増税と政局~「倉山満の3分間スピーチ 増税は間に合わない論のウソ」を検証する ㊦


 「増税と政局」第9弾、「倉山満の3分間スピーチ 第7回 増税は間に合わない論のウソ」検証記事の後編です。

【チャンネルくらら】倉山満の3分間スピーチ 第7回 増税は間に合わない論のウソ⑦


今回のポイント

・増税を延期するには予算編成をやっている同時並行で予算関連法案としてたった一行の予算延期法案を足せばよかった。増税に延期に賛成か、反対かだけを聞くことなので与党が賛成したら一日で通る。
・理想的には1月から毎年国会で予算審議が始まるので予算編成をやっている最中に全体の見積書として歳入が、消費税増税分入らないということが方針が示されていれば全く問題なく予算編成出来る。
・予算関連法案はいつまで成立しなければいけないか。本来の理想形は1月の予算審議の前に予算関連法案が臨時国会で通って、ああ安倍さんが政治決断したんですね、みたいなことやってれば理想。だから9月の段階でもう間に合いませんというのは、もうこの時点で法律論として破綻している。
・予算関連法案は、1月より前に決まってればよいが、1月より後でもいい。予算と並行審議でも総理大臣が予算と言う見積書を決める方針を決めているので予算編成出来る。究極、流れても構わない。予算と言うのは実は予算より多くのものをやってはいけないが減らす分には決まった後でもいい。去年(平成24年)もやった。
・平成24年度予算は4月に5日だけ紛れ込んで決まったが、野田、谷垣、山口、あるいは当時財務事務次官の勝栄次郎などが増税の話ばかりしていたので最も重要な予算関連法案である特例公債法案が11月まで通ってなかった。借金ができないので予算の執行をへらそうとなっていた。それに比べれば12月まで(臨時国会の間)に決まっていたら何の問題はない。あるいは通常国会の間に決まってても問題もない。なんで9月の段階で決まってないからと言って、もう増税するしかないになっているのか。法律論としてここで終了。ところがここで持ち出されたのが政治論。法律論に政治論を持ち込むな。

 施行期限が平成26年の4月1日なので、さすがに通常国会にまで流れ込むといろいろ支障をきたすこともあるでしょうが、延期するということで与党内の調整さえ出来れば、臨時国会内で採決は可能だったでしょう。どう考えても10月では間に合わないということはないはずです。平成26年11月の増税延期決断の後、このようなことで国会が紛糾したとの報道がなかったことを思えば、この時、増税は間に合わないと自民党の議員たちが言いだしたのは不思議で仕方がありません。しかしなぜこのような言説が広まってしまったのでしょうか。

 実は参議院選挙の前に増税延期を言っておかなければならなかった、10月では間に合わないと言っていた人物がいます。高橋洋一氏です。

自民党は参議院選挙の争点から外すのはせこい!「消費税増税スキップ」の判断は10月では遅すぎる 2013/06/03

(記事より引用)

 4月29日付け本コラムで「消費税増税スキップ」を書いた。イギリスでは消費税を増税して景気が低迷していることなど経済的な観点からの意見だが、今回はその法的側面や経済的な補足をしたい。

自民党の高市早苗政調会長は、来年4月からの消費税率引き上げの是非を、安倍晋三首相が今年10月に最終判断するといっている。安倍首相自身も現在のところ「白紙」である」といっている。これは政治家のスタンスとしては正しい。

筆者としては賢明な判断をしてもらいたいが、実は法的には消費税税率の引き上げは、昨年8月に成立した「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律」(消費税増税法)で決まっている。

「経済財政条項の激変」とは

 しばしば新聞などでは、景気条項に努力目標として名目3%、実質2%のGDP(国内総生産)の経済成長率が明記され、経済環境が急変したときには増税を見送るといわれているが、それはあくまで政治的な立場からの意見である。

(中略)

第3項によって、増税見送りが可能かのように書かれている。しかし、「経済財政状況の激変」とはリーマンショック時のようなものを想定しているので、政治家が大きな声を上げない限り、予定通り実施されると読むのが正しい。

また、この附則18条は条件にもなっていない。国会審議の過程で修正され、第二項が加わったので、もし消費税率の引き上げで景気が悪くなれば、財政支出で景気支えをするとまでいっている。つまり、消費税増税ありきなのだ。

 このため財務省筋からは、「消費税増税をするが景気が悪くならないように財政支出する」という声が聞こえてくる。増税して使うぐらいなら、増税しなければいいというのが常識だが、「増税亡者」には通用しない。

民間業者のシステム対応は先行している

このようなガチガチの増税法案があるにもかかわらず、昨年9月の総裁選のときから最後の最後まで「増税を実施するかどうかは政治判断」としてきた安倍首相はえらい(他候補は、当然消費税増税するというスタンスだった)。

 ただ、10月まで引き延ばすと、結局、消費税増税になってしまう確率が高くなる。というのは、民間業者はシステム対応などで走り出しつつある。10月になると、もう準備が進んで止まらなくなり、消費税増税してもらわないと困るという状況になる。

 (引用終わり)


 正直言っていわゆる「増税延期は間に合わない論」に民間業者の都合もプラスと言った論調です。以前に紹介したことがありますが、このような発言も高橋氏はしています。

「国会の違憲状態」解消こそがカギ!参議院で歴史的圧勝をした安倍首相は「消費税増税延期」に挑めるか 2013年07月22日(月) 高橋 洋一

(記事より引用)

 第一のシナリオは、消費税増税シナリオだ。安倍政権では、4~6月の経済指標をみて、秋にも消費増税について判断する意向を示しているが、景気の良さを背景にして消費税増税を判断する。ちなみに、4~6月期GDP速報は、一次速報が8月12日、二次速報が9月9日に公表される。それにふさわしい内閣改造を行い、衆参の安定多数をバックに、粛々と国会をこなす。

 消費税増税を止めるためには、その国会で消費税凍結法案が成立しなければいけない。野党がそうした法案を出しても、国会審議すらしないだろう。

実際に与党から消費税凍結法案を出すのは、困難といわざるを得ない。三党合意もあるし、その合意が反故になったわけでもない。参院選でも凍結法案を公約にしていないのだから、常識的には凍結法案を与党は出さないという「判断」になる。

(中略)

 経済政策論では消費税増税ストップは当然だが、第一のシナリオでわかるように政治論からみれば、その実現は困難だ。ねじれ国会は解消したが、政府与党内プロセスがある。自民党税制調査会は、来年度の税制改正作業を9月頃から始める見通しだ。これは通常より約2カ月前倒しだが、消費税増税は当然の話として、増税ストップとはなるはずない。

(引用終わり)

 
 三党合意で、増税するかしないかはその時の政権が決めると言っているのに、なぜ凍結できないのか。凍結まで行かなくても延期することは出来るのではないかと思うのに、「参院選でも凍結法案を公約にしていない」からという不思議なハードルあげがされています。安倍総理はデフレ脱却、景気回復を掲げてずっと戦い勝ち続けてきたのに、それを腰折れさせる消費増税をなぜ凍結を公約にしていなかったからと言って止めることが出来ないのか。

 断言するのは言いすぎですが、永田町に蔓延した「増税決まっている論」の発生源は高橋洋一氏でしょうか。どちらにしても高橋氏の言い分を増税派は利用したのではないでしょうか。

 平成24年度の予算関連法案の成立時期について言及されているのでそれについても簡単に整理しておきましょう。

・平成24年1月24日に第180回国会(通常国会)が開催。6月24日までの予定が9月8日まで延長。
・予算成立は4月5日。
・社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案が平成24年8月10日成立。
・特例公債法案が平成24年11月13日に成立(第181回国会 臨時国会)。


 特例公債法案の採決がここまで遅れたのは消費税の話ばかりしていたのに加えて政争の具にされてしまったからでもあります。

特例公債法案の早期成立を望む~日本版「財政の崖」を回避せよ 2012 年 10 月 18 日 全 7 頁

 しかしこの時はねじれ国会だったのでこのような事態になってしまったと言えます。次の回で、増税国会になってしまったら重要法案が通らなくなるから増税は延期してはならないという話が出るのですが、そちらがどうなったかの検証を致します。

【チャンネルくらら】倉山満の3分間スピーチ 第8回 増税は間に合わない論のウソ 結論


結論

 9月の段階で、増税延期法案が通ってないからもう決まったことです、延期は間に合いません。と言うのは法律論としても行政手続き論としてもまったくの嘘。そこで持ち出したのは政治論。臨時国会が増税法案で一色になったらNSC法案とか秘密保全法案とか内閣人事局法案とか重要法案が全部つぶれる。しかし秘密保全法だのアメリカ大統領みたいに有事の時に動けるようにしようみたいな法案は対決法案。もともと強い安倍内閣ですら継続審議に持ち込めたら御の字。内閣人事局にいたっては第一次安倍内閣が霞が関全体と喧嘩して負けたそのリベンジ法案。増税も延期できないような政権には通せない。だからとにかく実は安倍内閣の政策にしても政局にしても争点は増税を延期できるかどうかだった。
 だから法律論でずーっと言ってて、最後に政治論、しかも単なる政治的脅迫。NSC法案とか秘密保全法案とかを人質にして脅迫して来ただけ。ところが自民党議員の大半はこれにのってしまった。たった一行の一日で審議が済むような法案を間に合わないと判断してしまった。
 全ては「必要は法に優先する」という精神が抜けていた。官僚が決めた法律、手続き、これまでの慣例があったところで国民にとって必要なことを選挙で選ばれた総理大臣が「じゃあそんな法案は変えましょう」と言ったら変えればいい。とにかく頭がいい官僚が決めたこと、これまでの慣例、手続き決まったことには逆らえないという思い込み。そこを突破できないような人には戦後レジームの脱却は無理。基礎的な知識がないと政治家は今後もいいように操られて国民にとって国家にとって必要なことが出来ないと思う。
 チャンネルくららを見ている皆さんは、ただしい知識を持ってください。


 偽りの政治的脅迫にまんまと騙されたのか、それともそれ以外の利権のために財務省の策略にわざと乗ったのか。どちらにしても国民のための政治が出来なくて何のための政治家でしょうか。何とも情けない話です。

 ここで上がっている法案に対して「通ったじゃないか」と言われるかもしれません。そもそも衆参共に連立与党が過半数を超えているので与党内での調整が出来れば法案を通すことは可能なわけですが、なぜ法案を通すことが出来たのか。法案の中身を検証していくことにしましょう。

NSC法案成立、外交・安保の司令塔、年内始動 情報一元化へ2013.11.27

(記事より引用)

NSCは米国や英国など各国の情報機関と緊密に連携して情報交換を行うため、政府は機密を漏らした公務員らへの罰則強化が不可欠と判断。今国会での特定秘密保護法案の成立を急いでおり、26日に衆院を通過させた。

(引用終わり)


 NSCが機能するためには特定秘密保護法の成立が必要だったわけです。その特定秘密保護法は平成25年12月6日に成立しました。

特定秘密の保護に関する法律 説明資料

 この時の国会はそれこそ「秘密保護法」国会になってしまいました。産経と読売を除くマスコミはこちらを一斉に批判し、多くの市民団体が成立反対を叫んでデモを開催しました。映画界では「映画を作れなくなる!」などの批判まで飛び出しました。

 成立した時の各新聞の紙面もこのようになっています。

備忘・秘密保護法成立の各紙紙面~安倍政権・与党への姿勢の違いは紙面にどう表れたのか 2013年-12月-08日

 そして驚いたのは安倍総理が丁寧な説明を行うために記者会見を行った時のことでした。特定秘密保護法の成立に肯定的な産経新聞の阿比留瑠比氏が総理に質問した途端、民法は一斉に中継を中断してCMを流したのです。

安倍総理の記者会見…特定秘密保護法の説明時に民放TVが一斉にCMに入り、中継を中断 → 視聴者が各局へ電凸 → マスコミ「ご意見を承りました」と報道しない理由答えず 2013年12月09日

 マスコミの報道しない自由万歳!国民の知る権利を一番侵害しているのはマスコミですね!

 結局、政権支持低下のためのプロパガンダに散々使われる羽目になってしまった法案ですが、問題はこれがきちんと機能するのかです。これに関して倉山氏は「世紀のザル法」だと指摘してます。

(『反日プロパガンダの近現代史』P156より引用)

 この法案の、急所は、最低刑の規定がないことです。少なくとも最低刑を懲役三年以上にすることにこそ意味があったのです。
 刑法を学んだ人ならご存知の通り、最低刑が懲役三年の犯罪は凶悪犯罪であり、執行猶予が付きません(法律上、付けることができません)。よって、必ず刑務所に入ることになります。これまでは、国家機密を漏洩しても、あるいはスパイが情報を盗んでも、懲役一年執行猶予付き、などということになりかねなかったのです。スパイを捕まえたら国外に逃がさないで日本の刑務所に三年間入れることができます。三年も外部の政界から隔絶されたら、スパイとして使い物になりません。だから、特定秘密保護法を「スパイ防止法」にするならば、焦点は最高刑の厳しさとかそのほかの論点ではなく、「最低刑が懲役三年以上になるかどうか」だったのです。

(中略)

P159より
 この法律が「ザル」である部分をあとふたつ挙げます。
 一つは、「秘密」の指定は大臣が行うということ。自民党という政党は、永遠に自分が与党でいることを前提で物事を決める性癖がありますが、自民党が「最悪の政権」「売国政党」と罵る民主党の大臣が秘密を指定するという事態になったらどうするのでしょう。
 もうひとつは、前節でお話ししたように、「秘密」にはcovertとclandestineがあるのですが、この法案では区別がまったくついていません。
 こんな世紀のザル法のために大騒ぎをして、政権の命綱であるアベノミクスを潰したとしたら……。
 またしても日本はプロパガンダに引っかかったのかもしれません。

(引用終わり)



 用語を簡単に説明すると「covert」は秘密ではありますが、そこに秘密がある事自体がわかっていて、後に公開することが前提のもの。「clandestine」は秘密がある事自体を秘密にしているもので情報公開の対象外のものです。

 つまり、反対していた野党やいわゆるスパイにとっても成立しても痛くもかゆくもない法案だったということです。そもそもこの法案の検討を始めたのは、この時には大反対していた民主党なのですから。

仙谷長官、秘密保護法に意欲 尖閣映像流出2010年11月9日

 そして、やはりキーになるのは公明党でしょう。公明党や支持団体の創価学会が一番批判しそうな法案なのに賛成に回る。特定秘密保護法を戦前の治安維持法と同じくらいの悪法だと言う人がいますが、もし治安維持法と同じような法律だったら、初代会長の牧口常三郎がそれで投獄された過去を持つ創価学会を支持団体に持つ公明党が賛成するはずは無いでしょう。もちろん、法案をきちんと読めばわかりますが、そのようなものでありません。

 そして内閣人事局です。こちらは平成25年の第185回国会(臨時会)で内閣が提出し、翌、平成26年の第186回国会(通常会)で可決・成立しました。

国家公務員法等の一部を改正する法律に対する修正案

 こちらの初人事の評価でこのような記事が上がっています

「内閣人事局」による官邸主導の初人事が霞が関の抵抗に合わなかった理由 2014/7/9

(記事から引用)

安倍首相側近の人事局長就任で政治主導を印象付けた

内閣人事局長の発表寸前まで霞が関は警察官僚出身の杉田和博副長官の就任を信じて疑わなかった。4月に新聞各紙が「内閣人事局、初代局長に杉田和博氏 安倍政権方針」(朝日)「内閣人事局長に杉田氏 政府調整 官房副長官と兼務」(産経)と報じていたことも大きい。杉田氏本人も就任を信じて疑わなかったらしく、発表前に挨拶されたという大物官僚OBもいたようだ。

ところがギリギリまで菅義偉官房長官は「まだ決まっていない」と明言を避けていた。杉田氏に内定していたものを菅氏が安倍首相に進言してひっくり返した、とされているが、反対派を押さえ込むために最後の最後に「だまし討ち」することを決めていたのかもしれない。

加藤氏は安倍首相が最も信用する側近のひとりだけに、初めから「加藤局長」を決めていた可能性は十分にある。安倍内閣はこの人事ひとつで「政治主導色」を印象付けることに成功した。

(引用終わり)


 一件政治主導がうまく行っているようにも思えます。

 ここで、一つ指摘しておきたいのは内閣人事局がなくても首相が強ければ人事に介入できるということです。

集団的自衛権行使容認のための強権的な内閣法制局長官人事は許されない(談話)2013年8月8日

 (記事から引用)

1.政府は本日午前の閣議で、内閣法制局の山本庸幸長官を退任させ、後任に小松一郎駐フランス大使を充てる人事を決定した。内閣法制局は、政府提出の法案や政令案について、憲法や他の法令と矛盾がないかを事前に審査するほか、憲法や法令の解釈で政府の統一見解を示す役割を担うことから、政府の「憲法解釈の番人」と呼ばれている。そして、法制局長官は憲法の解釈について国会で答弁し、その精緻な積み重ねが政府の見解となってきた。過去60年、内閣法制局長官は、法解釈の継続性や職務の専門性に基づき、同局の法制第一部長を経験した内閣法制次長が昇任するのが慣例であった。法制局の経験がなく、しかも外務省から長官が起用されるのはきわめて異例である。集団的自衛権行使の容認に向け、従来の慣例を破ってまで強権的に人事権を行使したことは明らかである。

(引用終わり)


 こちらの社民党の談話からわかるとおり、異例の人事、しかも財務省をしのぐと言われる最強官庁・内閣法制局の人事に介入したのです。参議院選挙後の安倍総理の力が絶頂の時のことです。しかし、消費税を延期できず、国会は秘密保護法国会と化し紛糾している間に何が起こっていたか。

【国益より憲法-検証・内閣法制局(上)】首相に逆らう法の番人「憲法守って国滅ぶ」2013.11.26


(記事より引用)

 19日夕、東京・霞が関の中央合同庁舎4号館。最上階の会議室に、内閣法制局長官経験者らが集まった。

 現役幹部を交えて意見交換を行う恒例の「参与会」のためで、この日のテーマは「携帯電話のクーリングオフ」。クーリングオフとは契約書を受け取った日から一定期間は契約を無条件で解除できる制度のことだが、首相の安倍晋三が8月に駐仏大使から抜擢(ばってき)したばかりの長官、小松一郎は目立った発言をしなかった。

 「(法律の)技術的な話がほとんどで、小松氏は議論についていけていないようだった」

 出席者の一人は、そのときの小松の様子を“上から目線”で振り返った。

(引用終わり)

 陰湿ないじめです。何とか小松長官を追い出そうということでしょうか。外交官出身で国際法に詳しい小松長官が「携帯電話のクーリングオフ」についてわからないと言って、批判される筋合いはないはずですが。結局、首相の力が強ければ言うことを聞く役人も、首相の力が弱ければそれまでです。

 小松長官は末期がんでした。それでも何とか安保法案を成立させようとしていたのですが、野党からもひどい攻撃を受けることになりました。

 共産党の小池晃氏は小松長官を「安倍政権の番犬」と揶揄しました。

小松法制局長官「安倍政権の番犬」に反論 2014.3.5

 毎週月曜日に治療することが決まっている小松長官が国会に出てこないことに対して、民主党の尾立源幸氏は「職務を果たしていない」と批判しました。

がん患者は「職務不能」なのか 小松長官批判した民主党議員に反発の声 2014.03.31

 安全保障関連法案は平成26年5月14日に閣議決定しましたが、その直後に小松長官は退任。後任には横畠裕介氏が付きました。その後小松長官は6月23日に亡くなりました。

 後任に就いた横畠氏とはどのような人物なのか。もともと前の山本庸幸長官が退任したら彼が長官になるのが順当な人事でしたが、第一次安倍政権のときから因縁のある人物でもあります。

≪罪深きはこの官僚≫横畠祐介(内閣法制局内閣法制次長)「憲法の番人」復活を画策する次期長官

(記事より引用)

 横畠は検事出身で一九九九年八月に法制局に出向、総務主幹、第二部長を歴任し、「次の法制局長官が確実視されたエース」(法制局関係者)だ。過去にも、安倍晋三内閣が集団的自衛権の行使容認を目指して懇談会を設置した際、第二部長だった横畠は、当時の法制局長官の宮崎礼壹とともに「強引に推し進めれば辞表を出す」と迫った過去がある。

(引用終わり)


 結局、平和安全保障法制の集団的自衛権の解釈が内閣法制局の手の平の上で終わったことは以前当ブログで指摘した通りです。

ニコニコ生放送 【安保法制】次世代の党 和田政宗 vs 憲政史家 倉山満 対談生中継 を見て ~安保法制に関する誤解とは

 そして財務省人事に関してはどうでしょうか。現在の財務事務次官の田中一穂氏は第一次安倍内閣の首相秘書官だった人物です。この人事に対して高橋洋一氏はこう言います。

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 安倍首相が「力」を見せつけた 財務省次官「異例人事」の深層2015/7/ 9

(記事より引用)

今回の人事は、安倍首相の人事だ。安倍首相は以前から、(新次官となった)田中一穂氏を次官にするとしばしば漏らしていたが、これは、田中氏の力量を買っての意見ではなく、安倍首相自らの政治力を示したい意図が透けて見えている。

「これが安倍首相の人事力なのだ」と見せつけられ、財務省は、最も嫌う増税を延期させた安倍政権の力を認めざるをえず、異例中の異例の人事を受け入れている形である。

官僚が一番嫌うのが、人事介入である。これまで、実際の権限者である大臣をさしおいて、官僚だけで人事を取り仕切ってきた財務省までもが、とうとう政治家の人事介入を許してしまったというのが、今回の同期3代という異例の人事なのだ。そもそも、マスコミが使う人事介入という言葉が矛盾している。本来の人事権者である政治家が人事をいうと「介入」と言われることが不思議だ。

(引用終わり)


 これには少々首をかしげざるを得ません。この発言になぜ疑問を持つかと言えば、田中一穂氏が去年事務次官になったことは、彼がその前の年に主計局長になった、それを思えばもうこの時点では順当な人事だったからです。

事務次官に香川氏、財務官に山崎氏が昇格=財務省幹部人事2014年 07月 4日

 木下、香川と54年組の次官が続く、そして主計局長に田中氏がなった。主計局長が次の事務次官になるのは順当なのでこの人事は同じ年次から3人続けて次官コースに乗るという極めて異例な人事です。この時点で田中氏が次官になることはほぼ確定です。それなのに、なぜ次の年に田中主計局長が財務事務次官になったのを異例な人事だと言うのか。この時、高橋氏がそれを言っていたのなら、話は分かるのですが、少なくともネットの文字媒体ではそのような記事は見つけられませんでした。

 そして、この香川財務事務次官、田中主計局長が決まる少し前に一部でこのような報道がありました。

消費増税牽引で異例の同期「3人次官」=財務省「サプライズ人事」の知られざる裏側2014/06/13 11:27

(記事より引用)

安倍官邸に恭順の姿勢を鮮明にした財務省

7月に発令される財務省人事で、異変が起きた。木下康司事務次官(79年入省)が勇退し、香川俊介主計局長が次官に昇格するまでは既定路線だが、安倍首相に近い田中一穂主税局長が次期次官含みで主計局長への横滑りが内定したのだ。

(中略)

こうした過去のトラウマを教訓に、同期2人次官の規定路線に沿い香川次官を先行させるが、「財務省としては安倍首相に近い田中主税局長をも次官にすることで官邸への恭順の意を示したい」(ある官邸関係筋)。これが今度の財務省次官人事の真相である。

(引用終わり)


 安倍総理への降伏とも偽装降伏とも取れる記事です。しかし、これは正式な発表前のリークで菅官房長官はこれを否定します。

中国戦闘機の自衛隊機への異常接近、許しがたい行為=菅官房長官 2014年 06月 12日

(記事より引用)

財務次官の人事が一部で報道されたことについては「理解できない。人事局が発足し、いま資格審査を行っている。人事のリストはまた上がってきていない」と語った。

(引用終わり)

 内閣人事局がどのようなシステムになっているかはこちらをご覧ください。

幹部職員人事の一元管理

naikaku.png


 そしてリストがまだ上がってきていないと官房長官が言っていたにも関わらず、最終的にはリークされた通りの人事になりました。これが何を意味するのか。

 これの答えともいうべき記事が去年、週刊文春7月23日号、7月30日号に掲載されていました。54年組に関する綿密な取材で、公務員試験の順位まで掲載されています。財務省内の人間ドラマとも取れる大変面白い記事でした。その中から長いのですが引用します。

(7月30日号 財務省「最強世代 54年組」の研究 後編 岸宣仁より引用)

 一方、田中は国税庁次長から理財局長に転じ、主税局長となった。この時点でも木下と香川が同期次官、田中は国税庁長官という既定方針に変わりはなかった。
 だが、平成二十四年十二月に自民党が総選挙で圧勝し、安倍が首相に返り咲く。
 二十五年六月の財務省人事。主計局長の木下が次官に昇格し、五十四年組から初の次官が誕生した。主計局長に香川。ここまでは順当だった。問題は、主税局長に田中が留任したことだ。
 実はその二ヵ月前、ある人事が発令されていた。田中が就くと見られていた上がりポストの国税庁長官に、一期下の稲垣光隆が就任。逆転人事だった。官房長官の菅義偉は、この頃周囲にこう洩らした。
 「これは財務省へのメッセージだ。一期下を国税庁長官にして、田中を主税局長に残した意味を考えろ」
 財務省の出方次第では、香川を飛ばして、田中次官もあるとのメッセージだ。

 平成二十六年四月、野田政権下で成立した法律に則り、消費税は八%に上がった。だが、安倍政権は有識者六十人から意見聴取するなど、最後まで財務省に言質を与えなかった。官邸から見れば、消費増税に邁進する財務省はアベノミクスの“抵抗勢力”だった。その親玉は、消費増税の功労者・香川だ。安倍政権に逆らうなら、人事に手を突っ込む――。平成二十六年夏の定期人事をにらんで、官邸と財務省との駆け引きが続いた。
 安倍が「田中を絶対に次官にする」と明言したとの情報が次官OBを通じて伝わり、財務省は震撼した。
 前出の田中の元部下は、こう洩らした。
 「僕は田中さんが好きだし、次官になってほしい。でも、香川さんが次官になれずに、田中さんが次官になったら、財務省は終わる。そうなれば、みんなが上に気に入られることばかり考えて、目立たない仕事に汗を流さなくなる。香川さんが一番仕事をしたことを、皆がよく知っている」
 最高権力者の安倍が田中次官と言う以上、もはや、落とし所は戦後初の同期三人次官しかない。だが、有力OBが懸念していたのは順番だった。先に香川を次官にしなければならない理由があった。
 香川の体調である。香川は、消費増税に関する三党合意がまさに佳境を迎えようとする頃、食道ガンという病魔に冒され、暫く戦線離脱を余儀無くされた。
 手術は無事成功したものの、術後の体力回復には時間がかかった。当時の彼を知る誰もが指摘するように、「ガリガリの身体で、自らの生命を削るように議員会館を根回しに走り回る姿」は、悲壮感さえ漂ったといわれる。
 田中が先に次官になった場合、翌年夏に香川は次官を務められる体調ではないのではないか。そんな予感が財務省関係者の間にはあった。
 ここで、もう一人の五十四年組が登場する。

 加藤勝信。旧姓・室崎。昭和五十四年に大蔵省に入省し、防衛担当の主査などを務めた。自民党税調の大物として知られた加藤六月の娘と結婚して、政界に転じ、第二次安倍政権が発足すると官房副長官に就任した。
 加藤は平成二十六年五月末に誕生し、国家公務員の幹部人事を司る内閣人事局の初代局長にも就いた。
 政界に進んでからは、敢えて財務省の族議員とはならず、厚労族となった加藤だったが、五十四年組の同期会には顔を出していた。特に、木下とは親しかった。
 田中次官が取り沙汰されるようになった頃、木下、香川、田中、加藤は四人でよく会っていた。ある時、田中はこう言ったという。
 「香川を差し置いて次官になれというなら、オレは財務省を辞める」
 財務大臣の麻生太郎は、財務省の総意を受けて動いた。麻生は、安倍が言うことを聞く数少ない政治家の一人だ。麻生が安倍に示した人事案には、こうあった。
事務次官 香川俊介
主計局長 田中一穂

 二十六年七月、財務省人事は決着した。主税局長の田中が主計局長に回り、次期次官を確定させた。戦後入省者で、主税局長から主計局長への横滑りは初めてのことだ。
 内閣人事局長の加藤が、三人次官の流れを確実にするうえで一役買ったことは、想像に難くない。官邸と財務省の顔が立つ同期三人次官は、人材豊富な五十四年組だから可能だった。木下は、同期についてこう語っている。
 「僕たちの同期というのは二十八人いましたが、一人自殺しました。(略)そのとき、我々の同期で、偉くなることより大事なことがたくさんあるという話をしました。我々の同期は、月に一回、同期会をやることで有名な期でして、非常に仲がいいのだけれども、そんなことがあって以来、同期でポストがどうのこうのと一回も話したことは無いですね」(前出の研修で)

(引用終わり)



 この一連の動きをどう見るか。もし安倍総理が本当に強かったら、香川氏の前に田中氏が財務事務次官になる可能性もあった。しかし、財務省も一筋縄ではいかない。官邸の手が入る前に(安倍首相の意向をくんでいることを匂わせる)情報をリークして筋道を作り、最終的には田中氏を次の次官にするということで官邸を納得させた、そのようにも読めます。

 官邸がどのくらい強いのか。それを確かめるには公明党、内閣法制局、財務省との力関係、それを見極めないと本当にどちらが強いのかは判断の難しい所ではあると思います。

 財務省が強いのか安倍首相が強いのか。私としては何としてでも消費増税10%は止めていただきたいのですが、そのためにはどうしたら良いのか。あの8%増税の時のような悔しい思いをするのは御免ですが、景気回復はあくまで手段であり、消費増税が景気を冷やすことがわかりきっている今、出来れば解散総選挙のような最終手段をとるのではなく、総理の決断によって増税を阻止してほしい。そして、力強く国民のための政治を行っていただきたいと思います。
 そして政治の質は国民の質です。政治家に正しい政策を進めてもらうには国民も賢くならなければならないと思います。おかしな言説に騙されないようにするにはどうしたら良いのか。この動画はそのためには本当に基本的な知識と物事を正しく見極める目が必要だということに気づかせてくれます。

 今回でいったんこちらの『増税と政局』のシリーズは終了いたします。また本当の政局になったら、それに応じて記事を書きたいと思います。

テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済

増税と政局~「倉山満の3分間スピーチ 増税は間に合わない論のウソ」を検証する ㊤

 
 『増税と政局』第8弾。今回は倉山満氏がチャンネル桜のキャスターから降板しチャンネルくららを開設しての最初のシリーズ「倉山満の3分間スピーチ 増税は間に合わない論のウソ」を検証したいと思います。平成25年10月に放送されたもので、今さらと思われるかもしれませんが、この中にはいろいろと見るべきもの聞くべきものが詰まっています。

【チャンネルくらら】倉山 満の3分間スピーチ 第1回  増税は間に合わない論のウソ①


今回のポイント

・「増税決まっている論」。これを永田町でかなりの人が信じていた。それで倉山氏は非常に危機感を持って、9月9日の段階で増税阻止運動を本格的に開始した。
・「増税決まっている論」は法律論としても政治論としても間違い。
・消費税は法律が通って平成26年から8%に上がることが決まっているが、附則18条という景気条項がついている。それは当時の総理大臣の野田民主党内閣、野党の自民党の谷垣総裁、山口公明党代表の3人で決めたので三党合意と言われている。法律上は附則18条があるので、景気の状態が悪ければ、増税しなくてよい。増税すると最初から決まっていたわけではない。だから三党合意の段階で罠が仕掛けられていたというのは、嘘、間違い。
・附則18条を入れていたのは野田総理にいじめられていた民主党の反主流派。自民党はそれを潰そうとしていた。
・附則18条は、法律の一部なので総理大臣は増税を延期することは出来る。

 まずこの「増税決まってる論」。三党合意の段階で罠が仕掛けられていたという説が自民党内に蔓延していた、ということをきちんと自民党員の言葉で確認できるのは以前にも紹介したことのある赤池議員の動画です。

【赤池誠章】消費増税・三党合意に仕掛けられた罠、戦いは次の局面へ[桜H25/9/25]


 しかし、倉山氏は附則18条という景気条項があるので増税は延期できると言っています。

 見やすいのでこちらはWikipediaから。

附則18条 景気弾力条項

 赤池氏は三党合意にもう罠が仕掛けられていると言っていますが、三党合意がどういう中身なのかがこちら。

民主党 社会保障・税一体改革で民主・自民・公明の3党実務者合意案まとまる 2012年06月15日

 こちらの民主党のホームページの「税関係協議結果」というPDFファイルに附則18条をどう扱うかが書かれています。

○附則第18条について

・以下の事項を確認する。

(1) 第1項の数値は、政策努力の目標を示すものであること。
(2) 消費税率(国・地方)の引上げの実施は、その時の政権が判断すること。


 はっきりとその時の政権が判断することと書かれていますね。

 これならば、安倍総理がその時の景気を見て延期するかどうかを判断することに何の問題もないように思えます。

 では次に行きましょう。

【チャンネルくらら】倉山満の3分間スピーチ 第2回 増税は間に合わない論のウソ②


今回のポイント

・谷垣自民党総裁は解散することを条件に建前上増税法案に同意した。その後谷垣さんは総裁選に負けることすら出来ず不出馬に追い込まれ、安倍晋三が自民党総裁、そして解散総選挙によって総理大臣になり安倍内閣成立。
・安倍さんは総裁選、そして衆議院選挙の段階でアベノミクスということを掲げていた。
・安倍さん自身は増税するともしないとも言っていない。財政健全化は当然必要だけれども長期スパンでやるべきもの。それより先にやることは金融緩和。とにかく景気を回復させることだということを公約に掲げて、総裁選、総選挙を戦った。
・安倍さんはまず経済と言って戦った。それを自民党の総裁選の公約のすみっこの方とか、衆議院の選挙の時の細かい文字を持ってきて、「実は安倍さんは消費税増税に決して文字を残していなかった~!」などということ自体が、まさに戦後レジーム。
・経済以外の安保とか憲法とか、しっかりとして国家観を持っていた人だからこそ、叩かれながらも安倍さんは敢えてまず経済と国民の前に明らかに訴えた。


 まず安倍さんは総裁選で何を掲げて戦ったのか。

自民党総裁選 候補者データ 安倍晋三

所見より引用

社会保障の給付を確実にするには経済を強くする必要があります。
消費税を上げる前にデフレから脱却するため、政府と日本銀行が一体となり、思い切った金融緩和を行うなど、政策を総動員して対応していきます。また、子供たちの命を守る防災への公共投資、経済成長のための公共投資は堂々とやるべきだと考えています。

引用終わり


 はっきりと消費税を上げる前にデフレから脱却と言っているわけです。そして総裁になった後の衆議院選挙ではどうだったか。

重点政策2012 自民党

「日本を取り戻すための戦い」安倍総裁が会見 BLOGOS編集部2012年11月16日

記事より引用

本日、衆議院は解散されました。
私達は、今日までのこの3年間、もう一度、自由民主党を見つめ直し、そして我が党の結党理念をもう一度見つめ直し、今日の日に備えて政策を鍛えあげて来ました。

この戦い、私達は、日本を取り戻すための戦い、そう位置づけています。我が党は、この選挙戦において、私達の理念に基づいた政策を堂々と訴えていきたいと思います。

強い経済を取り戻して行く。
強い経済は、しっかりとした社会保障の基盤につながっていきます。
強い経済は、活力のある地方につながっていきます。
強い経済は、東北の復興の大きな力になるわけであります。
私達はどうやって経済を強くしていくか、経済を成長させていくか 、具体的に政策を示していきたいと思います。

引用終わり


 これでもかと言わんばかりに「強い経済」と繰り返しています。まずは経済、それで安倍総裁は戦って自民党が勝利しました。ちなみにこの時の公約には増税をするとも延期するとも書かれていません。

では3回目を見てみましょう。

【チャンネルくらら】倉山満の3分間スピーチ 第3回 増税は間に合わない論のウソ③


今回のポイント

・安倍自民党総裁は総選挙でアベノミクス、まず景気を回復させる、ということをそれまでの支持者の批判を受けながらも戦って勝った。だから、増税というものを絶対やめるとは言っていないが、それ以上に優先順位は景気回復だ、ということが総選挙によって国民に示された。
・参議院選挙でも安倍さんは勝った。この時点で安倍さんは、自民党総裁選挙、衆議院議員選挙、間に東京都議会選挙という、国政選挙と同じ扱いを受けるような大型選挙、そして参議院選挙。安倍さんは全部の選挙で勝って、連立与党は過半数を獲得して、完全に国民の信任を受けた。
・増税を決めたのは前の民主党内閣と安倍さんに総裁選で負けた野党(ここで倉山氏は野党と言っているが谷垣元総裁のこと?)。山口さん(公明党)は与党第一党でも何でもないので与党の一角ではあっても、与党がどうしてもこれやりたいという事だったら従うか、連立離脱かどっちらかしか無い。
・安倍さんの意思が国民の意思として示されたので、増税よりもアベノミクスが優先。
・安倍さんは参議院選挙で勝った後、10月上旬に決める景気動向をみて判断すると言っていた。ここで何か問題があるか。問題があるならこの時に言えばいい。黙っているという時点で何で異議申し立てをしないんだという話になる。
・予算は毎年国会の意思として示される。予算請求が行われていて全部取りまとめると99兆円になった。それは役人の中のルーティーンの世界。
・あくまで予算というのは計画書、見積書に過ぎない。この時点でみんなの要望を聞いてるだけ、御用聞き。総選挙で選ばれた国民の意思と、所詮は御用聞きとどちらが優先か。
・あとになって「安倍さんは何でこの時臨時国会を開かなかったんだ、もう決まった事なんだよ」という人は、一体このプロセスをどう思っているのか。総理大臣は選挙で選ばれた人、御用聞きをやってる財務省の役人は所詮官僚に過ぎない、選挙で選ばれた人ではないどちらを優先するのか。本当に選挙で選ばれた総理大臣の意思が役人の御用聞きの都合で覆されていいのか。

 参議院選挙の自民党の公約はこちらです。

自民党 2013年参議院公約

 強調されているのは復興と経済。

 この公約で消費税に関して書かれているのはこれだけです。

●弱い立場の方には、しっかりと援助の手が差し伸べられるよう、消費税については全額、社会保障に使います

 やはり増税延期するともしないとも書いてありません。

 そして増税をするかどうかの判断についてはまず首相になってすぐの発言がこちらです。

安倍内閣総理大臣年頭記者会見 平成25年1月4日

(記事より引用)

消費税の引き上げの実施については、4~6月の経済指標を含め、経済状況を総合的に勘案して判断をしていくことになります。3党合意では、来年春に消費税を引き上げるということが決まっておりますが、その方向に向かうように、経済を再生させていきたいと考えております。

(引用終わり)


 4月~6月の経済指標、GDP速報が出たのは8月12日です。

2013(平成25)年4~6月期四半期別GDP速報 (1次速報値)

 このくらいに出ることは当然わかっていたことなので、どんなに早くても判断は8月以降ということになります。総理になってすぐにある程度の時期は明言していたわけです。

 その後、その後4月には秋には判断されるという報道がされています。

消費税引き上げまであと1年 2013年4月8日(月)

(記事より引用)

「もう1年を切っているんですね。
引き上げの予定です。
来年の4月に今の5%から8%に。
そして再来年の2015年の10月には10%と、2段階で引き上げることになっています。
10%への税率の引き上げで13.5兆円の税収増が見込まれています。
この引き上げの実施について政府は、経済状況などを勘案して、この秋に判断するとしています。」

(引用終わり)

 そして後に日銀短観を見てから決めるという発言になっています。日銀短観が発表されたのが10月1日です。

短観(要旨)(2013年9月)2013/10/01

 政治のスケジュールとしてこのように決まっていて、そして景気条項があり時の政権が増税判断して良いことになっている。それなのになぜ増税は間に合わないと自民党の議員は言いだしたのか。予算編成上の都合は本当なのか。そもそも官僚のルーティーンワークが国民の意志を覆すことになってよいのか。次回に続きます。

【チャンネルくらら】倉山満の3分間スピーチ 第4回 増税は間に合わない論のウソ④


今回のポイント

・今まで安倍さんのやってきたこと(まず経済)は国民の信任を得ている。
・官僚、特に財務省は本来は7月から始めたいのだが、選挙があったので、7月末から8月にかけて各省に御用聞きをやった。
・各省が、政治家にお願いして、いわゆる族議員と言われる人たちも使って、総動員して、団体の陳情を受けながら、予算請求が集まった(99兆円)。この時、自民党内には「えっ、99兆円も支出があるんだったら、増税しなきゃダメじゃ~ん」みたいな、わけがわからない雰囲気が広がった。
・財務省主計局の本来の仕事というのは無駄遣いを切ること。みんなが欲しいから増税して国民にツケを回す、そういう官僚は財務省主計局には居てはいけない。ところが、今回だけは、「あっ、増税させてくれるんだ。」というわけがわからないハシャギ方をした。
・その後、「増税は決まったことです」と散々圧力をかけた。最後はオリンピックが決まったので増税できるという意味不明なことになった
・そもそも予算とは何か。憲法にも財政法にも「予算案」はない。官僚が、つまり、実質的には財務省主計局があくまで計画表、見積書に過ぎない予算を作って、財務省の中で決まり、省議で決まり、そして内閣で、ここは形式的に決まり、そして衆議院に提出する。実は、「予算案」ではなく「予算」。しかし衆議院でその予算を承認しないかぎり、国会が予算を承認しないかぎり、法的効力はない。
・「予算」は、確かに「案」ではないかもしれないが、あくまで「見積書」に過ぎない。この見積書に過ぎない、法的効力がないものによって、選挙で選ばれたアベノミクスという意志、国民経済を回復させることが最優先だという選挙で選ばれた意志、法律よりも上にあると言っていいくらいの、最優先の国策、それがひっくり返されるとはどういうことなのだという話。
・「予算編成の都合がある。実際、99兆円がきた。どれくらい税収が入るかどうかわからないで、早く増税を決めてくれ。じゃないと予算が組めない」そんなことは選挙で選ばれた政治家が決めたことに合わせてやればいいのに政治家が官僚に合わせてしまった。ここに悲劇がある。


 この回はもうほとんど解説することはないでしょう。見積もりに過ぎない予算を執行するために、なぜか増税しなければいけないというおかしな空気が作られ、自民党議員はそれに乗ってしまった。もちろん彼らが官僚の都合にただただ流されたわけではなく、裏にはいろんな利権などが絡んでいるのでしょう。しかしながら、国民の意志である景気回復はどこに行ってしまったのかという話です。これに対して本当はもう決まったこととせずに国民は声を上げるべきだったのでしょう。しかしながらマスコミもそれを封殺するかのように増税はもう決まったことだと報じたことは前回の記事に書いた通りです。

増税と政局~マスコミは消費税をどう報じたのか~

【チャンネルくらら】倉山満の3分間スピーチ 第5回 増税は間に合わない論のウソ⑤


今回のポイント
・増税法案は、施行期限が決まっている。平成26年の4月から8%で27年から10%。施行期限がある法律は確かに新たなる法改正をしなければならない。「新規立法が必要だからもう間に合わない。何で夏休みなんて取ったんだ。延期したいのだったら国会開いとけよ」みたいなことをここになって言いだした。では何月何日までにこの附則18条を生かすために新規立法をしなきゃいけないか。9月10月の段階でもうまにあわないじゃないか、と言うのが実はトリック。
・増税判断は10月上旬にすることを決めていた。仮に10月1日とする。10月1日に延期判断をすると国民によってえらばれた総理大臣が判断しているのに、法律があるから10月1日より前の今の段階で決まってないのはけしからんとはどういうことか。国民の意思を無視するのかと言う話。そして政策の結果として国民経済ダメにするのかという話。国民経済にとって必要なこと国家のために必要なことでも官僚が作った法、すでに決まってる法、官僚行政の今の慣例の方を優先するというのはおかしな話。
・「必要は法に優先する」あまり褒められた言葉では本当は無いが、でもイギリス人などが憲法、国際法で運用している言葉がある。国民にとって国家にとって必要なことを所詮はそれまでの前政権の作った法であるとか、官僚の都合だけによって動かしてる法に優先させなきゃいけないなどということがあってはいけない。必要のためには総理大臣が変えなければいけないことは変えればいい。


 国民のために優先しなければならないことは何か。先日の安保法制に関わる集団的自衛権の議論などまさにそれを感じました。そもそも集団的自衛権が違憲だということがおかしな話なのですが、憲法9条が戦争放棄を謳っているからと言って何もせず何にも備えず、座して死を待つのが当たり前のような議論がなされる我が国の状況は本当に嘆かわしいことだと思います。本当に必要ならば変える必要がある事は変えなければならないはずです。

 そういえば、普段は消費増税に反対しているのに、この時は不思議なことに「悪法もまた法なり」と言った方がいましたね。

竹中平蔵の消費税増税理由がアホっぽい件



【チャンネルくらら】倉山満の3分間スピーチ 第6回 増税は決まった論のウソ⑥


今回のポイント

・毎年予算を作っている。あくまで予算は国会が認めるまでは財務省が何を言おうが見積書に過ぎない。法的効力はない。見積書に過ぎないということは今回の増税を延期するかどうかによって歳入の見込みが変わってくる。見積もりが変わってくる。予算に法的効力がない見積書なら総理大臣が歳入の見積もりを10月上旬に変えると言ってその時から動き出していけばいい。
・法律で決まっている、施行期限が決まっている法律に関しては新規立法が必要である。総理大臣が増税やめるぞと言ってから予算関連法案として通せばいい。
・そんな法案審議してたら大変だ、そんな時間はないと言うが、施行期限が決まっている法律を延期するのにどれくらいの条文が必要か。一行で十分。増税法案に「平成26年度から8%にするのは延期する」と一言書けばいい。それに3か月間を臨時国会全部費やすのか。当時自民党では増税延期を今からしたら臨時国会全部吹っ飛んでしまう、みたいなこと言われたが、延期するだけなら一行で済む。方針に賛成か反対かしかない。与党が従えば朝、衆議院を通して、夜、参議院通すので終了。今更総理大臣が公約に掲げた、増税延期によってアベノミクスを守るということをひっくり返すのかという話。法律論としてはそこで終了。臨時国会全体がダメになってしまう、みたいなことを言われても困る。一行の法案に何日審議する気だったのか。

 ここでたった一行で済む増税延期法案を審議するのに3か月もかかるのかという話が出ています。消費税10%の延期の法案がどのような流れで採決されたのかを参考までに見てみましょう。

・第189回国会(通常国会)が平成27年1月26日に召集。
・消費増税延期、法案が平成27年2月17日に閣議決定。法案提出。
・平成27年度税制改正法が平成27年3月31日参議院本会議にて可決。

 この平成27年度税制改正法は消費税延期だけに絞ったものではなかったのであまり参考にはならないかもしれません。この時消費税に関することでは平成27年10月1日に消費税10%に上がるはずだったのが、平成29年4月1日に延期、そして附属18条3項が削られることになりました。特別話題になることもなく当たり前のように成立しました。要は与党内で話がまとまっていれば当たり前に通ったわけです。これを思うにもし安倍首相が平成25年の10月1日に増税延期判断をしても与党内さえまとまれば同じようなことになった、少なくとも臨時国会全体が駄目になるというようなことはなかったでしょう。

 長くなりましたので7回、8回は次回にまわしたいと思います。次回は結論です。




テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済

倉山満 お役所仕事の大東亜戦争 感想


 今回は(も)力作です。331ページで1200円(外税)とはなーんてリーズナブル!

 倉山先生の大東亜戦争に関する本は単著では4冊目になると思いますが、今回は大日本帝国の統治機構や内閣の変遷を踏まえて語られます。元老の役割、衆議院との関係、宮中、陸軍、海軍、官僚機構などの間にどのような力関係があるのかを知ることで、単純に出来事だけを追っていたのでは見えないものが見えてきます。この辺が、単に歴史だけではなく、憲法、政治学の研究をしている倉山先生の真骨頂とも言えます。

 大東亜戦争は「侵略」だったのか、それともアジア解放のための「聖戦」だったのか。倉山先生はそれを「お役所仕事」と断じ、それが「賢人の知恵」を使って説明されます。「賢人の知恵」。それは倉山満先生の中央大学弁論部・辞達学会の先輩、上念司先生により、いかなる正論も封殺して理不尽を押し通せる応答パターン集としてまとめたものだそうで、大東亜戦争に至る政府のグダグダぶりがそれで説明されています。

 ここで詳しく書くよりも、この「お役所仕事の大東亜戦争」はチャンネルくららでも番組を作られているので、それで見たほうがわかりやすいかと思います。爆笑ものです!



 ちなみにインターネット放送で一番最初に「賢人の知恵」が発表されたのがおそらくこれ。笑えるのですが、今の状況を思うに微妙に泣けてきます。

【アーカイブ】上念・倉山・浅野、消費増税とアベノミクス偏向報道を語る[桜H25/8/21]

 日露戦争以降の日本人は何が変わってしまったのか。戦時なのにも拘わらず、平時のルーティーンと変わらない人事が繰り返される。本当に日本は真面目に戦争をやる気があったのか。日本は侵略戦争をやった悪い国だという人がいますが、それはある意味過大評価です。人事のみならず、敵に命を狙われているはずの連合艦隊司令長官のその日の行事日程を分刻みで作り、大事なことだからと二回も電報を送るとか殺してくれと言わんばかりの行動です。それで暗殺された山本五十六が長官になった理由というのも、三国同盟に反対していた山本が民間右翼に暗殺されないように海上に送り出したという本当にいい加減なもので、こんな日本が軍国主義の侵略国家だったと言われても、いっそその通りだったら戦争に負けていなかったのではないかと思うのです。

 読んでいて「これはいつの時代の話なのだろう」と思ったのが、第三章第二節の田中義一内閣の時、1927年に起きた「南京事件」で南京に入城した蒋介石の北伐軍が各国領事館を襲撃して、被害を受けたアメリカとイギリス軍は艦砲射撃で報復したにも関わらず、日本は「それでは中国の顔を潰す」「今、日本が反撃すれば、かえって虐殺を誘発するかもしれない」と艦砲射撃に参加しなかった。いわゆる幣原軟弱外交と呼ばれるものですが、この軟弱な対応、これと同じような状況にしたのが現在、平和安全法案を「戦争法案」とレッテル張りし、拉致被害者のことなど全く無視して「日本が平和なのは憲法9条のおかげ」と言い、自衛隊や集団的自衛権を違憲だと叫び、「米軍は出ていけ」と言っている人達ではないでしょうか。この時、きちんと反撃をしておかなかった結果どうなったか。その後も日本人居留民への襲撃などは繰り返され、世論も激高し、泥沼の支那事変につき進んでいくことになりました。反論、あるいは反撃しておくべき時にしておかなければ何が起こるか。こういった歴史的事実があるにもかかわらず、今ある危機に対処することを止めようとする人たちは、本当はこれと同じことを繰り返させようとしているのではないかと思わざるを得ません。

 倉山先生の本は読後に気持ちの良くなるものではありません。正直商売としては損なやり方をされる方だと思います。散々、「お役所仕事」の政府の対応で戦争に突き進んでいく話が語られた後、「おわりに」で斎藤隆夫代議士のいわゆる「反軍演説」が引用されています。内容は、世界は徹頭徹尾力の論理で動いていること、聖戦の美名で国家百年の計を誤るようなことをしてはならないこと。そして長引く支那事変を政府はちゃんと終わらせるつもりがあるのかと説いています。この反軍演説が行われたのが1940年の2月2日、その年の3月7日に斎藤は除名されています。
 
 「正論が封殺されたときに国は亡びる」倉山先生が繰り返し口にする言葉ですが、この演説を読んで、そしてその後斎藤が除名されたことを知るに泣けてきます。前回ブログに挙げた「ネオ東京裁判 掟破りの逆15年戦争」のテーマにも通じることですが、どの時点がポイント・オブ・ノーリターンなのかは後になってみなければわからないことかもしれません。しかし、その時に間違わないためにも歴史を学ぶことは大切なのだと改めて思い知らされました。



テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

ニコニコ生放送 【安保法制】次世代の党 和田政宗 vs 憲政史家 倉山満 対談生中継 を見て ~安保法制に関する誤解とは

 先日、7月17日にニコニコ生放送で次世代の党の和田政宗先生と憲政史家の倉山満先生による安保法制に関する対談が行われました。

【安保法制】次世代の党 和田政宗 vs 憲政史家 倉山満 対談生中継

 Youtubeでも動画が上がってます。

【安保法制】次世代の党和田政宗vs憲政史家倉山満対談 2015.07.17

 論点のわかりやすいとても有意義な対談でした。倉山先生の説明はいつも明快でわかりやすいのですが、和田政宗先生もとてもユーモアがあり、言うべきことをはっきり言う方で、しかもさすが元NHKのアナウンサー、とてもお話が聞きやすい。1時間があっという間に感じられるのでぜひ動画の方をご覧ください。
 
 この放送で倉山先生が言っていることで特に重要なのは、今まで政府は一貫して集団的自衛権の行使を禁止してきたのに、安倍内閣の一内閣の判断で解釈改憲して集団的自衛権を行使できるようにしているように言われていること。あまつさえ政府の説明や、マスメディアの中でも安倍政権に好意的な産経新聞の記事でもそのように取れてしまうこと、それが全く事実に反することだということです。

 集団的自衛権の行使に関しては、このブログ内では散々言ってきていることですが、米軍への基地提供などを通じて、とっくに行使していますし、し続けています。昭和47年の政府解釈で当然に保有しているものをその当時の解釈で、今は行使できないようにしましょうとした(本当は行使している)。出来るものを出来ないようにしただけで、国際情勢の変化によってまた出来るようにするということなので本来何の問題もないことのはずなのに、なぜかそれ以前に集団的自衛権の行使が禁止されていなかったことの説明が抜けているために話がわかりづらくなっているのです。

 そもそも憲法解釈が変遷してきたことは政府の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書にも書いてあります(Iの1.憲法解釈の変遷と根本原則)。ただ岸内閣から、田中内閣に飛んでいて、池田内閣、岸内閣の間で何が起こったのかが書いてないのが問題です。

「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書

 国際法と憲法の解釈をかい離させたのは佐藤内閣で8年間内閣法制局長官をやった高辻正巳です。(この動画で倉山先生が樋口恒晴先生の「一国平和主義の錯覚」の記述を読み上げています。)

(「平和」という病 P135より引用)

 確立された国際法規、いわゆる慣習国際法といいますか、そういうものは実は憲法との間に抵触関係はない。憲法は一国の最高法規でございますが、その一国と言うものは実は国際社会に存在しておるわけでございますから、その国際慣習法ともいうべき確立された国際法規とは抵触を生ずるはずはないという考えでございます。ただし、一国と一国が結ぶような特別の条約、ご指南の部分はそういうものが含まれているのだと思いますが、そういうものにつきましては、憲法はやはりそれに優先する。ただし、憲法以下の法律は、条約に矛盾すれば条約の方が優先するという考えでございます。したがって、現実には何が確立された国際法規であるかという解釈問題に結局変わってまいります。
(引用終わり)

 高辻正巳が言ったことを要約すると、倉山先生いわく、国際法が何を言ってようが、単なる条約じゃなくて、数百年間文明として確立して来た慣習として積み重ねてられてきた国際法であっても内閣法制局は関係ない。憲法と抵触するような国際法は国際法じゃない、だからそれを解釈するのは俺だ。というめちゃくちゃなもの。こちらの「一国平和主義の錯覚」は現在『「平和」という病』というタイトルで再刊されており、憲法解釈がいかに時の政府によりコロコロ変わってきたかが詳しく書かれていますので、ぜひ読んでいただけたらと思います。




 現在、この安保法制の議論の中で、集団的自衛権が違憲だとする憲法学者が多数いるため、この平和安全保障法制自体が違憲ではないかという声が大きくなっています。しかし本来、個別的であれ集団的であれ、自衛権は自然権にあたるものです。ほとんどの国の憲法典には集団的自衛権に関する記述はありません。なぜなら書こうと書くまいと、当然持っている権利だからです。この動画の中では「高い所からものが落ちてきたらよけるように、川でおぼれている人がいたら当然助けたくなるように、憲法であろうが法律であろうが、条文で禁止したところで禁止しきれるものではない」と自然権は説明されています。そもそも自衛権は国際法上、当然に主権国家に認められている権利であり、国際法とは慣習法であって、そのように見いだされたものであって、否定しようのないものです。それをその時の状況で行使しない、という判断をすることは出来るでしょうが、禁止してしまうなどということは出来ないはずです。そして国際社会で生きていく限り、憲法典は国際法と齟齬がないように作られ、解釈されなければならないはずなのに、どうも日本の憲法学者の頭からは「国際法」という概念がすっぽり抜けているように思います。ましてや内閣法制局は、そんなものは自分が決めるとでもいうつもりでしょうか。

 今回のこの法案、成立させることは可能だと思いますが、今のこの説明のまま可決してしまったら、何が問題か。日本国憲法という憲法典は、でたらめであれ何であれ日本の憲法であり、条文は尊重しなければならない。その日本国憲法の条文と解釈によって禁止されてきた集団的自衛権を初めて安倍内閣が一内閣の解釈変更で行使できるようにしたという風に国民に誤って伝わってしまう。安倍総理はきちんと説明しているのに、そのように伝わってしまって、困るのは国家であり国民。安倍総理自身も、東条英機と一緒の形で歴史に名を残してしまうし、これが後の政府の解釈も縛ってしまうと倉山先生はこの動画で説明しています。衆議院では、結局、野党は揚げ足取りに終始し、マスコミはまるでこの法案が通れば戦争になったり、徴兵制になるのではないかと不安を煽るような報道を続け、全く間違ったイメージでこの法案に関して語られることになってしまいました。参議院ではぜひ、建設的な議論が行われること、そして何より政府によって、集団的自衛権の行使を一貫して禁止してきたわけではない、もともと行使していたものを、その時の政府の解釈で出来ないことにしていただけであることを説明していただきたいと思います。

 長々と書きましたが、倉山先生自身が「倉山満の砦」で今回のこの放送やそれに関する説明をわかりやすく書いているので、それも合わせて読んでいただきたいと思います。

自民党に政権担当能力はあるか?

模範答弁

安倍首相テレビ生出演に関して


倉山満・杉田水脈 みんなで学ぼう日本の軍閥 感想


 インターネット放送のチャンネルくららで放送されていた同タイトルの番組の書籍化です。

みんなで学ぼう!日本の軍閥

 番組もとても面白かったのですが、やはり文字になっているのを改めて読むと頭に入りやすくて助かります。番組の中のお二人の楽しげな様子がそのままに本になっています。

 「軍閥」というとどのようなイメージを持たれるでしょうか。こちらで言われる軍閥は中華民国のような地方に割拠している軍閥ではなく、軍の中の派閥のことです。陸軍、海軍から主な人をピックアップして紹介しています。

 第一部の陸軍編では、山縣有朋、桂太郎、寺内正毅、田中儀一、宇垣一茂、石原莞爾、荒木貞夫、永田鉄山、東條英樹が、第二部の海軍編では山本権兵衛、東郷平八郎、大角岑生、斎藤実、米内光政、山本五十六が紹介されます。

 人物に焦点を当てて語られ、同時代に活躍している人もいるため、同じ出来事も繰り返し語られることになるのですが、人によって立場が違うため、その出来事がより鮮明に浮き彫りにされます。例えば満洲事変一つとってみても、当時のチャイナの軍閥の横暴と何よりソ連に備えるためにそれを指導した石原莞爾、満州事変によっておこった政権交代を利用し、実権を握った皇道派の荒木貞夫、事変の時は関東軍に大砲などを融通して援助したが、皇道派に主導権が移ったため主要なポストには有り付けなかった統制派の永田鉄山など、それぞれの視点で語られることにより、その出来事がどのような影響を与えたのかが見えてきます。

 戦前は軍部が台頭し、政治家の発言力が弱くなったと学校では教わった気がします。しかし、そもそも軍部とはなんでしょうか。陸軍と海軍では立場が違いますし、それぞれも一枚岩ではありません。陸軍も海軍も予算の取り合いで国防方針を決めたり、軍から総理大臣が出ても、衆議院の力が強いため、強い政党政治家にすり寄ったりと、どうも学校の時に教わったのとはイメージが違います。最後に紹介される山本五十六など、三国同盟に反対していたため、民間右翼が山本五十六を暗殺しようと動き出し、海の上にいれば暗殺出来ないという理由で連合艦隊司令長官にされたなど、本当にまじめに戦争をする気があったのかと疑いたくなる状況です。日露戦争のとき、序列に関係なく人物を見定めて東郷平八郎を連合艦隊司令長官に抜擢した山本権兵衛に比べると、余りの組織の劣化に涙が出そうになります。

 一番、印象に残ったのは、山本権兵衛のエピソードです。先ほどの、日露戦争でのエピソードもそうですが、関東大震災が起こったとき大命は下っていたため、彼が総理大臣になることは決まっていたのですが組閣が出来ていない状況で「私が責任を引き受けます」と組閣を完了させるや、真っ先に緊急勅令を百三十本だしたという話。本当は緊急勅令を出すには枢密院を招集しなければならないのですが、震災で集まれず開けないので全部自分の責任で行い、震災処理を七十七日で終わらせました。当時の憲法学者は誰も彼を「憲法違反だ」と責めることなく、山本の緊急対処の能力を褒めたそうです。東日本大震災の時の総理が山本権兵衛のような人だったらと思うと本当に悔やまれます。あの時、山本のような行動を当時の菅元総理がやったら誰か責めたのでしょうか。現在、とっくに行使している集団的自衛権を「違憲だ!」と言って責め立てている憲法学者のような人達だったら、国が亡びるような災害でもそういうのでしょうか。現在、我が国は戦争状態にはありませんが、明確に脅威が存在する中、今、打てる手を打っておかなければいずれ滅びの道をたどるような気がします。

 現在の我が国は、他国の脅威に立ち向かおうにも、憲法や法律によってがんじがらめにされている状態です。何よりも一番、縛られているのは私たち自身の心ではないでしょうか。歴史にもしはありませんが、歴史を学ぶことによって同じことを繰り返すことを避けることは出来ると思います。そして、たった今何が出来るのかを考えることが大切なのだと思います。




テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

yumi

Author:yumi
富山市在住。夫と息子、猫2匹と暮らす会社員。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR