうか。

 大事なことですので繰り返してまとめておきます。

・民意は景気回復及び社会保障の安定であり、消費税を10%にすることはあくまで一つの手段。しかもその手段は間違っていることが証明されている。

・増税を決めるときは民意を問わず、増税を延期するのに解散総選挙を行うという間違った方法が過去に取られてしまった。繰り返せばこれが習律になってしまう恐れがある。


 いろんな意見があると思いますが、私はこういった理由で、増税延期のために解散総選挙という方法を取ることには反対です。解散総選挙という方法を取らずに、増税凍結法案を通していただきたいと思います。

 では次回は、増税にまつわる保守業界で起こった出来事について述べたいと思います。


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増税と政局~優れた経済学者は無謬の預言者か(後編)

 
 さて、衆議院選挙は与党勝利で無事に増税も延期となりました。そこで気になるのはやはり、次の平成29年4月からの10%の増税がどのようになるかです。

再増税阻止チャンスは一度! 針の穴に糸を通すような困難 (1/2ページ) 2015.09.11

記事から引用

国内外の経済環境に不透明感が増しているが、2017年4月の10%への消費再増税はどのようにすれば止められるのだろうか。

まず、現状をきちんと理解しておくと、民主党時代に制定された消費増税法はまだ生きている。その中で、17年4月からの消費増税は既に法定化されている。

(中略)
延期の際、景気情勢によって増税を停止できる「景気条項」を削除した。その解釈として、「景気がどうなっても消費再増税する」という話が流れたが、まったくの事実誤認である。

これまでに本コラムでも指摘したが、そもそも消費増税法の付則であった景気条項は、消費増税を止めるためにはまったく役立たないものだった。

昨年12月の衆院選がなければ、消費再増税は延期できなかったというのが事実だ。あの段階で、もし安倍首相が「増税を止めるための法案を作ろう」と言ったら、政局になって首相の座から引きずり下ろされただろう。そうした政局の動きを封じるために、衆院議員は全員クビというのが解散・総選挙であった。景気条項の有無は、消費再増税をスキップするための政治的な意味はまったくない。

重要なのは、国政選挙で、どのような公約を掲げて、選挙に勝つかという点だ。昨年の衆院選では、消費増税スキップを公約として自民党が勝ったので、それが実現された。17年4月からの消費再増税を止めるには、遅くとも16年9月までに、意思を固めて国民の審判を受ける必要がある。その審判とは16年7月の参院選である。

ただし、通常のように悠長に公約作りをしながらであると、財務省がつぶすだろう。それを封じるには、その時、衆院を解散してダブル選挙にした方が、成功する確率は高くなる。そこが唯一のチャンスである。

 一方、消費税が争点にならなければ、今の法律通りに17年4月から消費再増税になる。もし、その時の経済状況からみて延期がふさわしく、選挙の争点にして勝利すれば、消費再増税は延期される。逆にいえば、この一点しか延期される可能性はないだろう。この意味で、消費再増税を止めるのは、針の穴に糸を通すようなものだ。

 このタイミング以外で政治的に仕掛けても、政治巧者の財務省が各方面へ根回しすることで、もくろみは不発となるだろう。財務省はマスコミ、財界、学会、海外などへ大きな影響力もあるので、侮ってはいけない。

引用終わり


 平成26年の10月の記事とは一転してまた高橋洋一氏の発言が弱気になっています。しかも以前は景気条項があるから止められると言っていたはずですが、景気条項はまったく役に立たないに変わっています。そもそも、この時はもう景気条項は削除されているのですが。そして法案を通すのは難しい、財務省は強いから潰されると言った論調です。

 これがまた11月には鍵は首相が握っており、今度は軽減税率がまとまらないこと、新聞が対象外になるのでマスコミを使って増税を延期するのではないかという言説になります。

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ「軽減税率」の自公間協議 安倍首相が「一歩引く」理由2015/11/26

記事より引用

官邸が一歩引いているのは、2017年4月からの消費再増税へのコミットをしないためだ。安倍首相は、「リーマンショックのようなことがない限り消費再増税を行う」と言っている。マスコミは、この発言を「消費再増税」は決断済みと報道する。しかし、政治レトリックからみれば、この発言は、TPPについて「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉に参加しない」と言っていたのと同じレベルだ。実際には、TPPへは参加する、つまり、「聖域なき関税撤廃」ではなかったからだ。

今の経済状況はどうだろうか。人によっては「リーマンショックのようなこと」ではないかもしれないが、安倍首相が「リーマンショックのようなこと」といえば、誰も反対しないだろう。要するに、消費再増税の判断は安倍首相に委ねられている。

その判断のタイミングは、来(16)年の参院選の直前である。その時までは、できるだけフリーハンドをとりたいに違いない。その意味から、軽減税率に官邸が一歩引いているのだ。

筆者の直感でいえば、とても消費再増税を判断できる状況ではない。消費再増税がなければ、軽減税率もない。その意味で、軽減税率の検討は無駄骨に終わるかも知れないので、なおさら一歩引きたいはずだ。

さらに、軽減税率対象は生鮮食品かどうかという話なので、どう考えても新聞が対象になる可能性は限りなく低い。この際、軽減税率を期待していたマスコミが怒って消費再増税の反対にまわることを、官邸は密かに期待しているのではないか。

引用終わり


高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 消費増税は延期すべきだ 新聞の「手のひら返し」ありうる2015/12/10

記事より引用

ところで、新聞への軽減税率の適用は絶望的である。かつては、「米、味噌、醤油、新聞」とやはり朝の食卓風景の一角で、新聞を軽減税率対象にするとのスローガンがあったが、今回の話は「米、味噌、醤油」までだ。

これで、これまで軽減税率を受けたいがために、消費増税に賛成していた新聞の論調がどうなるのかが見ものである。

(中略)

そう考えると、今回の軽減税率の政治決着は絶妙だ。まず新聞を対象としないので、新聞が、消費増税延期に世論を向けやすい。またかなりの減収になるので、財政当局から見ても「消費増税延期でもやむなし」になりやすい。さらに、野党からの消費増税延期発言を引き出し、選挙対策上からも消費増税延期をやりやすい。

こうした点を踏まえると、今回の軽減税率の政治決着から、2017年4月からの消費増税はかなり可能性がなくなったことが見えてくる。

引用終わり


 軽減税率がまとまらなかったにしても増税を延期するのは法案を通さなければならないことには変わりありませんので、なぜ軽減税率がまとまらずマスコミが反対すれば増税阻止できるのか、今一つ理由がわかりません。
 そして、ここで高橋氏の読みは外れ、新聞の定期購読料も軽減税率の対象となります。するとこのような言説になりました。

財務省完敗で消費税10%は遠のいた!安倍官邸との「軽減税率」バトル、その舞台裏で何があったのか 2015年12月14日

記事より引用

ただし、この攻防で、新聞が軽減税率の対象かどうかは、ほとんど報道されていない。食品の中での話だから、まさか新聞は対象にはならないというのが常識だろうが、表向きは今後検討という。

ところが、実際には、新聞は軽減税率の対象になることで決着がついているという話で、積極的に報道されていないだけという。

軽減税率によって財政健全化がさらに厳しくなると報道しながら、ちゃっかりと自らは軽減税率を求める新聞には笑ってしまう。

筆者には、新聞を軽減税率の対象にするのも、官邸の「対策」のように見える。ここで、新聞を対象としないこともありえる。その場合、手のひら返しで、急に消費増税反対になるかもしれないが、すねて反官邸運動に走るかもしれない。一方、ここで新聞にアメ玉をあたえれば、今後の官邸に不利はないという見方だ。

これは、あえてリスクを冒さず、新聞を官邸に向ける作戦だ。官邸は、自民党税調・財務省の連合軍に完勝した。新聞はパワーのあるところに、ネタを求めてくるので、官邸は軽減税率のアメ玉を与えたと見るべきだろう。

(中略)

来年夏の参院選前、消費増税の扱いについては、どっちに転ぶにせよ、自民党・財務省ではなく官邸主導であることがはっきりした。

果たして今の財務省に「外食を除く生鮮・加工食品」の線引きがうまくできるだろうか。それがうまくできないと、それだけで消費増税スキップの口実になってしまう。

そのうえ、2017年4月から消費増税すれば、再び経済成長率がマイナスになるのは確実だ。どうも、軽減税率の作業は消費増税スキップで日の目を見ない公算が高い。

引用終わり

 マスコミが反官邸運動に走らないようにアメ玉を与えたとのことです。消費増税延期のために使うのではなかったのでしょうか。そうしなくても消費税は官邸主導であるため消費増税スキップの可能性が高いということらしいです。解散総選挙をしなくては抑え込めないほど強かったはずの財務省はどうしてそこまで弱くなってしまったのでしょうか。

 そうは言っても高橋氏はW選挙の可能性を否定しません。今年に入ってすぐの記事ではこのように述べています。

選挙後の年後半に景気改善 カギ握る消費再増税中止と27兆円還元 (1/2ページ) 2016.01.04

記事より引用

次に政策がどうなるか。まず16年初頭の補正予算が3兆円規模では、GDPギャップ10兆円を考えると力不足だ。そこで、夏の参院選(衆院とダブル選もありうる)前に、17年4月からの10%への消費再増税を行うかどうかを決めることがポイントとなる。

 先の軽減税率の騒動をみると、官邸は財務省を圧倒し、掌握したように見える。となると、消費再増税スキップ(中止)と実施決定の2択のうち、今のところ、前者を選ぶ公算が高いだろう。

その根拠は、安倍晋三政権では14年の消費増税を失敗ととらえているからだ。財務省の思惑に左右されて政権を潰すことはできないと考えているだろう。

安倍首相は従来、「リーマン・ショックのようなことがない限り増税する」と述べていたが、15年12月14日の講演では「国民の納得を得なければ、できない」と微妙に変わった。これは、国政選挙で国民の声を聴きたい-ということだと解釈していいだろう。

要するに、客観的な条件である「経済状況」ではなく、「政治判断」として国民の信を問うことへ方向転換したのだ。これは、消費増税スキップで国民の信を問うという意味しかありえない。

しかも、軽減税率で自民党と公明党が合意した政治的意味は大きい。一部では、これで消費増税の環境整備が整ったという見方があるが、筆者は逆ではないかと思う。

公明党の意向をのんで、軽減税率の対象は、生鮮食品、加工食品で酒・外食を除くとなった。諸外国で歴史があれば別だが、初めての日本で線引き問題が起きないはずはない。軽減税率で問題を抱えたまま、消費増税を政治的に通すのはかなりの難問である。これも消費増税スキップの補強材料である。

(中略)

もちろん政治は一寸先は闇なので断定的なことはいえないが、筆者はこれをメーンシナリオとしたい。

引用終わり

 私としては高橋氏の言うように官邸が強く消費増税を延期してくれるのならそれはありがたいことです。ただ、この件、まだ決着を見ていないので、高橋氏の言説だけで判断するにはまだ早いです。他のマスコミがどのように報じているかと比較してみましょう。

官邸介入、自民に反発も=選挙意識し公明へ配慮-軽減税率 (2015/12/09)

記事から引用

消費税への軽減税率導入をめぐって自民党と公明党の調整が難航する中、安倍晋三首相が「裁定」に乗り出してきた。自公の溝が埋まらなければ、来年夏の参院選での選挙協力に響くと判断。公明党が求める「加工食品」も対象品目に含める意向だ。2017年4月の導入当初は「生鮮食品」に限定する方針だった自民党は譲歩を迫られた。
「官邸-二階ラインの話だ。谷垣さんと自民税調は知らない」。与党幹部は9日、軽減税率の対象範囲の着地点について、首相や菅義偉官房長官と二階俊博自民党総務会長が連携して探っていたと明かした。谷垣禎一幹事長や税調幹部は8日、対象を「生鮮食品」に限る方針を確認していたが、二階氏は同日夜、公明党幹部に対し、自民党が歩み寄る考えを伝えていた。
官邸や二階氏が気にしたのは、連立政権や選挙協力への影響だ。来年は4月に衆院北海道5区補選、夏には参院選と重要な選挙が続く。衆院補選や参院選の1人区で公明党の協力を期待する首相らとしては、軽減税率で大きなしこりを残したくないのが本音だ。
与党協議の出口が見えなかった11月下旬、二階氏は公明党幹部との電話で危機感を共有。公明党幹部が「安全保障法制は論理の話だが、軽減税率は感情の問題だ」と配慮を求め、二階氏が官邸側と落としどころを探り始めた。
首相は9日昼、谷垣氏と1時間余りにわたって会談し、菅長官も同席した。終了後、谷垣氏は記者団の問いかけに一切応じず、厳しい表情で立ち去った。
会談に先立ち、政府高官は軽減税率の対象について、「朝食に出てくる梅干しやのり、豆腐が含まれないのはおかしい」と指摘し、「加工食品」にも広げる流れをつくった。官邸サイドの介入に対し、自民党税調のある幹部は「参院選を考え公明党とけんかしたくないのだろうが、政策を政局で動かされては困る」と不信感を隠さなかった。

引用終わり


軽減税率 谷垣氏、埋まる外堀 官邸、参院選にらみ押し切る2015.12.10

記事から引用

平成29年4月の消費税再増税と同時導入する軽減税率をめぐり、自民党が対象品目を加工食品にまで広げる方向にかじを切った。来夏の参院選での選挙協力をにらみ、菅義偉(すが・よしひで)官房長官は公明党に譲歩。自民党の二階俊博総務会長も首相官邸や公明党と歩調を合わせ、財政規律を守る観点から抵抗する谷垣禎一幹事長らの外堀は埋まっていった。

 「ねじ伏せますから」

二階氏は9日午後、公明党幹部に電話で、こう告げた。ねじ伏せる相手とは、谷垣氏だ。28年度与党税制改正大綱の取りまとめを翌日に控えても、いっこうに軟化しない谷垣氏を説得できる自信があることを伝えたのだった。

二階氏は今月1日に公明党の漆原良夫中央幹事会長、太田昭宏前国土交通相と会談。そこで衆院選で公約に掲げた軽減税率を広範囲に導入しなければ、「嘘つきと毎日言われる」と漆原氏らがこぼし、連立離脱をにじませた。谷垣氏に同調していた二階氏も危機感を大きく募らせたようだ。

谷垣氏の外堀は首相官邸からも埋められた。安倍晋三首相と谷垣氏が9日、官邸で会談した際、同席した菅氏は「これで参院選に責任が持てますか」とまくし立て、公明党の主張を受け入れるよう求めたという。谷垣氏は会談後、記者団の問いかけに一切答えず、硬い表情で官邸を後にした。

菅氏は公明党の支持母体の創価学会幹部と太いパイプがある。今回の協議をめぐり、学会幹部から「公明党が納得できる制度を導入できないなら、次期参院選で自民党候補への推薦をやめる可能性もある」と厳しく迫られたという。

自民党は25年の参院選で勝利したが、「野党と数万票差の接戦を制した選挙区が多かった」(党選対幹部)ため、菅氏らも学会票を失うことへの危機感を強めていた。

財政規律を守るため、軽減税率の財源について「社会保障と税の一体改革」の枠内で捻出するよう指示していた首相の脳裏にも、第1次内閣で政権を失ったのは、参院選での敗北が引き金だったことがよぎったのかもしれない。敗北すれば、悲願の憲法改正が遠のくどころか、再び政権を失いかねないのだ。
二階氏は9日、軽減税率の対象品目拡大について、自分に言い聞かせるように周囲に漏らした。

「公明党に選挙で協力してくれということだ」

引用終わり

 これを皆さんはどのように読まれますか。
 表題だけ見れば官邸が強いように見えますが、私にはどう読んでも公明党と二階俊博氏が強い、という風にしか読めないのですが。公明党は軽減税率を推し進めていて、今度の参議院選で自民党が勝利するには絶対に彼らの協力が必要です。そして二階氏は増税派です。彼らの力がこれほど強いのに本当に増税阻止が出来るのでしょうか。

 そして本当に財務省は弱くなってしまったのでしょうか。消費増税が8%に決まった直後にも、財務省はいいようにやられてしまったという記事が流れていたのはご存知でしょうか。

財務省、日銀人事に次いで安倍官邸に2度目の"敗戦" 2013/10/7

 ただ時事通信や産経がこれだけ強さをアピールしている二階氏の名前が朝日や日経では全く出てきません。逆に怪しいような気がするのはうがった見方でしょうか。

官邸・自・公・財務省… 軽減税率めぐる暗闘の勝敗 (1/2ページ)2015/12/12

谷垣氏、矢面 軽減税率、官邸に完敗 2015年12月16日

 誰が正しいか、何が正しいのか。簡単に判断出来ることではありませんが、私はただ無邪気に高橋氏を信じて「増税は延期の可能性が高い」などと言う気にはなれません。
 
今までの状況や各社報道から私が読み取れることは。

・官邸は自民党や税調よりも強い。しかし、公明党はもっと強い。しかも二階氏の強さは幹事長である谷垣氏を凌駕している。
・財務省は一枚岩ではないし割れているようだ。しかし、過去の偽装敗北もあり、全く油断できない。

 そしてもっとも心配しているのが、ここまで積み上げてしまった議論を安倍総理がちゃぶ台返し出来るのかということです。
 軽減税率に関しては運用できるかはともかくある程度の話はまとまり、税制大綱にも記載されています。しかもその混乱を避けるために予備費から補助金を出すことが閣議決定されています。

軽減税率、レジ改修などに補助金 予備費から996億円 2015年12月18日

 税制の法案も閣議決定して、国会に提出されました。

軽減税率盛り込んだ税制改正の関連法案 閣議決定 2016/2/5

 さて、前半にも少し言及しましたが、高橋氏の発言の変化に関して言及しておきます。

 増税延期には法案を通すことが必要でそれは困難と言っていたのに、「景気条項」を根拠に増税は止められる、必要なのは首相の政治的な意志とパワー。凍結法案の形式は簡単と論調が変わった件。これは増税判断するには、余りにも景気が落ち込みすぎたこと、そしてその時の財務省と官邸のパワーバランスを見て、増税延期は可能と高橋氏は考えた。それだけなのではないでしょうか。8%の増税の時は、凍結法案の形式が簡単だったことはわかっていたけど、そこまでの政治的パワーは安倍総理になかったと見ていたのでしょうね。

 そして増税延期後から現在に至る発言もその時々の判断として整合性の取れることを言ってらっしゃるのでしょう。1月4日のご自身の記事でも言ってらっしゃいますが、政治は一寸先は闇なので断定的なことはいえないのですから。

 言説が変わったことの間に説明がない。ご本人としては変えたつもりがないあるいは、私が読んでいない雑誌などで説明されているのでしょうか。ただ現実が変わればそれに対する見方、考え方は変わるということなのでしょう。高橋氏にとっては説明するまでのことでもないということなのかもしれません。これを変節と言っている人をあまり見かけないのがなぜなのかはわかりませんが。

 高橋氏の政局の読みに対する信頼に、安倍総理との近さというのもあると思います。ただ、総理が高橋氏に動いてほしい時ならともかく、そうでないときに本心を話すのでしょうか。政治家とは私は基本的には本心を明かさないものだと思っています。特に総理大臣ともあろう人ならなおさらでしょう。そしてどんなに信頼する人からの助言でも受け入れられる時とそうでないこともあるだろうと。そうでなければ、本田内閣参与、浜田内閣参与がついていてなぜ消費税を8%にしてしまったのでしょうか。

 なぜ私があえてこのような記事を書いたのか。前半にも書きましたが、それは「高橋氏が言っているからこうだ」とか「〇〇はこう言っているけど、高橋氏はこう言っている。どっちが当たっているか」などの意見をネットで散見したからです。私は高橋氏の経済的な知見を高く評価しています。しかし高橋氏は無謬の預言者ではありません。経済学的に正しいことを言っている人が、政局の読みも必ず当てられるなどの保証はないわけです。政治は一寸先は闇。その時々の政治家や官僚の動きで予測することはある程度できますが、必ずしもそうなるというものではありません。そもそも経済学的に正しいことが政治でまかり通りならば、現在の20年近く続くデフレに日本が陥ることはなかったはずです。

 今回は自戒を込めてこういった記事を書きました。ある人の言説を無条件に信じるのは危険です。誰が言っているかは確かに大事です。しかし、何を言っているかもしっかりと見極め、出来る限り広く深く情報を収集して情勢を判断することが大切だと思います。自らの目で見て、自らの頭で判断して出した結論なら後悔することも少ないですし、その後また情勢の変化を見極めながらなにが正しいのかを考えることが出来ますので。誰かを盲目的に信じて、その人の言ったことが外れたなどと叫ぶような見苦しい真似をするのはごめんですからね。

 次回は増税延期のためには解散総選挙が必要かどうかについての記事を書く予定です。


テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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Author:yumikw
富山市在住。夫と息子、猫2匹と暮らす会社員。

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